2光子励起顕微鏡
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2(多)光子励起顕微鏡とは、物質励起に[2光子過程を利用した顕微鏡である。2光子過程は、本来一つの光子しか占有し得ない空間に2つ(またはそれ以上)の光子が飛び込むことである。この2光子過程は自然界では非常に稀にしか起こりえない事象であるが、光子の密度を高めることで起こる確率を高めることができる。
2光子過程では、原理的には2つの光子から元の光子の2倍のエネルギーを持った1つの光子、すなわち波長が1/2の光子が生まれる。
2光子過程の光源は、高い密度の光子と、試料へのダメージを避けるために、フェムト秒超短パルスの高出力ポンプ・レーザーが用いられる。チタン・サファイア結晶で励起されたレーザーは、対物レンズ焦点面で集約され、2光子過程が惹起される。 このように焦点面のみを励起できる性質から、共焦点顕微鏡と同様に3次元の撮像が可能である。画像構築の方法論は、共焦点走査顕微鏡と同じく、ガルバノ・ミラーと光電子増倍管、光学スリットなどを用いる。ピンホールは必要ないので、蛍光のロスは少なくなる。
赤外域などの長波長の光によって、焦点面でのみ目的の励起光が発生するため、組織透過性が高く、組織表面から数百マイクロメートル下の顕微鏡像を少ない侵襲で取得することができる。このため、たとえば生きた動物の一部を観察可能である。 一方で、励起光の発生が確率論的に支配されるので、画像解像度は共焦点に劣る。
対物レンズには、少なくともレーザーの波長から蛍光の波長までを同焦点でカバーできる高性能なものが要求される。