路上の霊魂
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『路上の霊魂』(ろじょうのれいこん)は1921年の松竹蒲田撮影所製作の日本映画(サイレント)。近代演劇の先駆者、小山内薫が主宰した松竹キネマ研究所の第1回作品。興行的には不評であったが、構成、演出共に当時としては画期的な試みに満ちており、日本映画史上、果たした役割の大きさは計り知れない。
シュミットボン『街の子』、ゴーリキー『夜の宿(どん底)』を元にした物語である。(前者は森鴎外訳、後者は小山内訳がある)
[編集] あらすじ
山奥で伐材所を経営している旧家の老人には、ヴァイオリニストになることを夢見て、許婚を置いて家出した息子(浩一郎)がいた。東京に出た浩一郎は、演奏を批判した評論家相手に暴力事件を起こし、音楽界を追われる。結婚し、一女を授かるが、生活に困り、妻・娘を連れて故郷に戻ろうとする。
その途中で、出獄したばかりの二人組の男に出会い、パンを恵んでもらう。浩一郎らは二人組と別れた後、父の元をたずねるが、許してもらえない。浩一郎らは寒い中、納屋に泊まることにする。一方、二人組はクリスマスパーティーの準備が整った別荘に忍び込み、パンを盗もうとするが、別荘番に見つかってしまう。しかし、肺病を病んでいる姿を憐れんだ別荘番は令嬢の許しを得て二人をパーティーに招待する。
その令嬢は伐材所の少年(太郎)がパーティーに来るのを待っていた。その頃、浩一郎は父が許してくれないため、1人で納屋を離れる。太郎が老人の姪(浩一郎の元許嫁)と納屋に行ってみると、娘は凍死していた。翌朝、改心した二人の男と別荘番は、凍死した浩一郎を発見する。令嬢は太郎にプレゼントを渡しに行った。令嬢と太郎は「憐み」の心があれば浩一郎らも救われたのではないか、と考える。