エバンズビル (インディアナ州)
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エバンズビル(Evansville)は、アメリカ合衆国インディアナ州南西端に位置する中規模商工業都市。バンダーバーグ郡(Vanderburgh County)の郡庁所在地で、インディアナポリス・フォートウエインに次ぐ同州第3の都市である。人口は121,582人(2000年国勢調査)。2004年の推計では117,156人に減少している。ケンタッキー・イリノイ両州にもまたがる都市圏では人口342,815人を数える。市は大きく蛇行するオハイオ川中流域の北岸に位置し、River Cityという別名を持っている。
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[編集] 歴史
エバンズビルの歴史は1809年にさかのぼることができる。もともとこの地にはミシシッピアン族のネイティブ・アメリカンが住んでいた。そこにフランス人入植者たちが住みつくようになり、この地をフランス語で「美しい川」という意味であるLa Belle Riviereと名付けた。1817年に都市計画がなされ、都市創設者のひとりであるロバート・モーガン・エバンズ(Robert Morgan Evans)にちなんでエバンズビルと名付けられた。
蛇行するオハイオ川に面した地の利を生かし、エバンズビルは蒸気船による水上交通の要衝として、そして商業都市として栄えた。1819年には正式な町となり、1847年には市に昇格した。1850年には鉄道も開通した。1890年の国勢調査では、エバンズビルは全米第56位の人口規模を誇る都市へと成長した。しかし、1900年代以降はその順位は徐々に下がっていった。
1932年にはオハイオ川を渡る最初の橋がかけられた。1937年、オハイオ川が洪水を起こし、エバンズビルに大きな被害をもたらした。それに対し、市では堤防やコンクリート製の壁、排水ポンプ場を建設して治水に努めた。
第二次世界大戦中、エバンズビルでは軍艦の造船をはじめとする軍需産業が発展した。終戦後もしばらくは工業の発展が続いたが、1950年代も後半に入るとエバンズビルでも郊外化が進行していった。1970年代に入ると、エバンズビルは3州にまたがる都市圏の商業、医療、サービス業の中心地へと変遷した。1990年代には、北郊のプリンストン市(Princeton)にトヨタ自動車が進出したり、オハイオ川に浮かぶカジノができたりと経済の多様化が見られるようになった。
2005年11月6日、エバンズビルで竜巻が発生し、死者24人を出した。
[編集] 地理
エバンズビルは北緯37度58分38秒西経87度33分2秒(37.977166, -87.550566)に位置している。
アメリカ合衆国統計局によると、エバンズビル市は総面積105.6km²(40.8mi²)である。このうち105.4km²(40.7mi²)が陸地で0.2km²(0.1 mi²)が水域である。総面積の0.15%が水域となっている。
エバンズビルの気候は1年を通して穏やかで、四季がはっきりとしている。冬の平均気温は摂氏0度前後である。夏は30度を越える。年間の降雨量は1,050mm、降雪量は33cmほどである。ケッペンの気候区分ではCfa(温暖湿潤気候)に属する。
[編集] 文化
[編集] 見どころ
市の南を流れるオハイオ川には、1996年に開業したカジノ・アズター・エバンズビル(Casino Aztar Evansville)のカジノ船が浮かんでいる。この船の定員は2,700名である。河岸には乗船場・各種ショップ・レストラン・休憩を備えたパビリオンが建っている。250室を備えるホテルもあり、連絡通路でパビリオンとつながっている。
1928年に開園した、メスカー・パーク動物園(Mesker Park Zoo)では、200,000m²を超える広大な敷地の中で500種以上の動物が飼育されている、これらの動物は様々な植物が植えられた、自然に近い環境の中で自由に動き回っている。
エンジェル・マウンズ州指定史跡(Angel Mounds State Historic Site)は、12世紀から15世紀にかけてのネイティブ・アメリカンの住居跡である。インディアナ州内に16ヶ所ある州立博物館・州指定史跡のひとつであるこの史跡は、全米で最も保存状態の良いネイティブ・アメリカン住居跡のひとつでもあり、この地域に住んでいたミシシッピアン族の文化を知ることのできる場所となっている。
1915年に開場したボッセ・フィールド(Bosse Field)は、ボストンのフェンウェイ・パーク、シカゴのリグレー・フィールドに次いで全米で3番目に長い歴史を持つ野球場である。独立リーグのひとつ、フロンティアリーグに所属する地元野球チーム、エバンズビル・アターズはこの球場を本拠地としている。アターズには、法政大学を卒業して独立リーグ入りした日本人外野手、根鈴雄次が所属していた。
[編集] 芸術と博物館
エバンズビル・フィルハーモニック・オーケストラ(Evansville Philharmonic Orchestra)は、3州にまたがるエバンズビル都市圏で最大の芸術団である。1934年に結成されたこのオーケストラは約80人の楽団員を抱え、定例演奏会をはじめ、市内および近隣の各種教育機関などでもコンサートを行なっている。
エバンズビル芸術・歴史・科学博物館(Evansville Museum of Arts, History and Science)は、インディアナ州南部の総合的な文化の中心となっている。館内のコック・プラネタリウム(Koch Planetarium)はインディアナ州最古のプラネタリウムである。敷地内には19世紀から20世紀前半のインディアナ州南部の交通に関する展示物を集めたエバンズビル交通博物館(The Evansville Museum Transportation Center)も立地している。
ライツ・ホーム博物館(Reitz Home Museum)は、エバンズビル市内で唯一、ビクトリア様式の家屋を博物館にしたものである。同博物館は全米屈指のフランス第二帝国時代の建築物として知られている。1973年、この建物は国の史跡(National Register of Historic Places)に指定された。
第二次世界大戦中、エバンズビルでは167隻の戦車上陸用舟艇(LST)を造船した、内陸最大のLST造船地であった。2005年10月、第325戦車上陸用舟艇(USS LST 325)がエバンズビルの河港につけられ、博物館として転用された。
[編集] 公園
エバンズビル市内、およびバンダーバーグ郡は65ヶ所の公園と21ヶ所の各種施設を抱え、その総面積は10,000,000m²を超える。郡西部の丘陵地帯、約900,000m²にわたって広がるバーデット公園(Burdette Park)は、ウォータースライダーや3つのプールを備える水上公園のほか、BMXのレーシングトラック、バッティングセンター、ソフトボール場、ミニゴルフコース、テニスコート、釣堀を抱える大規模な公園である。また市内にはウェッゼルマン森林自然保護区(Wesselman Woods Nature Preserve)も設定されており、900,000m²以上にわたって原生林が広がっている。保護区内の自然センターは野生生物観察エリアや会議室、図書館、土産物屋を備えており、展示物を置いたり、イベントを開催したりしている。
[編集] イベント
エバンズビルの代表的なイベントとしては、ウェストサイド・ナット・クラブ秋祭り(West Side Nut Club Fall Festival)が挙げられる。このイベントは毎年10月にダウンタウン西側の路地で開催されるものである。路地で開催されるイベントとしては、ニューオーリンズのマルディ・グラに次ぐ規模である。
また、毎年7月に行われるエバンズビル・フリーダム・フェスティバル(Evansville Freedom Festival)も代表的な夏のイベントである。このイベントでは、「オハイオ川の稲妻」(Thunder on the Ohio)と呼ばれる水上滑走艇のレースやオハイオ河岸での花火大会が執り行われる。近年では、アメリカ合衆国海軍のブルーエンジェルスによる飛行ショーも観客を集めている。
また7月には、市の北に位置する会場でバンダーバーグ郡4-Hフェア(Vanderburgh County 4-H Fair)という郡の夏祭りも行われる。
[編集] メディア
エバンズビル・クーリエ・アンド・プレス紙(Evansville Courier & Press)は、エバンズビル唯一の日刊紙で、E.W.スクリップス社(E.W. Scripps Company)による経営の下で刊行されている。同社はエバンズビル都市圏の月刊経済紙であるエバンズビル・ビジネス・ジャーナル紙(Evansville Business Journal)も刊行している。また、近隣のケンタッキー州ヘンダーソン市(Henderson)でも新聞を刊行している。このほかのエバンズビルの紙メディアとしては、タッカー出版グループ(Tucker Publishing Group)が出版している隔月誌エバンズビル・リビング(Evansville Living)や、無料のエンターテイメント誌ニューズ4U(News4U)、アフリカン・アメリカン向けの月刊紙アワ・タイムズ(Our Times)がある。
エバンズビルのテレビ市場は全米100位の規模で、主要各テレビ局が市内に支局を置いている。また、エバンズビルはラジオ局32局を有する。エバンズビル大学もFMラジオ局を有しており、オルタナティブ、クラシック、ジャズといった幅広いジャンルの音楽番組を放送している。
[編集] 教育
エバンズビルは市内とその周辺に公立小学校20校、公立中学校11校、公立高校5校のほか、私立高校4校(うち2校はローマ・カトリック系)を有している。私立のシグネチャー高校(Signature School)はニューズウィーク誌の全米高校ランキングトップ100で第54位にランクされた優秀な高校である。インディアナ州内の高校で同ランキングのトップ100に入ったのは、シグネチャー高校ただ1校だけである。
また、エバンズビルにはトヨタ自動車の進出もあり、日本人が比較的多いことから、南インディアナ補習授業校が土曜日に日本語の授業を行っている。
エバンズビルには州立の南インディアナ大学と私立のエバンズビル大学の2校がキャンパスを構えている。南インディアナ大学は近年学生数が増加しており、約10,000人の学生を抱えている。このほか、インディアナ大学の医学部が南インディアナ大学のキャンパス内に医学教育センターを設置している。
[編集] 交通
市の玄関口となる空港はダウンタウンの北約6kmに位置するエバンズビル地域空港(Evansville Regional Airport)である。全米各地から1日50便以上の航空機が発着する。空港から市内各地へは、エバンズビル都市圏交通局(METS)が運営する路線バスの便がある。また、市内の主要ホテルにはシャトルの便もある。
市の北郊を州間高速道路I-64が東西に走っている。I-64はセントルイスとバージニアビーチを結ぶ高速道路で、途中ルイビル・レキシントン・リッチモンドなどの都市を通る。I-64の支線であるI-164は本線とエバンズビルのダウンタウンとを結んでいる。セントルイスへは西へ約270km(所要2時間半)、ルイビルへは東へ約190km(所要約1時間45分)である。
将来的には州間高速道路I-69が南へテキサス州ブラウンズビルまで延伸され、エバンズビルを通る予定である。I-69は現在インディアナポリスからミシガン州フリントを通りカナダ国境へと通じており、完成するとカナダとメキシコそれぞれの国境に通ずる2本目の高速道路になる予定である。延伸に伴い、エバンズビルではI-164がI-69本線に格上げされる予定となっている。
[編集] 人口動勢
基礎データ
- 人口: 121,582人
- 世帯数: 52,273世帯
- 家族数: 30,527家族
- 人口密度: 1,153.4人/km²(2,987.0人/mi²)
- 住居数: 57,065軒
- 住居密度: 541.3軒/km²(1,402.0軒/mi²)
人種別人口構成
- 白人: 86.24%
- アフリカン・アメリカン: 10.92%
- ネイティブ・アメリカン: 0.21%
- アジア人: 0.72%
- 太平洋諸島系: 0.05%
- その他の人種: 0.49%
- 混血: 1.37%
- ヒスパニック・ラテン系: 1.14%
年齢別人口構成
- 18歳未満: 22.7%
- 18-24歳: 11.5%
- 25-44歳: 28.6%
- 45-64歳: 21.0%
- 65歳以上: 16.2%
- 年齢の中央値: 36歳
- 性比(女性100人あたり男性の人口)
- 総人口: 88.8
- 18歳以上: 85.1
世帯と家族(対世帯数)
- 18歳未満の子供がいる: 26.6%
- 結婚・同居している夫婦: 40.8%
- 未婚・離婚・死別女性が世帯主: 13.7%
- 非家族世帯: 41.6%
- 単身世帯: 35.1%
- 65歳以上の老人1人暮らし: 13.5%
- 平均構成人数
- 世帯: 2.24人
- 家族: 2.90人
収入と家計
- 収入の中央値
- 世帯: 31,963米ドル
- 家族: 41,091米ドル
- 性別
- 男性: 30,922米ドル
- 女性: 21,776米ドル
- 人口1人あたり収入: 18,388米ドル
- 貧困線以下
- 対人口: 13.7%
- 対家族数: 10.1%
- 18歳未満: 19.0%
- 65歳以上: 8.4%
[編集] 姉妹都市
[編集] 参考文献
- en:Evansville, Indiana 7/6/2006 23:19 (UTC)
[編集] 外部リンク
- Official City Government Website(英語版)
- Evansville Convention & Visitor's Bureau(英語版)
- Evansville's museum(英語版)
- Evansville BlueCats(英語版)
- Evansville Otters(英語版)
- Evansville Vanderburgh Public Library(英語版)
- Evansville Freedom Festival(英語版)
- Evansville Living(英語版)
- Frog Follies(英語版)
- 南インディアナ補習授業校(日本語版)
- City-Data.com - Evansville, Indiana(英語版)
- Evansville, IN(Yahoo!Map地図)