アンソニー・ヴァン・ダイク
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アンソニー・ヴァン・ダイク(Anthony van Dyck, 1599年3月22日 - 1641年12月9日)は、バロック時代のフランドル出身の画家。
アントワープ(アントウェルペン)に生まれる。1616年から1620年頃までルーベンスの工房で助手を務め、その後は肖像画家として各地で活躍した。1621年にはイタリアに行き、約7年間の同地滞在の間、肖像画家として活躍した。
ヴァン・ダイクの作風には、師のルーベンスのほか、ティツィアーノらヴェネツィア派の画家の軽妙な筆致と華麗な色彩の影響が見られる。ヴァン・ダイクは1627年にいったん帰国後、1632年には英国に渡り、国王チャールズ1世の宮廷画家となった。それ以後、ヴァン・ダイクは1641年に没するまで英国で活躍した。
英国は美術の面では長らく不毛の地であり、生粋の英国人による絵画の展開は18世紀のホガースの登場を待たねばならなかった。それ以前の英国絵画史はハンス・ホルバイン、ヴァン・ダイクなどの外国人画家が席巻しており、なかでもヴァン・ダイクの華麗な肖像画は、その後の英国絵画にも大きな影響を与えている。
ヴァン・ダイクが描いた英国国王チャールズ1世像の数多い肖像画のうち、最高傑作とされているのが『狩り場のチャールズ1世像』である。伝統的な王侯の肖像画と異なり、この絵のなかの国王チャールズ1世は、野外の風景のなかで2人の召使とともに描き出されている。チャールズ1世は乗馬服、つば広帽、乗馬用ブーツという軽装でくつろいだ様子であるが、こちらを見つめる王の表情には威厳があり、モデルの身分の高さを無言のうちに語っている。王の傍らにいる2人の召使は陰のなかに描かれ、王のみに光が当たっている点も、王の高貴さを強調している。
[編集] 代表作
- チャールズ1世(1635頃)(ルーヴル美術館)
- 若き日の自画像(1621頃)(ミュンヘン、アルテ・ピナコテーク)