エマルジョン燃料
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エマルジョン燃料は燃料油(廃油や重油・軽油等)に水と界面活性剤を添加し、機械的に攪拌してオイル中に水を分散させた燃料である。ただし、添加剤を用いない場合でもエマルジョン燃料と呼ばれる。窒素酸化物や粒子状物質(PM)の発生を抑え、内燃機関が排出するガスがもたらす環境負荷を低減させる効果がある。
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[編集] エマルジョン燃料の性状
外見は白濁した液体。本来は分離してしまう水粒子を油の膜層が界面活性剤を介在としてくるんでいる。
エマルジョン燃料の製造工程上、A重油と水を混合したエマルジョン燃料であればA重油の成分を含んだエマルジョン燃料になる。よって廃油であれば廃油の性質、C重油であればC重油の性質、灯油であれば灯油の性質、というようにエマルジョン燃料の性質は水と混合する燃料によって様々である。
[編集] メカニズム
このエマルジョン燃料を内燃機関で着火させると、まず低沸点の水粒子が気化・蒸発する。その際、まわりを取り囲む油が飛散し、より細かい径の粒子となる。この油粒子は体積あたりの酸素と接する面積が大きくなり、局部的な不完全燃焼が少なくなるため燃焼効率が高まりPMの発生量が減少する。同時に、含有する水の影響で内燃機関の温度が比較的低温となることから、窒素酸化物の発生も抑えられる。水分比25%の軽油エマルジョン燃料でディーゼルエンジンを稼動させた実験では、軽油100%と比較して窒素酸化物排出量が60%減少、PMの発生量は90%まで低減された。これより、排出ガスを浄化する装置への負荷減少にも効果がある。
[編集] エマルジョン燃料の現状
燃焼効率や環境負荷物質低減などに最も適した混合比率は、油分の種類や界面活性剤の選択なども条件にからみ、未だ広く実用化されるには一歩手前の検討段階にある。
また、攪拌機についても内燃機関と直結させるための工夫が進んでおり、実用化で先行している工場での発電機などの据付型から、小型にしてトラクターなどのエンジンと一体化させる研究も行われている。