ガチフロキサシン
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ガチフロキサシン水和物(略称GFLX)は、杏林製薬が創製したニューキノロン系抗生物質で、 レスピラトリーキノロン( Respiratory Quinolone )製剤とも言われる。
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[編集] ガチフロ錠
経口薬は日本で「ガチフロ®」の商品名で2002年から発売され、杏林製薬が製造・販売し、大日本住友製薬からもプロモーション提携によって販売されている。
杏林製薬の大型新薬として、1995年にドイツen:Grünenthal社、1996年に米国ブリストル・マイヤース スクイブ(en:Bristol-Myers Squibb)社、1998年に韓国Handok Pharmaceuticals(韓獨薬品)社へ導出し、日本での上市に先行して1998年にFDAで、2001年にドイツ連邦保健省(EU相互認証有り)で承認・発売され、2003年には韓国でも発売された。
BMSからは「Tequin(テクイン)」、Grünenthalからは「BONOQ(ボノック)」など、韓獨は「ガチフロ錠」の販売名となっている。
(ボノックは、Grünenthalの都合で2004年にドイツでの販売と諸外国での販売開拓を停止している。)
[編集] 特徴
肺炎球菌、インフルエンザ菌、肺炎クラミジア、マイコプラズマ、レジオネラなどに強い抗菌活性を有するレスピラトリーキノロンの一種で、同系統で先に上市していたトスフロキサシンやスパルフロキサシンの薬剤吸収低下や光線過敏症の欠点がなく、さらに従来のニューキノロン剤による薬剤耐性が出来ている多剤耐性肺炎球菌による市中肺炎に優れた効果を示す点から発売当初は「有望な抗菌剤」として注目され、杏林製薬は初年度売上85億円、以後年間売上100億円以上にする戦略をたてた。
[編集] ガチフロ事件
海外で発売後、投与された患者の少数が服用後に低血糖・高血糖症状を起こす副作用が発生したため、日本での承認時に重大な副作用と、糖尿病患者ではそのリスクが高くなる事から慎重投与と記載したが、2002年の日本発売後、2003年2月にかけて、当時のインフルエンザ大流行に並行して感冒や中耳炎・肺炎などに多く用いられ、その内重篤な低血糖・高血糖による意識障害が(糖尿病患者や高齢者を中心に)複数発生したため、厚生労働省は翌3月に緊急安全性情報を発し、糖尿病患者の投与禁忌とし、低血糖・高血糖に注意するよう警告欄を新設した。
副作用による死者は発生しなかったものの、緊急安全性情報が発せられた事で医療現場では慎重投与という形となり糖尿病患者には原則投与出来なくなってしまったため、杏林製薬が当初目論んでいた売上高100億円は遠のいてしまい、同社販売分の2003年3月期実績で47億円と大幅減少してしまう。(尚、海外分は同期65億円)
これが俗に言うガチフロ事件である。
2003年4月末までに杏林製薬はTOBによって帝人傘下に入り、帝人医薬品医療事業グループ(現在の帝人ファーマ)と同年10月までに事業統合する合併構想が有り、実現まで秒読みとされてたが、このガチフロ事件によって帝人側が難色を示したため同年4月23日に「合併見送り」の破談会見を両社合同で行うこととなる。
(杏林製薬#帝人との合併構想参照)
なお、2006年2月にはFDAから低血糖・高血糖に関する注意書きを北米販売元のBMS社へ強化するよう発表した。
[編集] ガチフロ点眼液
1996年に千寿製薬へ、2000年に米国アラガン社にガチフロキサシン点眼液を導出し、2003年にFDAより承認を受け順次発売され、2004年秋に日本でも製造承認を受けて発売された。ガチフロ点眼液の特徴はレボフロキサシン点眼液よりもグラム陽性菌及びグラム陰性菌、嫌気性菌など様々な菌に幅広く、強い抗菌活性を有し、薬剤耐性が出来にくいとされる所である。
[編集] Tequin Injection
Tequin Injectionは米国ブリストル・マイヤース スクイブから発売されている、ガチフロキサシンの点滴薬である。
日本での上市は副作用の懸念も有ってか未定の模様。