計量革命
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計量革命(けいりょうかくめい,quantitative revolution)とは、1960年代以降アメリカから普及した地理学的な諸問題を数理的・統計的な資料を用いて分析し、法則化して空間理論パターンを構築しようとした地理学における一連の運動の事をさす。この動きは「革命」的に世界各国の地理学研究に普及し、地理学方法論に一大センセーションを巻き起こしたほどであった。現代の地理学の根底を築いている方法論といっても差し支えない。普及した当時、従前の地理学と比べて「新しい地理学」と呼ばれた。
それまでの、特に人文地理学はgeography(土地の記述の意)のように、各地域の特性を記述したものを分析、解明していくという文字情報が主体の研究スタイルであったが、これに統計データや1950年代あたりから普及し始めたコンピューターという分析機器が登場し、これらを用いて地理学に関する計量的な数理データを分析するという新しい概念が組み込まれたのであった。
従前の個々の特性を記述する地理学に対する不満も相まって、1950年代にアメリカで誕生したこの方法は爆発的に普及した。そして、アメリカのみならず世界の先進国を中心に一気に広まった。その後、コンピューター技術の向上、統計データの整備も相まって、計量革命の度合いは深まっていった。この計量革命は、地理学の内部的問題ではなく、統計学、社会学、数学など多方面の学問から影響され、成立した考え方であった。
こうした計量的な地理学は、日本の地理教育にも多大な影響を与え、高等教育での地理学の研究・授業はもちろんの事、中等・初等教育の社会科における地理の授業にも波及した。
[編集] 問題点など
しかし、こうした計量的なデータへの傾倒は新たな問題も生じた。つまり、こうした計量的な数理データの収集・分析が既に地理学の手段ではなく、すでに目的となっているという問題である。こうした批判から、地理学に新たな問題が生じた。また、こうした計量的な手法が普及したのは、人文地理学では計量革命付近からであるが、自然科学の範疇である自然地理学ではそれより以前から用いられていたものでもあったが、自然地理学でも主流となった。こうした、計量的な方法のみでは人間を扱う人文地理学が解明しきれないという反発から、現在では個人の主体的観念に着目した人文主義地理学などの他の考え方が主流となってきている。