集中治療室
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集中治療室(しゅうちゅうちりょうしつ)は、病院内の施設の一種。呼吸,循環,代謝その他の重篤な急性機能不全の患者の容態を24時間体制で管理し、より効果的な治療を施すことを目的とする。[1]元々は特定の診療科に属さず独立した組織で診療科を問わず患者を管理する体制が一般的であるが、後述のように各診療科の下に、その科専門の集中治療室を設置している病院もある。英語では「Intensive Care Unit」と呼び、日本でも「ICU」という略号が用いられることがある。
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[編集] 概要
日本麻酔学会で「内科系、外科系を問わず呼吸、循環、代謝そのほかの重篤な急性機能不全の患者を収容し強力かつ集中的に治療看護を行うことにより、その効果を期待する部門である。」と定義されているように、集中治療室では元の疾病の治療というよりは、治療の過程において重篤な症状が発生した場合に利用される施設である。したがって、重篤な症状収まった時点で各診療科の一般病棟に戻されることが通例である。
集中治療室では一般には「病棟で重篤な症状を表した患者」「救急患者のうち継続的な状態管理が必要な患者」「手術後に高度な状態管理が必要な患者」などを受け入れる。しかし、今日の一般病棟では、血圧、呼吸、酸素飽和度などの24時間モニタリングを実施することは可能なので、通常の手術であれば一般病室で24時間モニタリングを受けるだけの場合も多い。
逆に重症であっても急性症状のない慢性疾患や末期がん患者など、重症であっても集中治療室の対象にならない場合がある。[1]
集中治療室の対象となる場合の代表例としては、主として重要臓器の機能不全があり生命が危険にさらされているものかがあげられる。このような症例においては麻酔科医の観察の元、時々刻々と変化する容態に逐次投薬治療を施すことにより対応するのである。集中治療室で行われる医学については、「麻酔科」や「集中治療医学」と呼ばれる医療分野が存在する。
また麻酔科医だけでなく各診療科の専門医師を配置したりする場合もある。そして看護師の配置人数を一般病棟より多くしり、一般病棟で配置されない医療機器類の面倒を見る臨床工学技士などのスタッフも配備されている場合がある。
1995年に日本集中治療医学会が日本国内の200床以上の病院を対象に行った調査によると、513病院から944室の集中治療室を持つとの回答があった(複数の集中治療室を持つ病院があるため、室数が病院数を上回る)。
[編集] ICU症候群
集中治療室に収容された患者は、「集中治療室に入れられているということは、死に直面しているということである」というプレッシャにさらされたり、外界と遮断され時間感覚を失ったりすることから、精神状態の異常をきたす場合がある。これを「ICU症候群」という。手術後の集中治療室への収容の場合には、麻酔の影響や術後精神病などが重なる場合もある。症状は、譫妄・錯乱・幻覚・幻視など。集中治療室における集中的かつ効率的な体の治療と精神管理のバランスはむずかしい問題であり、患者管理の上で注目されつつある。
[編集] ヴァリエーション
集中治療室は、対象とする患者の病態によって、さらに専門的なものに細分化される場合がある。
- 新生児集中治療室 - NICU (Neonatal Intensive Care Unit)
- 新生児用の集中治療室のこと。産婦人科に併設され、新生児のうち極低出生体重児や仮死新生児など、集中治療が必要な患者を対象としたもの。
- 冠疾患集中治療室 - CCU (Coronary Care Unit)
- 循環器系、特に心臓血管系の疾患を抱える重篤患者を対象としたもの。
- 脳卒中集中治療室 - SCU (Stroke Care Unit)
- 脳卒中患者を対象としたもの。
- 腎疾患集中治療室 - KICU (Kidney Intensive Care Unit])
- 腎臓疾患患者を対象としたもの。
- 高度治療室 - HCU (High Care Unit)
- 名称から受ける印象とは異なり、ICUよりはランクが落ちる。ICUから一般病棟に移動させる際に、経過を観察したりするために用いられる。麻酔科医や診療科医師が常駐しない場合もある。
病院によっては呼吸器集中治療室のRCUや脳外科集中治療室のNCUなど対象とする患者の病態によって、さらに専門的なものに細分化している病院もある。
[編集] 出典
[編集] 外部リンク
- 日本集中治療学会
- いくつかの病院の集中治療室紹介(写真や体制紹介などあり)
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