近日息子
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近日息子(きんじつむすこ)は落語の演目の一つ。
初代桂春團治や2代目桂春團治が得意とした。東京では2代目春團治から教えてもらった3代目桂三木助が好んで演じた。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
父親が頭の悪い息子をしかっている。先日も息子が道頓堀で新しい芝居がかかると教えてくれたので、次の日弁当を持って見に行ったら閉まっている。看板にあった「近日より」を「一番近い日」だと勘違いしていた息子に、父親は「違うがな。近日とは『そのうちにやります』という客の気を引くための文句やがな。」と、さんざん小言を述べて「もうちょっと先繰り、機転を利かせんかい。常に先を読め。」と言うが、一向に息子のアホぶりは治らない。
あきれた父親は「頭が痛なった」と寝こむ。息子はここが機転の利かせどころと医者を呼ぶ。父親が「何すんねん」と言えば、「お父っつあんが、先繰り、機転を利かせ言いまっさかい」と言う息子。仕方がなく脈を取ってもらうが、別段異常はない。しかし、医者が首を傾げるのを見逃さなかった息子は、すぐに坊さんや葬儀屋を呼んでしまった。
近所の長屋では「あのアホンとこのおやっさん死なはったんかいな」と大騒ぎ。「何で死にはったんやろ」「私思いますに、こらイチコロやと」「そら、あんたトンコロ(コレラ)やろが」と、長屋の人たちもスカタンな事ばかり言って少しも話が進まない。ようやく弔問に行くことになるが、どれもこれもちゃんとできない。何しろ死んだ本人がタバコを吸って座っているのだ。
その弔問客に、父親が「これ、ええ加減にしなはれ。息子はともかく、あんさん方までわしをからかうのですかいな。」と言うと、「ちゃいまんがな。息子さんが医者を呼び、坊さんを呼び、葬儀屋を呼んだんでっせ。もうちゃんと忌み札もつけて葬式の用意ができてますがな。」と返される。怒った父親は息子を責めるが、「あはは、近所のみなさんもアホだすな」「何でやねん」
「よう見てみなはれ。忌み札に『近日より』と書いてあります。」
[編集] 補足
全編笑いの連続である。前半部の息子と父親の会話でひとしきり笑った後、後半部の長屋連中のやりとりで笑いがさらに加速する。
初代春團治は、洋食屋で「ソース」と「ホース」とを間違えて店中ホースの水で無茶苦茶になるという、スプラスティック映画のような演出をとった。
類似した話に「菜刀息子」(または「弱法師」)がある。こちらは親が息子を見限って家を放りだす悲惨な内容で、あまり演じ手がない。