缶けり
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缶けり(かんけり)は、日本昭和期以降の子供の遊びの一つ。呼び名が違う地域もある。通常屋外で行う。公式ルールが存在しないため、地域及び時代(世代)により派生した様々なルールが存在する。(また地域によってはボールをつかったボールけりという派生した遊びもある。)
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[編集] 概要
- 参加人数 3名以上いれば可能であるが、10−20人が適正範囲とされる。
- 場所 子供が缶を思いっきり蹴っても缶が飛び出してしまうことのない十分に広い公園や空き地などの競技場。
- 必要物資 空き缶。踏んでつぶしてしまうことがあるためアルミ缶は不適切である。高さ10cmから15cm程度のスチール缶あるいはブリキ缶が望ましい。ジュースの缶の場合、大きさは350ml缶程度が理想的である。強者揃いの場合は一斗缶を用いる場合もある。竹の節を10cm程度に切った物でも良い。
[編集] ルール
- 鬼を1人、または複数決める。これによって参加者は鬼とそれ以外に分かれる。
- チョーク(または小石など)で地面に円を描きその中心に缶を置く。1970年代前半ころまでは蜜柑の缶詰など底辺の広い缶が主流であったが、缶飲料の普及に従い入手の容易な清涼飲料水などのプルトップが主流となった。
- 鬼でない誰かが缶を円の外に強く蹴りだす。
- 鬼が缶を円の中心に置き直し、いくつか決められた数をかぞえ終わるまでに(数えない場合もある)、鬼以外の者はどこかに隠れる。
- 鬼は隠れた者を探す。見つけた場合、その者の名を大きな声で呼び、缶の所に戻って缶を1度または3度踏み付ける。また、踏みつける際に名前を叫ぶ場合もある。この時、名前の後に、「ピー」や、「ポコペン」、「ケント」と付けることもある。見つかった者は円の中または缶の付近に捕われることになる
- (この際、缶を誤って倒してしまうと、缶をけられたことと同じになってしまうというルールもある。)。
- ただし、鬼はまだ見つけていない者に缶を蹴られないようにしなくてはならない。缶をけられた場合、捕われていた者はまた自由になり、缶けりは振り出しに戻る(その他、様々な規則で囚人が自由になる場合もある)。
- 鬼が隠れている全員を全て見つけるか、あるいは見つけられず皆が飽きてしまった場合に缶けりは終了となる。
[編集] 一般的な禁止事項と注意事項
- 缶は人に向かって蹴り出してはならない。
- 特にガラス窓には注意する。
- 車が通行する道路を越えて隠れてはならない。
- 資材置き場には、落下物の危険があるので行ってはならない。
- 捕まった者は、まだ捕まっていない者の居場所がわかるような挙動をしてはならない。
- 柔らかい缶は足を挫くおそれがあるので硬い缶を使う。
- 缶に砂を詰めてはならない。
[編集] 作戦
蹴る側の基本戦略は一般に、缶からできるだけ近い場所に陣取ってひたすら隠れて、鬼がしびれを切らして缶から少しでも離れた隙を狙って缶を蹴りに行くというものにある。逆に、鬼がそれを利用して捜すと見せ掛け缶の近くに隠れ、蹴る側がしびれを切らして出てきた所で出てきて缶を踏む、ネズミ捕り的な作戦がある。
また、まだ捕まっていないものが多ければ、四方から数人でいっせいに缶に突撃し、全員分の名前が呼ばれる前に誰かが蹴るという人海戦術的な作戦もあるが、これはやりすぎると喧嘩の元になる恐れがあるため多用してはいけないとされる。
鬼が数えている間に鬼の背面に気配を殺して立ち続け、数え終わると同時に奇襲を仕掛けると言う強硬手段も存在するが、この作戦は戦略的にも道徳的にも1日1回を限度とするのが望ましい。
服などを頭からかぶり顔を隠し、鬼が蹴りに来た人が誰か識別できないようにして缶を蹴る方法もあるが、やはり道徳的にも行うべきではないとされる。
[編集] 備考
「缶けり」は、「かくれんぼ」にさらに鬼ごっこの要素を加えて、独自のルールを付け加えたものであり、心理的な起伏に富んでいる洗練されたゲームである。鬼は隠れた者を探し出すと同時に缶を蹴り出されないように配慮せねばならず、油断ができない。「かくれんぼ」の場合は隠れている者は見付からないように単に受動的にふるまうことしかできないが「缶けり」の場合は缶を蹴るという能動的な要素が重視されるため、守りつつも攻める駆け引きが重要となる。