アノマロカリス
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アノマロカリス (Anomalocaris) は、いわゆるアノマロカリス類 (Anomalocarid) の一種であり古生代カンブリア紀に地球の海に生息していた動物。バージェス動物群の一種。カンブリア紀中に絶滅しており、通常のどの動物群とも類似していないいわゆるプロブレマティカ (w:problematica) の一種とも節足動物とも言われている。当初は触手の化石のみが発見され、エビの仲間の化石と間違えられたことから、「奇妙なエビ」という意味の「アノマロカリス」という名が付けられた。また、口の部分はクラゲの化石と判断されてペユトイア (Peytoia) 、胴体部分はナマコと考えられラクガニア (Laggania) と名付けられていた。
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[編集] 体の構造
全体はやや扁平な楕円形で、頭部と胴部が区別できる。頭部の上面には左右に大きな目が1対あり、種類によっては柄を介して飛び出している。下面には丸く、放射状に配列した歯に囲まれた口があり、その前方には2本の触手が伸び、これで獲物を捕まえ円形の口に運んだと考えられている。頭部の触手には多くの種類では節があり、エビのしっぽに似ている。胴部には体節があったと考えられている。体節のそれぞれには大きく横に張り出したオールのような鰭(ヒレ)のような構造があり、鰓(エラ)らしき構造があるが議論が分かれている。後の端にはヒレが斜め上方向に突き出したものがある。
[編集] 生態
アノマロカリスはバージェス動物群の中で最も大きな動物であり、中国の澄江動物群でも体長2mの化石も確認されている事から当時の食物連鎖の頂点に立つ捕食動物であると考えられている。その一方、小型種にはプランクトンを濾して食べていたと目されているものまで多様に存在している。
アノマロカリスの口は外と中の二重構造で構成されており、口の中央部は完全に閉める事は出来ないものの、一方の歯が外向きに開いているときにはもう一方が閉じており、そうした構造で頭部先端部の付属肢(触手)で捕らえた獲物を逃がさず消化管の方向に導いていたと考えられている。アノマロカリス類の種類によっては、消化管の入り口にもびっしりと歯が生えていることが確認されている。カンブリア紀の三葉虫でよくかじられた痕が発見されており、アノマロカリスの口器によるものとも言われているが、アノマロカリス類以外にも大型捕食動物が存在していることが確認されており疑問視する声も多い。
[編集] その系統
その外見や構造は、一見して現在のいかなる動物群にも似ておらず、全く孤立した独特の動物門に含まれる、既存の系統への分類が不可能な生物(プロブレマティカ)だとの主張がある。体に体節や対を為すひれがある点では、環形動物や節足動物との類縁を感じさせるが、環形動物としては形が特殊すぎ、節足動物にしてはひれが付属肢的でなさすぎるといった問題点があるからである。他方、それに反対する意見もあり、それによると、後に発見された別属のものにはひれの付け根の下に付属肢があるものがあり、現在では節足動物に分類されることが多い。但し、ひれの下の付属肢のつき方も既知の節足動物のそれとは似ていない。
未記載の種を含め世界中で意外に多くの種類が発見されており、オパビニアなど絶滅したグループの動物のみならず最初期の甲殻類の一種であるバージェス頁岩のヨホイアや、有爪類(歯が円形状に並んだ口器など構造の多くに類似性が指摘されている)とも共通点が少なからず存在し、最初期の節足動物の系統発生の様子を推定するのに重要な存在である。
[編集] 化石の主な産地
保存の良い近縁種の化石は主に北アメリカ(米国ユタ州、米国ネバダ州、カナダ・ブリティッシュコロンビア州)、中国雲南省の澄江、オーストラリアのカンガルー島(Emu Bay頁岩)、グリーンランド(シリウス・パセット)などのいわゆるラーゲルシュテッテンで発見されている。口器および頭部の付属肢(触手)は硬質であり、その他の体の部分に比べれば発見例が多い。