バージェス動物群
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バージェス動物群(-どうぶつぐん)は、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるバージェス頁岩の中から化石として発見された動物群である。バージェス頁岩動物群とも呼ばれる。
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[編集] 概要
カンブリア紀中期のものとされ、これは、カンブリア爆発よりもやや後の時代である。嫌気性の高い粘土状態で急速に化石となったらしく、軟体部がよく保存され、体の組織が観察される。また、通常は化石に残らないような、軟体性の動物の化石がきれいに残っていることでも注目を受けた。例に示した動物が有名である。アメリカの古生物学者であるチャールズ・ウォルコットによって1909年に発見され、主要な動物については彼によって記載が行なわれた。彼は、それらの動物を現存する分類群の動物の先祖的形質を多くあらわしたものとして記載し、主に節足動物の初期の進化の系譜を示すものと考えた。
ところが、1960年代後半より、ハリー・ウィッチントンを中心とする研究グループがこれらの化石の再調査を行ない、その結果、これらの化石動物が、節足動物であっても、既存の分類群に当てはまらないものが多く、中には門そのものの帰属すらはっきり確定できないものが多数あることを明らかにした。これによってこれまでのカンブリア紀の海中生物相への認識が一変してしまった。
しかも、これに基づいてスティーヴン・ジェイ・グールドが書き表した『ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』が大変な反響を呼んだことで、この動物群の名は一般にまで、広く知られることになった。彼は、そのようにして発見された現在の動物門の枠組みには収まりきれない動物のことを奇妙奇天烈動物(きみょうきてれつどうぶつ)と呼び、カンブリア紀動物相の現在との異質性を主張した。彼の主張は古い時代だから原始的で単純な動物ばかりだったと言うことはない。むしろ、今は残っていない体制の動物門が多数いたと言うこと、また、絶滅したのは出来損ないだからではない、と言うことであった。
その後、彼の意見には専門家からの反発が強く、それほどの異質性はないとの主張も多い。ウィッチントンと共に研究を進めたコンウェイ・モリスらも、いわゆる奇妙奇天烈生物の大部分は現生の動物群やその傍系として理解できるとして、グールドの見方に反対を表明している。同時代の化石群はその後中国雲南省などからも発見され、この時代の動物相について、より詳しい情報が得られつつあることもあり、今後の検討によってまた評価が変わることもあるかも知れない。
[編集] バージェス動物群の生物
[編集] 現存するタクソンに属する種
- 海鰓目
- Thaumaptilon
- 有爪動物門
- アユシェアイア(Aysheaia)
- ハルキゲニア(Hallucigenia)
- 節足動物門
- 脊索動物門
- 環形動物門
- カナディア(Canadia)
- 海綿動物門
- 鰓曳動物門
- オットイア(Ottoia)
- 有櫛動物門
[編集] 絶滅したタクソンに属する種
[編集] 分類不明な種
- アミスクウィア(Amiskwia)
- アノマロカリス(Anomalocarid)
- ディノミスクス(Dinomischus)
- ネクトカリス(Nectocaris)
- オドントグリフス(Odontogriphus)
- オパビニア(Opabinia)
- ウィワクシア(Wiwaxia)
- メタルデテス(Metaldetes)
[編集] 関連項目
[編集] 参考資料
- スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語』(ハヤカワ文庫NF)ISBN 4150502366
- サイモン・コンウェイ・モリス『カンブリア紀の怪物たち 進化はなぜ大爆発したか』(講談社現代新書 シリーズ「生命の歴史」1) ISBN 4031493434
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