イン・ノミネ
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から17世紀にかけてイングランドで創られた、単旋聖歌「なんじ聖三位一体に栄光あれ Gloria Tibi Trinitas 」の一部分を定旋律とするポリフォニックな器楽曲の名称である。「イン・ノミネ(・ドミニ)」という名称は、「(神の)御名において」という歌詞の部分から定旋律が始まることに由来する。
《イン・ノミネ》は元来、4声か5声のための、特にヴァイオル・コンソートのための音楽であった(とはいえ、やがて鍵盤楽器やリュートの独奏曲に編曲されるようになる)。定旋律を受け持つ1つの楽器(主にアルト声部)が、旋律の各音を1小節ごとに1音(時に2音)ずつ奏でる中、残りの声部であるトレブル、テノール、バスは、より複雑な旋律線を通模倣的な対位法によって織り合わせていく。たいていこれらの声部は、いくつかの新しい動機を交互に繰り出していく。
《イン・ノミネ》は、1520年ごろにジョン・タヴァナーによって作曲されたパロディ・ミサ《なんじ聖三位一体に栄光あれ》が起源であり、この曲の「ベネディクトゥス」楽章でアルト・パートが「イン・ノミネ・ドミニ」と歌う際、4声の対位法が構成される。まだヴァイオル・コンソートのための楽曲がほとんど出版されていなかった頃、この魅力的な部分が器楽曲の小品に編曲されると人気を呼び、コンソート音楽という新しい楽種の模範となった。ヴァイオル・コンソートのための《イン・ノミネ》は、現代音楽の作曲家によっても挑戦されている。
《イン・ノミネ》の往年の作曲家として、クリストファー・タイ、トマス・タリス、ウィリアム・バード、オーランド・ギボンズ、リチャード・オールウッド、ヘンリー・パーセルがとりわけ有名である。《イン・ノミネ》は、どちらかと言えば遅めで瞑想的な性格の小品であるが、性格においては変化に富み、憂鬱なものや静謐なもの、激昂したもの、愉快なものまでさまざまである。たとえばタイの作例では、行商人の声を模倣した「叫び "Crye" 」と題された《イン・ノミネ》すらある。
[編集] 音源
- Bull In Nomine(MIDI file, 8kb)
- Gibbons In Nomine (MIDI file, 10kb)
- オーランド・ギボンズの5声の《イン・ノミネ》
- おそらくヴァイオル・コンソートのために作曲されたのであろうが、この音源ではオルガンで演奏されている。