ザ・ダウンワード・スパイラル
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『The Downward Spiral(ザ・ダウンワード・スパイラル)』は、ナイン・インチ・ネイルズが1994年3月に発表したセカンド・アルバムである。アメリカのビルボード誌で初登場2位を記録し、現在に至るまでナイン・インチ・ネイルズの代表作と言われ続けている。
リリースはナッシング・レコードから、配給はインター・スコープ・レコーズが手がけている。
[編集] 収録曲
以下にアメリカ盤(オリジナル)の収録曲を記載する。ヨーロッパ盤の収録曲も同様であるが、日本盤のみジョイ・ディヴィジョンのカヴァー“Dead souls”が10曲目に収録されている。
- Mr.self destruct
- Piggy
- Heresy
- March of the pigs
- Closer
- Ruiner
- The becoming
- I do not want this
- Big man with a gun
- A warm place
- Eraser
- Raptile
- The downward spiral
- Hurt
[編集] 特徴
当時のトレント・レズナーの心理状態、1990年代のアメリカを取り巻く厭世観がはっきりと表れた作品である。当時のレズナーの心理状態としては1曲目のタイトルが「自己破壊」となっているように自己嫌悪、または“Eraser”と言うタイトル(あるいはその歌詞)で聴く事の出来るような疎外感がテーマとなっている。しかしその一方で“Closer”では他者とのコミュニケーション願望が表れているなど、矛盾や混沌に満ちた作品でもある。そうした自己の中に生まれた混乱は更に閉塞感までを生み出し、それ故に作品全体が大変に陰鬱な雰囲気で覆われている。
同じようなテーマを持った作品にピンク・フロイドが1979年に発表した「ザ・ウォール」があり、その類似性についてはレズナー本人が「ザ・ウォール」からインスピレーションを受けて作成したと公言している。
先述したような万人向けとは言い難いテーマと雰囲気を持ちながらも、各々の曲の構成は典型的なポップ・ソングのフォーマットをなぞっており、判りやすいメロディーが多く盛り込まれている。本作が商業的な成功を収めた要因がそこにあると言える。
[編集] 制作にまつわるエピソード
- 本作をレコーディングする際に、レズナーは家を借りている(「LE PIG Studio」と名付けた)。その家は1969年にチャールズ・マンソンによって起こされた「シャロン・テート殺人事件」の現場となった家であった。レズナーは知らずに借りたという事だが、レコーディング終了後にこの家を手放している。
- 本作からは“March of the pigs”“Closer”がシングル・カットされ、両曲ともビデオ・クリップも作成された。“Closer”のビデオは作中に十字架に張り付けられたサルが出てくるシーンが問題となり、テレビではその部分はカットされている。また、その後に“eraser”“hurt”の2曲のライブ映像がそのままビデオ・クリップとなった。
- リリース後にツアーの一環で1994年に開催された『ウッドストック 1994』に出演した。メンバー全員が泥まみれになったまま行われたステージングは大きな話題となった。その模様を収めた海賊版ビデオも多数出回るが、中には日本の衛星放送を録画しただけの劣悪な物もあった。公式な作品としては“The only time”“Sanctified”のパフォーマンスが、ビデオ作品集『Closure』に収録されるに留まった。