高エネルギー加速器研究機構
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大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(こうえねるぎーかそくきけんきゅうきこう, 英名 High Energy Accelerator Research Organization、略称KEK)は、高エネルギー物理学・加速器科学などの総合研究機関。1997年4月1日に旧高エネルギー物理学研究所・東京大学原子核研究所・東京大学理学部附属中間子科学研究センターなどを改組して発足した。総合研究大学院大学を構成する。略称のKEK(ケイ・イー・ケイ)は、旧高エネルギー物理学研究所 (Kou Enerugii Butsurigaku Kenkyusho) の略称を引き継いでいる。
また、旧高エネルギー物理学研究所は、日本で最初にWebサーバを公開した組織である。日本最初のホームページを参照されたい。
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[編集] 所在地
茨城県つくば市大穂1-1 筑波研究学園都市の北部にある。
[編集] 組織
組織は以下の4つに大別される
- 素粒子原子核研究所:素粒子物理学および原子核物理学を研究する基礎物理研究所
- 物質構造科学研究所:フォトンファクトリーを活用して、物質構造を研究する応用物理研究所
- 加速器研究施設:KEKの研究活動の根幹をなす施設
- 共通基盤研究施設:研究を支援する施設
<Note.>加速器研究施設は、具体的にはKEK本部に設置された加速器群、J-PARC、ILC等の加速器本体の研究開発を行う組織を含んでいる。実験装置群なども、研究施設内で製作したり、各メーカとの協力によって製作することもある。共通基盤研究施設は、スーパーコンピュータ群や試作工場なども含み、実験装置の試作、事務機関、図書室、福利厚生等の管理・運営等もおこなう組織を含む。
[編集] 主な実験施設
- Bファクトリー (KEKB) : 周長3.016kmの衝突型円形加速器。8.0GeVの電子と3.5GeVの陽電子を衝突させることで、大量のB中間子・反B中間子対を作り出す。これを用いて、Belle実験が行われている。Belle実験とは13カ国、53研究機関、300人程度から構成される国際共同素粒子実験。KEKB加速器により加速された電子・陽電子の衝突により生成される、年間1億個程度のB中間子・反B中間子対事象の崩壊過程を、Belle測定器で検出し調べることで、CP非保存(粒子・反粒子の性質の違い)の研究を行う。現在の宇宙から反物質が消えた謎を解く鍵として、このCP非保存が重要な関わりを持つことが指摘され、B中間子系で大きなCP非保存が期待されていることから、Belle実験は世界的に注目されている。
- フォトンファクトリー(PFリング) : 周長187mの円形加速器で放射光実験に用いられる。
- PF-AR : 加速する電子を単一のかたまり(単バンチ)にすることで高強度のパルス放射光を発生するリング。
- ニュートリノビームライン : 約250km離れたスーパーカミオカンデに向けてニュートリノビームを射ち込み、長基線ニュートリノ振動実験 を行っている。
<Note.>KEK本部敷地内には、この他にも陽子シンクロトロン、直線加速器などが設置されており、高エネルギー物理実験を行う総合研究所として機能している。KEKBは、TOPクォーク発見を目指して建設された、TRISTAN加速器のトンネルを活用して新たに開発された加速器である。なお、TOPクォーク発見では、重心系衝突エネルギーレベルで、一桁上の性能を持つ、フェルミ国立加速器研究センターのテバトロン及びCERNのSPSに、その座を譲った(どちらも、陽子-反陽子衝突型加速器)。