コウノトリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
コウノトリ | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() |
||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||
Ciconia boyciana Swinhoe, 1873 |
||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
Oriental Stork |
コウノトリ(鸛, Ciconia boyciana)は、コウノトリ目コウノトリ科に属する鳥の一種である。
目次 |
[編集] つるとの混同
- 遠くから見ると鶴とよく似ているため、度々鶴と混同される。
- だが、鶴の様に頭は赤く無く足も赤い。また、成鳥は泣かず、クラッタリングと呼ばれるくちばしをたたく行為でコミュニケーションをとる。
- よく、鶴に松とあるがこれは、コウノトリの誤り。鶴は、足の構造上木に泊ることは不可能である。これは昔から一部の人を除いてコウノトリと鶴を同じ動物だと思っていた証拠である。
[編集] 形態
全長約110cm、翼開長は約200cmにもなる非常に大型の水鳥である。羽色は白と黒、クチバシは黒。
[編集] 分布
分布域は東アジアに限られる。また、総数も推定2,000~3,000羽と少なく、絶滅の危機にある。中国東北部(満州)地域で繁殖し、中国南部で越冬する。渡りの途中に少数が日本を通過することもある。
[編集] 生態
成鳥になると鳴かなくなる。代わりに「クラッタリング」と呼ばれる行為が見受けられる。くちばしを叩き合わせるように激しく開閉して音を出す行動で、ディスプレイや仲間との合図に用いられる。
[編集] Sibley分類体系上の位置
Sibley-Ahlquist鳥類分類 |
---|
コウノトリ亜目 Ciconii
コウノトリ下目 Ciconiides
コウノトリ小目 Ciconiida
コウノトリ上科 Ciconioidea
コウノトリ亜科 Ciconiinae
|
[編集] 近縁種
広義のコウノトリは、コウノトリ亜科に属する鳥類の総称である。ヨーロッパとアフリカ北部には、狭義のコウノトリの近縁種であるシュバシコウ Ciconia ciconiaが棲息している。羽色は似ているが、クチバシは赤。こちらは数十万羽と多く、安泰である。特にヨーロッパでは幸福を運ぶ鳥として親しまれている。高い屋根や塔の上に巣を作り、雌雄共同で抱卵、子育てをする。このことから欧米には「赤ん坊はコウノトリがくちばしに下げて運んでくる」という言い伝えが広く伝えられている。
[編集] Status
- ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
- 絶滅危惧IA類(CR)(環境省レッドリスト)
-
- (日本国内)繁殖個体群・野生絶滅(1971年)
- 特別天然記念物(1956年指定)
[編集] 日本列島繁殖個体群の絶滅
日本列島にはかつて留鳥としてコウノトリが普通に棲息していたが、明治期以後の乱獲や巣を架ける木の伐採などにより棲息環境が悪化し、1956年には20羽にまで減少してしまった。そのため、コウノトリは同年に国の特別天然記念物に指定された。ちなみにこのコウノトリの減少の原因には化学農薬の使用や減反政策がよく取り上げられるが、本邦で農薬の使用が一般的に行われるようになったのは1950年代以降、減反政策は1970年代以降の出来事であるため時間的にはどちらも主因と断定しにくく、複合的な原因により生活環境が失われたと考えられる。
その後、1962年に「特別天然記念物コウノトリ管理団体」の指定を受けた兵庫県は1965年5月14日に豊岡市で一つがいを捕獲し、「コウノトリ飼育場」(現在の「兵庫県立コウノトリの郷公園附属飼育施設コウノトリ保護増殖センター」)で人工飼育を開始。また、同年には同県の県鳥に指定された。しかし、個体数は減り続け、1971年5月25日には豊岡市に残った国内最後の一羽である野生個体を保護するが、その後死亡。このため人工飼育以外のコウノトリは国内には皆無となり、さらには1986年2月28日に飼育していた最後の個体が死亡し、国内繁殖野生個体群は絶滅した(これ以降も不定期に渡来するコウノトリは観察され続けている)。
[編集] 人工繁殖の成功
多摩動物公園では、中国から譲り受けて人工飼育を続けていた結果、1988年4月6日に国内初の人工繁殖に成功した。コウノトリ飼育場でも、この国内繁殖野生個体群の絶滅の約7ヶ月前である1985年7月27日に当時の旧ソ連から幼鳥6羽を貰い受けており、多摩動物公園の人工繁殖初成功の翌年5月16日に、人工繁殖に成功している。これ以後、毎年の繁殖に成功している。また、大阪市天王寺動植物公園、豊橋総合動植物公園でも繁殖が成功し、国内飼育数を増やしている。
兵庫県では繁殖成功後の1992年4月22日には野生復帰計画が開始される。その後、コウノトリ飼育場では、近親交配を避けるため、何度か動物園やロシアからコウノトリをもらい受け、2002年5月5日には生育したものとあわせて飼育100羽を達成した。
[編集] 再野生化の開始
2005年現在では周辺地域にコウノトリの生息可能な環境が整備されつつあり、周辺の農民も農薬の散布を控え、無農薬栽培に切り替える等の協力をしている。そして、2005年9月24日には世界初の放鳥(餌をとるなどの訓練をつんだ8羽の中から選ばれた、2~7歳の雄2羽と雌3羽の計5羽)が行われ、34年ぶりにコウノトリが大空に羽ばたくこととなった。この放鳥式典には山階鳥類研究所総裁等を務める秋篠宮文仁親王・紀子夫妻も参加し、約3500人もの参加者とともに見送った。放鳥にあたっては、飼育生活が長いので餌を求めるためか、2羽が30分程で戻ってきてしまうというハプニングも見受けられた。2005年12月24日には放鳥記念碑の除幕式が行われた。その後2006年4月14日には自然放鳥したコウノトリの産卵が確認され、続けて18日にも2卵目が発見された。2006年現在では放鳥されたペアへの托卵など、段階的に自然に戻す計画も続けられており、コウノトリの郷公園により追跡も行われている。
また、多摩動物公園でも、コウノトリが動物園の内外を自由に飛翔できるような飼育展示方法が検討されている。
式典により放鳥したコウノトリは背中に発信機をつけているため、人工衛星から行動範囲を監視できるが、他にも他県での目撃情報の収集を求めている。このコウノトリが自然界に定着すれば、トキの野生復帰への参考にもなるため、これからの動向が期待されている。
[編集] 関連項目
- 兵庫県 - 県鳥としてコウノトリ。兵庫県警察のマスコットキャラクター「こうへいくん」のモチーフもコウノトリ。
- 但馬空港(コウノトリ但馬空港)
- 豊岡市-市名の候補にもなり、旧豊岡市の市鳥にもなっていた。(現在の市鳥は定められていないが、内外からコウノトリだと認識されている)市のシンボル。
- 城崎温泉 - コウノトリが傷を癒していたことにより発見されたという開湯伝説が伝えられている。
- 兵庫県立コウノトリの郷公園-コウノトリの飼育・保護・研究・放鳥を行っているコウノトリの専門機関。
- 絶滅危惧種
- 九州石油 - ブランド名"STORK"はコウノトリの意。
[編集] references
- ^ Ciconia boyciana (Species Factsheet by BirdLife International)
- ^ Ciconia boyciana (環境省絶滅危惧種情報 by 生物多様性情報システム J-IBIS)
[編集] 外部リンク
- コウノトリの飼育施設や観察、学習ゾーンがあり、放鳥や環境保全など再野生化活動の拠点にもなっている。また豊岡市立の学習施設コウノピアが併設されている。兵庫県立コウノトリの郷公園内にある。
- ボランティアによる放鳥・野生コウノトリの観察記録が公開されている。