豹頭の仮面
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『豹頭の仮面』(ひょうとうのかめん)は、栗本薫作の小説シリーズ『グイン・サーガ』の記念すべき第1巻である。
パロの真珠と呼ばれる双子の王子と王女が、古代機械でルードの森へ落ち延びさせられ、そこで豹頭の超戦士グインと出会う大切な逸話が描かれる巻。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 内容
この時点では、彼の豹頭が仮面なのか、呪いなのか、生まれもったものなのか、明確には語られることはない。明確に語られないということであれば、ほぼ間違いなく、全編を通して語られることはないと思ったほうが良い。グインの豹頭にまつわる話こそが、この作品最大の謎のひとつ。しかし、作中グインにかかわるすべての人間は、そのグインの豹頭をみな気にしなくなる事になっている。
ちなみに、グインは剣でよし、槍でよし、弓、短剣、棍棒、素手など、ありとあらゆる武器、武具、戦闘様式を己が自覚することなく操る、文字通り超戦士である。限界はあるようだが、凡庸な戦士集団であれば、100対1でも負けることがないということである。己の記憶はすべて失っているが、生き残るための術はすべて身についているということになっている。
この事柄も、すべてにおいて世界最大の謎のひとつとして、この物語上存在している。極端な話、彼はすべての言葉を話せるようだ。未開の猿人と語る話も後々出てくる。
[編集] 解説
グイン・サーガの、初期から中期までの特徴として、10巻でひと区切りというものがある。現在では守られているかは不明だが、過去ではそのように言われていた。確かに、作者による勝手な後付けではあるが、初期の頃はそれで把握できる部分もあった。特に、1巻~10巻で語られる冒険行に登場する人物たち、「グインご一行さま」は非常に重要。どこまでもどこまでも全員主人公で、世界の何かに必ず関わっているのである。彼らが何故そうなるのか、彼らの今後こそが世界に何かをもたらす事となっている。
グイン・サーガが発表されて、特に画期的であったものが、俗にノートと呼ばれるモノである。どうも、グイン・サーガの結末、プロットの大まかな変遷などが、大体ノートに書かれてしまっているようなのである。作者があとがきに書いている内容であったはずだが、夢の中で見た一つの物語がグイン・サーガのきっかけであるということ、それを走り書きにして大事なところを次々と書いていったそのノートこそが、この物語の最初であるとされている。嘘なのか、本当なのかは分からないが、必要なときに必要な分だけ、そのプロットを膨らませていく方式で、この作品は描かれているようである。 多分、ノートは何十冊になっているであろう。作者本人が、何かの際のコメントで(あとがきであったかも知れない。)発表の場がなくてもこっそり書いてやる、又は書いていたと語っていた。現状でも、発表する気のない作品、できない作品が数多く彼女のもとにはあるようで、多産、速筆という生まれながらの小説家である。
断言できることは、グインサーガという作品は、1巻から読まなければその面白さは、ほとんど分からない。読み飛ばしていい行、巻など、ひとつもないということだ。グインという超戦士が、最も積極的に動き回る、とても活劇的な巻である。