アレン・ニューウェル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
アレン・ニューウェル(Allen Newell、1927年3月19日 - 1992年7月19日)は、初期の人工知能研究の研究者。情報工学および認知心理学の研究者であり、ランド研究所やカーネギーメロン大学の情報工学科に勤務した。アメリカのカリフォルニア出身。スタンフォード大学卒。
[編集] 経歴
ニューウェルは1949年から1950年にかけてプリンストンの大学院で数学を学んだ。ゲーム理論という新たな領域にも出会い、「純粋数学よりも実験と理論の結合領域を好む」(サイモン)ということを見出した。その後プリンストンからサンタモニカのランド研究所に移り、「空軍のロジスティック問題を研究していたグループ」(サイモン)に参加した。ここで Joseph Kruskal に出会い、2つの理論を生み出した。それは組織理論のモデル(A Model for Organization Theory)と組織理論の公式化された精密な概念(Formulating Precise Concepts in Organization Theory)である。
その後、ニューウェルは「小集団における意思決定に関する実験の設計と指導に転じた」(サイモン)。しかし、彼は小集団の実験では正確で満足できる結果を得られないのではないかと考えた。そこで彼はランド研究所の仲間である John Kennedy、Bob Chapman、Bill Bielと共に Air Force Warning Station で「組織的処理の詳細を研究するための」大規模なシミュレーションを計画し、1952年に空軍から資金を提供された(サイモン)。この実験では、隊員間の相互のやり取りやレーダースクリーンの情報や妨害飛行機などを入力情報として組織がどのように意思決定し情報を扱うかを調査した。この実験からニューウェルは組織活動の本質は情報処理であると確信した。
1954年9月、ニューウェルはオリバー・セルフリッジのセミナーに参加した。これは「文字などのパターンを認識し学習するコンピュータプログラムの動作を説明する」ものであった(サイモン)。このときにニューウェルは知能を持ち適応能力のあるシステムを作成できるかもしれないと考えた。その考えを考察したニューウェルは1955年に論文 The Chess Machine: An Example of Dealing with a Complex Task by Adaptation(チェスマシン:適応によって複雑なタスクを扱う例)を書いた。これは「チェスを人間のように実行できるコンピュータプログラムの概念的な設計」である(サイモン)。
その後の主な業績としては、リスト処理言語IPL(1956年)、世界初の人工知能プログラムである Logic Theorist (1956年)、その発展型であるGPS(一般問題解決システム、1957年)がある。いずれもハーバート・サイモンとの共同研究の成果である。ダートマス会議で発表された Logic Theorist は、様々な公理をしらみつぶしで組み合わせて Principia Mathematica の定理を証明した。
Soarは、Unified theory of cognition(UTC)という著作を執筆する過程でニューウェルが具体化したものである(1973年)。同様の認知アーキテクチャは他にもある。特にジョン・R・アンダーソンのACT理論は広く採用されており、今日の認知科学における人間の様々な行動の認知モデルとして使われている。
1975年には、ハーバート・サイモンとチューリング賞を共同受賞した。受賞理由は「当初は J. C. Shaw と共にランド研究所で、続いてカーネギーメロン大学で多数の同僚や学生の協力を得つつ、20年間に渡って人工知能や認知心理学、リスト処理に関する基本的な貢献を行ってきたことに対して」であった。
1980年、ニューウェルはアメリカ人工知能学会の初代会長に就任した。
1992年、ニューウェルはアメリカ国家科学賞を受賞している。
[編集] 参考文献
- Allen Newell Collection カーネギーメロン大学
- Allen Newell, Herbert A. Simon, Biographical Memoirs, National Academy of Sciences
- Publications by Allen Newell Interaction-Design.org より
- "IEEE W. R. G. Baker Prize Award recipients"