クベーラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クベーラ (Kubera) はインド神話の富と財宝の神。地下に埋蔵されている財宝の守護神であり、またローカパーラの一人として北方の守護神とされる。ヴァイシュラヴァナともいう。ヴィスヴェーシュヴァラの子で、プラージャパティの一人である聖仙プラスティヤの孫。ナラクーバラ、マニグリーヴァの父。ヤクシャ族(薬叉、夜叉)の王とされ、ラークシャサ族の王であるラーヴァナとは異母兄弟にあたる。
シヴァ神と親しく、カイラス山にある都アラカーに居住して、ヤクシャをはじめガンダルヴァ、ラークシャサなど多数の半神族にかしずかれている。千年の修行がブラフマー神に気に入られ、神となることをえ、さらに天を飛行する戦車プシュパカ・ラタを授かった。もともとラークシャサの居城であったランカー島(セイロン島)を都としたが、後にラーヴァナとの対立によってカイラス山に退き、またプシュパカ・ラタをも奪われる。
彫刻などでは太鼓腹の目立つ姿で描かれ、アヒチャトラー出土の坐像(ニューデリー博物館蔵)などは有名である。仏教に取り入れられて、四天王の1つ多聞天となったが、これはヴァイシュラヴァナの漢訳である。一方の毘沙門天はその音写である。多聞天が北方の守護を担うのはクベーラ神に由来している。