福田眞人
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福田眞人(ふくだ・まひと、1951年9月19日 - )は医学史研究家。
京都市生まれ。京都大学工学部卒業後、東京の出版社勤務を経て、東京大学大学院人文科学研究科へ。専攻は比較文学比較文化。芳賀徹教授、佐伯彰一教授、小堀桂一郎教授、村上陽一郎教授、廣松渉教授などに師事。特に日英の医学、疾病の歴史、ヴィクトリア朝英国と明治日本を比較文化史的に研究している。
現在の主なる研究テーマは、疾病の文化史的研究で、結核(肺病、労咳)の東西におけるイメージの研究が中心にある。ギリシャ・ローマ時代から中世、近世を経て、結核が独特のイメージ、とりわけ天才と美女(佳人薄命)の病気と考えられるに至った経緯を解明している。 結核に関しては、1917年から1923年にかけてアメリカ・マサチューセッツ州フラミングハム(Framingham, Massachusetts, USA)で行われた結核実験(Framingham Community Health and Tuberculosis Demonstration)の、医学的意味、社会学的意味を追究している。 梅毒・淋病を含む性感染症(STD,VD)では、梅毒の検査(検梅)、予防対策、治療の歴史を、特に19世紀の幕末明治維新に来日した英国海軍軍医ジョージ・ニュートン(Dr.George B. Newton, RN)を中心に研究している。ニュートンは慶応4年(1868)横浜に日本最初の場汚毒病院(Yokohama Lock Hospital)を開設して、娼妓の性病検査を実施した。さらに、兵庫(神戸)と長崎に梅毒病院を開設したが、長崎で明治4年(1871)に客死した。 現代のエイズ、クラミジア、ヘルペスにもその研究は及んでいる。 他に水の文化史的研究(上下水道、風呂、トイレ、排水、美容のための水、温泉入浴、海水浴、水が身体に与える影響、ペットボトル水の普及など)、指紋の研究、医学史全体の概観にも努めている。また、北里柴三郎、森鴎外、高木兼寛、青山胤通、ドイツの細菌学者ローベルト・コッホ(Robert Koch)の関係についても伝記的研究を進めている。
英国オックスフォード大学ウエルカム医学史研究所客員研究員、米国ハーバード大学科学史科招致研究員、インド・デリー大学客員教授を経て、現在、名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授。大学院での授業担当科目は、日本言語文化学。
著書に、Public Health and the Modern State (Rodopi, Amsterdam, 1994),『結核の文化史:近代日本の病のイメージ』(名古屋大学出版会、1995年)、『結核という文化』(中央公論新社、2001年)、『日本梅毒史の研究』(思文閣出版、2005年)など。 なお、『結核の文化史』は1995年の第49回毎日出版文化賞の本賞を受賞している。 他に論文「漱石と西洋美術:倫敦明治35年前後」、『比較文学研究』(42号、東大比較文学会)所収など多数。 家族4人、名古屋市在住。
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