DSG
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
DSG(Direct-Shift Gearbox)は、米国のボルグワーナー社によって開発され、フォルクスワーゲングループにライセンスされているデュアルクラッチ形式のセミオートマチックトランスミッション。アウディではSトロニック(S-tronic)の名称を使用している。ベースとなった技術は80年代に行われていたグループCマシンによるレースに参戦していたポルシェ 962のものである。
[編集] 概要
従来のセミオートマは、クラッチ操作を自動化したものに過ぎないが、DSGは、奇数番目のギアと偶数番目のギアを受け持つ、二つの出力軸を同軸に配し、それぞれにクラッチを配置することで独特で高速な変速を行う。
加速時における1速から2速への変速を例にとると、従来のセミオートマでは、
- 1速で走行。
- クラッチを切る。
- ギアを1速から2速に変える。
- クラッチをつなぐ。
- 2速で走行。
となるが、DSGでは、
- 1速で走行。このとき偶数側の出力軸はクラッチが切れている状態で2速をシンクロさせ、待機させている。
- 奇数側(1速)のクラッチを切ると同時に偶数側(2速)のクラッチをつなぐ。
- 2速で走行。このとき奇数側の出力軸では、1速と3速を待機させている。
となる。従来型ではクラッチが切れている間に変速動作が入るため、ある程度の時間(上記の工程2から4の間)を要するが、DSGではあらかじめ変速を済ませておいてクラッチを繋げ変えることになり、駆動力が途切れる時間が非常に短い(上記の工程2でのわずかな時間)。つまり二つの変速機が交互に働くような仕組みになっている。
現在市販されている車種では6段(ブガッティ・ヴェイロンのみ7段)のDSGが採用されている。一般的な6段ギアボックスとほば同等の大きさで、コンパクトな設計に仕上がっているが、重量は40kgほど重くなっている。
ちなみにDSGはトルクコンバーターを使ったセミオートマチックトランスミッションのようにトルクコンバーターによる損失はないが、完全に停止した状態からはオートマチックトランスミッション車のようなクリープ走行は出来ず、少しアクセルを踏んでやらない限り車は停まり続ける。また1速とニュートラルを繰り返すようなごく低速時の走行では動きがギクシャクすることがあり、クラッチが過熱する場合もある。