貴醸酒
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貴醸酒(きじょうしゅ)とは、水の代わりに酒で仕込んだ酒で、独特のとろみのある甘口の日本酒である。
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[編集] 製法
通常の日本酒は、米100に対して水130を使って造るが、それに対して貴醸酒は米100に対して水70と酒60を仕込み水のように使って造る。仕込み酒は、三段仕込みの最終段階である留(とめ)において、仕込み水の代わりに使われる製法が多いが、初めから終わりまですべての仕込み水の代わりに酒を用いるという、いわばより贅沢な製法も研究されている。
通常の酒の仕込みに使われる水は、一般家庭で使っている水道水ではなく、酒蔵が独自に開井した高品質の酒造用水であるが、それでもコストという面から考えると、貴醸酒の仕込みで使う酒から考えると、タダに近いほど安価であるといえる。それほど、貴醸酒がいかにコストをかけて造られているかということがわかる。
[編集] 酒質
多くの貴醸酒が純米酒としての造りで、また長期熟成酒、生酒などのバリエーションがあるが、酒を酒で仕込むだけあって味も極めてこく、濃醇な甘みと適度な酸味やすっきりとした後味を持ち、食前酒や食後酒向きの奥行きの深い味わいを有している。長期保存しても酒質が保たれることも特徴の一つで、貯蔵しているとだんだん重厚な琥珀色になっていき、いっそうまろやかな舌触りが加わっていく。冷蔵庫で冷やして、オンザロックで飲まれるのがいまのところ一般的な飲み方のようである。
[編集] 由来
貴醸酒は、国立醸造試験所が、平安時代の古文書『延喜式』(927年)に記されている宮内庁造酒司による古代酒の製法「しおり」をもとに考案し、国税庁が開発し、酒類総合研究所が製造に関わる特許を保有する。2006年現在、まだそれほど一般市場には出回っていないが、貴醸酒協会が設立され、いくつかの酒蔵が加盟して開発や研究が進んでいる。