衛星放送
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衛星放送(えいせいほうそう)とは、人工衛星を用いて行う公衆によって直接受信されることを目的とする無線通信の送信の総称である。
日本に於いては、放送法に基づく放送(放送法施行規則に規定する衛星系による放送)として行われるもの及び電気通信役務利用放送法に基づく電気通信役務利用放送(電気通信役務利用放送法施行規則に規定する衛星役務利用放送)として行われるものがこれに相当する。
目次 |
[編集] 概説
地上系による放送では、見通しのよい山頂や高い電波塔に設置された送信所からVHF帯又はUHF帯(難視聴地域の一部などではSHF帯)の周波数を用いる。この場合、受信可能な地域はアンテナが見える範囲の近隣地域に限られる。衛星放送においては、赤道上空約35,786kmにある静止衛星に中継器を置き、地球上から送信(アップリンク)した電波を受信したのち別な周波数に変換し、地球上に向けて再送信する(ダウンリンク)。静止軌道からは地球のほぼ半球が見えるため、広範囲での受信が可能である。
受信方法には次の二つがある。
米国では、早くからケーブルテレビ (CATV) が普及したが、直接衛星放送のディレクTVなどが追いあげている。アジアやヨーロッパなどではアジアサットなどの国境を超えたテレビ放送が普及している。一方、日本ではBS(放送衛星)、CS(通信衛星)とケーブルテレビとの競合が見られる。
また、衛星放送の目的として当初は人口希薄な地域における難視聴地域の解消(すなわち既存放送コンテンツの再送信)があげられたが、その後、地上系による放送では出来ない様な専門性の高い番組を提供するなど、チャンネルを増やす目的の放送が広く行われるようになった。
また、日本放送協会 (NHK) のBSは別途衛星契約が必要で、カラー契約に945円(毎月)を加えることとなる。2003年12月、NHK衛星契約数はおよそ1200万人であるが、カラー契約のままの世帯も多い(殆ど視聴されていないがアンテナが立っているケースもある)。
[編集] 衛星放送全般の弱点
- 地上波テレビ放送用アンテナとは別に各種衛星放送用アンテナを立てて受信する必要があるが、放送サービスによっては別々にアンテナを立てる必要があることや、衛星放送向けアンテナを立てること自体の必要性を感じない世帯も少なくなく、当初見込みほどの普及率には至っていない。
- 更にSHF波であるがために、受信世帯周辺もしくは送信施設周辺において、大雪や大雨などの荒天で電波が遮られ易いため、受信障害のリスクが大きくなる点である。これが一部では言われていた「衛星放送が地上波放送を駆逐する」論の破綻の大きな原因の一つになった。ただしそれもBSではデジタル放送開始により降雨荒天用のノイズに強い送信を行い、画質が低下しながらも内容を確認できる緊急用放送を実施できるようになっているのである程度克服していると言える(画面の動きはは地上デジタル放送のワンセグに近い)。
他にも地方局におけるローカル番組の需要が強い地域も少なくない点もある。関西地区においては、全国ネットの巨人戦を阪神戦に差し替え中継する例が多いことが有名である。
[編集] 日本に於ける衛星放送の種類
日本に於いては、衛星放送について次の様に分類される。
[編集] 放送事業者の種類
- 日本放送協会 (NHK) はBSアナログ放送では全事業を単独で行うが、BSデジタル放送については委託放送事業者となる。
- 民間放送については委託放送事業者・受託放送事業者・衛星役務利用放送事業者・プラットフォーム事業者などの形態がある。→民間放送を参照
- 放送(国内放送)
- モバHO!
- BSアナログ ※
- 放送(受託国内放送)
- BSデジタル
- 東経110度CS - e2 by スカパー!
- 放送(受託国内放送)及び電気通信役務利用放送の混在
- 東経124度・同128度CS - SKY PerfecTV!
- 電気通信役務利用放送
- ミュージックバード - JC-SAT2
- SPACE DiVA
- SOUND PLANET
- AccessTV
※ 国内放送として行われるBSアナログは、人工衛星の寿命に伴い2007年をもって終了予定。なお、その後の後継人工衛星を使用したBSアナログはBSデジタルと同じく受託国内放送となる見通し。
[編集] 人工衛星による区分
衛星放送は、用いられる人工衛星によって、放送衛星 (BS) と、通信衛星 (CS) に分けられる。
[編集] BSとCSの違い
もともとは、BSによる放送は広範囲向け、CSによる放送は特定の受信者に向けてのものであった。
BSは広範囲への放送を行うため、衛星に搭載されているトランスポンダの出力が高くなっていた。これに対しCSは特定の受信者向けの放送を想定しており、トランスポンダの出力はBSより低かった。
受信側の設備もBSとCSでは異なっていた。
現在では、BS放送、CS放送ともに実質的には違いはない。ただし、CS放送のほうがチャンネル数は多く、各分野に特化した番組が多数放送されている。
[編集] 放送と通信による区分
日本では、通信衛星を使って送信されている映像のうち放送事業者の扱いを受けていない場合は通信扱いである。海外においては放送と通信に差がないことが多い。実際には受信していた人も多かったが、通信サービスのチャンネルを個人宅で受信することは違法であるとされていた。海外の衛星についてはその後合法化された。
[編集] アナログによる衛星放送
[編集] BS
使用衛星:東経110度 (BSAT-1a) (BSAT-1b) (BS-3N)
1989年にNHKがKuバンド(14/12GHz帯)放送衛星「ゆり2号a」を用いて本放送を開始した。当初は第2放送は地上波の再送信のみで衛星受信料は徴収していなかった。BS-3N以前、地球や月の食のために放送休止があった(詳しくは後述を参照)。以後、日本の直接衛星放送はデジタル方式を含めもっぱらKuバンドを用いて行われている。映像をFM、音声をPCMデジタルで送出する。更に高精細度テレビジョン放送であるハイビジョンの試験放送をMUSE方式で開始した。
1991年には日本衛星放送(現・WOWOW)が民間で初の衛星放送を開始、またWOWOWと同じチャンネルのPCM音声のみを使用してラジオ放送を行う衛星デジタル音楽放送 (St.GIGA)(2003年にワイヤービーが合併。同年にWINJに営業譲渡。)も同時開局している。
BSアナログ放送は2011年までに終了する予定である。「までに」なので同年以前の終了がないとは言えない。
[編集] 食による放送休止
春分と秋分をはさんだ各1ヵ月半は太陽の光で発電される放送衛星が地球の陰に隠れる(いわゆる「地球」や「月」による食)現象のため深夜放送を休止していた時期が1997年春まであった(台風や災害報道では放送に支障がない限り休止中の時間帯でも放送を続けていた)。「月」による食の放送休止は日中の時間帯にあった(10分程度;深夜の休止時は0:30から4時間)が、現在の放送衛星は大容量のバッテリーを搭載し、太陽の光で発電される電気を蓄えることができるようになったため、「地球」や「月」による食でも放送できるようになり、放送休止は年数回のメンテナンス(機器保守)時期程度となった。やがてNHKではBSアナログ放送の放送休止は完全になくなった。2000年のBSデジタル放送開始以降、NHKでは現在までBSアナログ放送での放送休止は2006年に放送設備を更新した時だけである(送出を2系統化しているためメンテナンスがあってもアナログ放送は完全無休で放送。またWOWOWは不定期でメンテナンスのための放送休止あり)。これとは別に、春分と秋分をはさんだ各時期に太陽雑音という現象も発生する(主に通信衛星では起きやすいが、衛星の種類により異なる)。
[編集] チャンネル
- BS-5ch WOWOW
- BS-5ch独立音声(2005年3月31日終了)衛星デジタル音楽放送 (St.GIGA) →クラブコスモ (Club COSMO) →ワールド・インディペンデント・ネットワークス・ジャパン (WINJ)
- BS-7ch NHK BS1
- BS-9ch(MUSEアナログハイビジョン)
- ハイビジョン実験放送→ハイビジョン試験放送→ハイビジョン実用化試験放送→デジタル開始と同時に「NHK BShi」になる。アナログでの放送は2007年9月30日をもって終了。
- BS-11ch NHK BS2
デジタルBSにおいても同一の番組が放送されているが、WOWOWは放送法附則第20項に基づく届出をしなかったため、放送法上ではサイマル放送ではない。WOWOWのサイマル放送スロットはスターチャンネルBSに割り当てられた。
[編集] CS
CS通信によるテレビは集合住宅やケーブルテレビ向けに行なわれていた。1989年の放送法改正以後は個人宅向けの直接放送ができるようになった。これをうけて1992年に通信扱いの一部のチャンネルが放送扱いとなる。CS通信・放送(アナログ)の受信機はほぼBS兼用となっていた。主に日本衛星通信(株)のJCSAT衛星を用いる「CSバーン」および、宇宙通信(株)のSUPERBIRD衛星を用いる「スカイポート」の二つのプラットフォームに別れ、両者で限定受信方式が異なっていた(COATEC方式とスカイポート方式)。 1998年、スカイポートはディレクTVへ、CS BAANはPerfecTV!(現SKY PerfecTV!)へ無償で移行された。
ミュージックバードはデジタルによる音声放送(PCM音声放送)であるが放送法によりアナログに分類される。2002年6月1日に電気通信役務利用放送へ移行した。 このため現在では放送法に基づくCSアナログ放送は行われていない。
[編集] 方式
- 映像はアナログ変調 (FM)
- 主搬送波周波数帯域27MHz(スカイポート36MHz)、
- 音声はデジタル変調(4相DPSK 2.048Mbps)
- Bモード: 48kHz16bitリニアPCM:32kHz14/10bit準瞬時圧伸、独立データ放送 (240kbps)
- Aモード: 32kHz14/10bit準瞬時圧伸×2ch 独立データ放送 (480kbps)
- 映像はベースバンド信号を周波数変調、地上アナログ放送の振幅変調 (VSB-AM) より高画質、高解像度
- Bモードは、CDやBSデジタル放送より高音質で、DATと同等である。
- 基本的に地上アナログ放送と同じNTSC方式であり文字放送対応、字幕放送対応などもおこなっていた(NHK衛星第2テレビのみ実施)。
- CS通信・放送ではクローズド・キャプションによる英語字幕放送も行なわれていた。
[編集] スクランブル
- M方式(松下電器産業が開発。ホテル向けアダルト番組や企業内通信サービスで使用していた。)
- NTT方式(JC-SATのNTT通信サービスで使用。)
- コアテック方式(WOWOWやCS BAANで使用されていた方式。ミュージックバードでも利用しているがデコーダーは流用できない。)
- スカイポート方式(ソニーが開発。スカイポート通信・放送で使用されていた方式。コアテック方式よりも高画質であると言われる)
- ソニー方式(ソニーが開発。当時、郵政省やミサワホームが主に使用していた。スカイポート方式と酷似している方式。)
- B-MAC方式(企業内通信サービスで使用。)
[編集] デジタルによる衛星放送
[編集] BSデジタル
使用衛星:東経110度 (BSAT-2a) (BSAT-2c)
[編集] 概要
2000年12月1日11:00、NHK及び民放キー局の関連会社などがBSAT-1b(後にBSAT-2a)を用いて放送開始した。ISDB-S方式による衛星デジタル放送。テレビジョン放送、超短波放送(いわゆるBSデジタルラジオ、BSデジタル音声放送)およびデータ放送を同一の放送方式で送出するため、デジタル受信機が対応していれば1つの受信機で各種放送が受信可能である。
[編集] 放送局
2006年12月現在の放送状況は以下の通り。
- テレビジョン放送 - 10チャンネル(民放各局のマルチチャンネル分とサイマル放送分は除く。)
- 単営データ放送局 - 2チャンネル
- 超短波放送 - 1局(実質的に休止中)
一部有料チャンネルを除き無料で視聴できる(NHK各局はアナログ同様受信料を未納状態でも視聴自体はひとまず可能)。 アナログによるBS放送はNHK(2チャンネル)とWOWOW、そしてアナログハイビジョンだけだったが、開始時までに、新たに民放系のBS放送を加えてテレビジョン放送10チャンネル、超短波放送(単営)11チャンネル、データ放送(単営)7チャンネルの合計18チャンネルに膨れ上がった。しかし開始後数年で企業体力の虚弱な局(主に単営の超短波放送・データ放送局)は次々と撤退していった。メジャー局の運営する超短波放送局についても後述する経緯(“BSの今後の展望”参照)により、現在は全て閉局している。
各物理チャンネル[1]への割り当ては以下の通り。
- 2007年2月現在(BSアナログハイビジョン放送終了(9月30日)まで)
- BS-1ch - BS朝日/BS-i
- BS-3ch - デジタルWOWOW/BSジャパン/WINJ/BPA
- BS-5ch - アナログWOWOW
- BS-7ch - NHK BSアナログ1
- BS-9ch - NHK BSアナログハイビジョン(MUSE方式)
- BS-11ch - NHK BSアナログ2
- BS-13ch - BS日テレ/BSフジ/WX24
- BS-15ch - NHK BSデジタルハイビジョン/NHK BSデジタル1/NHK BSデジタル2/スターチャンネルBS/日本BS
- 2007年12月1日以降
- BS-1ch - BS朝日/BS-i
- BS-3ch - デジタルWOWOW/BSジャパン
- BS-5ch - アナログWOWOW
- BS-7ch - NHK BSアナログ1
- BS-9ch - BS11デジタル/スターチャンネルHD/TwellV
- BS-11ch - NHK BSアナログ2
- BS-13ch - BS日テレ/BSフジ
- BS-15ch - NHK BSデジタルハイビジョン/NHK BSデジタル1/NHK BSデジタル2/WINJ/WX24/BPA
BSデジタル放送における放送局等の詳細はBS委託放送事業者一覧も参照。
[編集] 視聴可能世帯
- 約2000万世帯(2006年12月現在の推定値)。放送開始当初は「放送開始から1000日(2003年8月頃)で1000万世帯への普及を目指す」との目標を掲げていたが、実際に視聴可能世帯が1000万世帯に達したのは、その目標から2年遅れ(BSデジタル放送放送開始から数えて1735日・約4年8ヶ月)、2005年8月であった。しかし最近は、地上デジタル放送の全国展開も手伝って、普及スピードが一気に進み、1000万世帯達成から2000万世帯達成までには約1年3ヶ月の期間で済んでいる。
[編集] BSの今後の展望
- 2005年8月に行われた放送法施行規則と放送普及基本計画の見直し(参照リンク)により、BSデジタル放送はハイビジョンテレビ放送に特化した運営が成されることになり、データ・超短波(ラジオ)放送局の設置目標数は大幅に削減された。この事により、これらの放送局は続々と閉局・終了している。
- 2006年7月の総務省内の研究会にて、2011年のBSアナログ放送終了にあわせて、デジタル放送のチャンネル数を50チャンネル以上とする報告書をまとめた。新規事業者以外にCS等で放送している事業者の進出や現在の事業者が複数チャンネルの運営などの可能性を示している。
[編集] 特徴
- 高画質・高音質の迫力あるハイビジョン映像が楽しめる(ただし、画像はMPEG2圧縮、音声はMP3並み)
- テレビジョン放送では、標準画質に落とすと1チャンネルにつき3チャンネル分の分割放送ができ、同じ時間帯で異なる内容の放送が配信できる(マルチチャンネル放送)
- MP3並みに圧縮されたデジタル音声のBSデジタルラジオ放送
- 番組表をモニター(画面)で手軽に確認できるEPG(電子番組表)
- 番組に連動した情報やニュース、生活情報などがリアルタイムで引き出せるデータ放送
- 番組に連動してクイズやショッピングに参加できる双方向放送(※双方向放送に参加する場合、チューナーを電話回線に接続する必要がある。NHKの双方向番組ではインターネット接続のLAN端子搭載の機種でも対応している)
- 音声の放送形式(フォーマット)にMPEG-2 AACを使用しているため、5.1chサラウンド音声を楽しむことができる。
- 2004年4月5日から、B-CASカードによる限定受信およびコピー制御(コピーワンス)が開始された。B-CASカードをチューナー等にセットしないと視聴できず、またデジタル録画機器での放送番組のコピーに様々な制限が掛かるようになった。詳細に関してはB-CASの項目を参照。
[編集] 問題点
鳴り物入りで始まったBSデジタル放送だが、下記の理由から当初の予測よりも視聴者の増加が伸び悩んでいる。
しかし2006年には民放BS数局で上期(4~9月)広告収入が黒字化するなどの明るい材料もあり、少しずつではあるが魅力あるコンテンツを生み出せる状況が生まれつつある。
※放送形態面の問題は、地上波や他のデジタルテレビ放送と共通なので、デジタルテレビを参照の事。
[編集] 対応チューナーの普及の遅れ
- ハイビジョン対応テレビが高価な大型モデルに集中し、小型モデルのラインナップが未だ貧弱(2006年に15インチ型の対応モデルが松下電器産業、シャープ等から発売されたが、ワイド画面では無い上、実売価格は6万円程と高価で廉価なブラウン管タイプは無い。2007年3月にはシャープからワイド画面でハイビジョン対応の16インチ型液晶モデルが発売されたが、それでも実売価格で9万円前後する)。
- これについては、2011年7月24日の地上アナログ放送の停止に伴い、アナログしか対応していない受像機には2011年以降使用できなくなる旨を表示したシールを商品に表示することになったため、技術向上と低価格化によりデジタル受信機の販売が加速されると考えられる(また、テレビ本体が対応チューナーを搭載していなくても、近年低価格化が進んでいるデジタルチューナー搭載型DVDレコーダーなどと接続すれば視聴可能ではある)。
- 2006年より登場したいわゆる“激安薄型テレビ”は2007年1月現在、まだ地上アナログ対応のみの機種もあり注意が必要であるうえ、デジタル対応を謳う機種でも、地上デジタルのみを搭載し、BS・110度CSデジタルチューナーを搭載しないものが多い。
- 需要がなくなってきて供給が減ってるのが主な理由なのでさしたる問題ではないが、単体チューナーのラインナップ自体が少ないうえに高価(単体のチューナーを現在生産しているのはソニー、松下電器産業〈2機種〉、シャープ、マスプロ電工、DXアンテナのみ)。
[編集] 脆弱な広告収入
- 視聴率を計測する会社(ビデオリサーチ)は現在BSデジタルの数値を(少なくとも定期的には)計測していない為、スポンサーが付きにくい。(当然のことながらCMも全国一律でしか流せないことから、地方の有力スポンサーはBS番組のスポンサーになりにくい)資金投資がしにくい事は質の高い番組を作る事が困難という事になる。
[編集] 番組制作の著作権・番組出演者の肖像権の問題
- 特に地上波キー局系5局は、BSデジタル放送を利用して系列局の無い地域(NNNの佐賀県と沖縄県・JNNの秋田県と福井県と徳島県と佐賀県・FNNの青森県と山梨県と山口県と徳島県・ANNの7県・TXNの34府県)もカバーすることが期待されていたが、これらの壁で、地上波で放送されている番組がBSデジタル放送を利用して自由に放送できないのが現状である(当初は地上波の同時・時差放送とごく一部の独自制作番組の編成を主体に行う計画だった)。しかし、視聴者の伸び悩みにマスメディア集中排除原則の規制緩和の方針を打ち出しており、BSデジタル放送を兼営することが出来るようになり、問題が解決される可能性が高い。この為、BSデジタルで放送される地上波の番組も増加傾向である。
- NHKは地上波・衛星波共に同一法人であるため問題視されることが無く(ただし、海外向けの国際放送〈NHKワールドTV、NHKワールド・プレミアム〉では同一法人であっても、一部のスポーツニュースの映像素材やオリンピック期間中などでは他国の事情や放送権・肖像権の都合による制限がある)、地上波・衛星波が異なる法人である民放にこの問題が浮上している(CS放送においては日本テレビ系の「日テレG+」と「日テレNEWS24」、TBS系の「TBSニュースバード」と「TBSチャンネル」、フジテレビ系の「フジテレビ721&739」、テレビ朝日系の「テレ朝チャンネル」は地上波と同一法人で運営を行っているためある程度は問題視されることがないが、それでも著作権・番組出演者の肖像権による制限がある)。またこのような問題により、地上波より先に放送される先行放送の番組が民放では少ない。
[編集] 各放送局ごとの放送形態の違い
- NHKは地上波で放送されている番組をBS2・BShiを中心に放送することが多く、同時放送(NHKニュース(一部)やNHKのど自慢、NHK紅白歌合戦など)やBSでの先行放送(NHK朝の連続テレビ小説、NHK大河ドラマなど)も少なくない。
- これに対して民放では地上波より先に放送される先行放送の番組ではテレビ東京・BSジャパンの「水曜ミステリー9(BSミステリー)」、関西テレビ放送制作でBSフジで全国放送されている「ほんじゃに!」(2006年10月以降は先行放送から遅れ放送に変更)など少数で、前述の著作権・肖像権等の問題が原因で遅れ放送どころか地上波制作番組をBSで放送できない場合(主にアイドル出演番組や音楽番組、ドラマ)が多い。
- また、民放のニュース番組の同時放送もBSジャパンはほぼすべてで放送されるものの、他局では「Oha!4 NEWS LIVE」、「NNNニュースダッシュ」(日本テレビ、BS日テレ、日テレNEWS24 月~金、この2番組もニュースによっては権利上の問題から静止画などに差し替えられることがある〈かぶせ放送〉。これはCS放送・日テレNEWS24の完全サイマル放送を前提に行われているため)に限られ、報道特別番組を行わない限り放送されていない。
- BSジャパンは他の事業者とは異なりテレビ東京地上波番組は編成の半分以上を放送しているが、ニュース番組、スポーツ中継(野球、ゴルフ、競馬、マラソン、ボクシングなど)、「にっぽんの歌〈夏祭り・年忘れ〉」、大晦日の「東急ジルベスターコンサート」が同時放送される以外は数日〈早いものでは翌日〉から1年以上遅れの放送となっているのが現状である。
- このため、各放送局の収益は芳しくない所が多く、既に撤退した放送局もある。このため、民放キー局各社は、赤字体質が続くBSデジタル放送の兼営ができるよう、総務省に対してマスメディア集中排除原則の弾力的運用を希望しており、総務省側でも民放地上波キー局がBSデジタル放送の兼営ができるよう法改正を検討している(BSデジタルの「マス排」撤廃をどう考えるか)。ただしこれは、同時に地方民放局の存在意義を脅かす問題(在京局による情報発信の一極集中化を加速させる事態など)にも発展する危険性もあり、これらの放送局との共存共栄を果たせるような配慮をした上での方針変更が必要とされる。
[編集] ケーブルテレビ視聴時について
ケーブルテレビの場合、BSデジタルのパススルー伝送は行われていないケースが多い。このため、有料のセットトップボックス(以下STB)を設置しなければ、直接受信の場合は無料で見られる放送も視聴できなくなっている。衛星放送で使われているSHF波及びアンテナ部からチューナ間で伝送で使われる周波数(分類上はUHF帯。後述の使用周波数とチャンネルのBS-IF/CS-IFについてを参照)が、ケーブルテレビの伝送用に使用している周波数とは帯域幅が異なるためにそのままでは伝送できない事から、伝送可能な周波数帯に変換しているためである。理論上は元の周波数帯に戻すコンバーター(変換器)を用いれば市販の当該チューナーでもそのまま視聴できるが、そのようなコンバーターは業務用を除き市販されていないので、実質的には非加入者には不可能である。
地上アナログ放送と同じ変調方式に変換して再送信してるCATV局は徐々に減っているがいくつか存在する。この場合、再送信されているチャンネルが受信できる地上アナログチューナーを内蔵した機器(以下、地上アナログ機器。アナログSTB(ターミナル)や市販テレビや市販ビデオレコーダなど。)があれば視聴できる。(VHF1ch~12ch、UHF13ch~63chで再送信されていればほとんど全ての地上アナログ機器で視聴できる。CATV帯域で再送信されている場合は機器の仕様書に「C13ch~C62ch」などの記載がされていれば、視聴できる。)ただし、再送信にスクランブルが施されてる場合、視聴はCATV局から貸与されるアナログSTBに限られる。
実際にはSTB無しでは視聴できないトランスモジュレーション方式で伝送しているCATV局が多い。
[編集] CSデジタル
通信衛星を用いたデジタル伝送方式の放送である。現在主力となっている放送形式であり、衛星の位置・種類ごとにいくつかのプラットフォームに分かれている。
基本的に規格上はBSデジタルなどに近い仕組みなので、信号切り替えによるステレオ二ヶ国語放送など、アナログ放送では不可能なものも提供可能になっている。2005年現在は、ごく一部のチャンネルを除きアナログ放送並みのサービスしか提供していない放送チャンネルがほとんど。
[編集] SKY PerfecTV!
使用衛星:東経124度 (JCSAT-3)・東経128度 (JCSAT-4A)
1996年、JCSAT-3を使用してパーフェクTV!が放送を開始。JCSAT-4A(後述の配信事業者向け通信も参照。)はJスカイBが使用する予定だったが、JスカイBは開局前にパーフェクTV!に合流し、SKY PerfecTV!としてサービスを提供している。伝送方式は欧州方式 (DVB-S) 準規を用いる。
[編集] ディレクTV
使用衛星:東経144度 (Superbird-C)
1997年、Superbird-Cを使用してディレクTVが放送を開始したが2000年に放送終了し、この衛星は現在、デジタル音楽放送SOUND PLANET (USEN) が使用(後述の配信事業者向け通信も参照。)している。
[編集] モバHO!
使用衛星:東経144度 (MBSat)
移動体向け衛星放送「モバHO!」が2004年10月に放送を開始した。
[編集] 東経110度CS放送
使用衛星:東経110度 (N-SAT-110)
東経110度CS放送はBSと同じ方角に衛星が打ち上げられており、BSデジタル放送と同一アンテナで受信できるのが特長(およそ2002年以前発売の家庭用BSアンテナは、110度CS未対応。マンション等、業務用BSアンテナは、新築であっても110度CS未対応が多い。2006.11現在)。2002年に放送を開始、伝送方式は日本方式 (ISDB-S) を採用している。当初は、SKY PerfecTV!2・プラット・ワン・epという3つのプラットフォームがあったが、2004年、集約されてSKY PerfecTV!110となった。それとは別に、2004年11月に新しいプラットフォーム・WOWOWデジタルプラスが誕生した(2006年12月放送終了)。2007年2月1日、SKY PerfecTV!110がe2 by スカパー!に名称を変更した。一部のチャンネルでハイビジョン放送が行われている。
[編集] SPACE DiVA
使用衛星:東経154度 (JCSAT-2A)
SPACE DiVAは2005年、MUSIC BIRDとCANシステムがJCSAT-2Aを利用して始めた多チャンネル衛星ラジオ。オーディオ圧縮MPEG1 Audio Layer2 (MP2) でサンプリング周波数48kHz、復調方式QPSKで256kbpsから64kbpsまでチャンネルによって情報量(音質)が異なる。
[編集] ケーブルテレビデジタル配信事業通信
- 使用衛星:東経144度 (Superbird-C) ※ディレクTVも参照。
- CS放送用番組のケーブルテレビデジタル配信事業者であるi-HITSがケーブルテレビ局および他のケーブルテレビデジタル配信事業者への送信に使用している。
- 使用衛星:東経128度 (JCSAT-4a) ※SKY PerfecTV!も参照。
- CS放送用番組のケーブルテレビデジタル配信事業者であるJC-HITSがケーブルテレビ局および他のケーブルテレビデジタル配信事業者への送信に使用している。
[編集] 受信設備
- 「2150MHz」と伝送帯域が従来のアナログ放送より大幅に広いため、特に(地上デジタル放送との)共聴受信設備ではアンテナ・ケーブル・分配器・ブースター・コネクター・壁面直列ユニット(アンテナコンセント)などが従来と大幅に異なる伝送方式「2150MHz」に全面対応していることが必須条件である(従来のBSアナログ用パラボラアンテナ及びフラットアンテナは使用不可)。
- BSアナログチューナーのみ搭載のビデオデッキやDVDレコーダーと接続する場合、アンテナ線はそれらの機器を経由せず(2150MHz対応の分配器を用いて)直接テレビに接続する(110度CSはこのつなぎ方だと受信自体ができなくなるため)。これに対し、地上・BS・110度CSの各デジタルチューナーを内蔵したDVDやビデオレコーダーは2150MHz対応の分配器を内蔵しているので、外部分配器を別に用意する必要はない。
- 2150MHz対応のほか2600MHzや2655MHz対応の物も存在する。
[編集] 使用周波数とチャンネル
※デジタル・アナログ共通。周波数の数値は各物理チャンネル[1]の中心周波数。
放送種別 | 衛星位置 | 物理チャンネル | 帯域幅 (MHz) | 用途 |
---|---|---|---|---|
BS | 東経110度 | BS-1~BS-15 (8ch) | 38.36 | NHK、民放 |
CS110 | 東経110度 | ND-2~ND-24 (12ch) | 40.00 | e2 |
CS | 東経124/8 | K-1~K-27 (14ch) | 40/30 | スカパー! |
CS | 東経124/8 | K-2~K-28 (14ch) | 40/30 | スカパー! |
放送種別 | 衛星位置 | 偏波 | BS/CS周波数 (GHz) | 局発 (GHz) | BS-IF/CS-IF (MHz) |
---|---|---|---|---|---|
BS | 東経110度 | 右旋 | 11.72748~11.99600 | 10.678 | 1049.48-1318.00 |
CS110 | 東経110度 | 右旋 | 12.291~12.731 | 10.678 | 1613.00-2053.00 |
CS | 東経124/8 | 垂直 | 12.268~12.718 | 10.678 | 1590.00-2040.00 |
11.200 | 1068.00-1518.00 | ||||
CS | 東経124/8 | 水平 | 12.288~12.733 | 10.678 | 1610.00-2055.00 |
11.200 | 1088.00-1533.00 |
- BS-IF/CS-IFについて
- 衛星放送から送信されている周波数を受信後にそのまま同軸ケーブルに流すと非常に減衰が大きいため、受信アンテナ部で周波数を変換する。この変換部をBSコンバーターまたはLNB (Low Noise Block) などと呼ぶ。通常は衛星放送用のパラボラアンテナの先端などに取り付けられていて、そのためチューナーに接続した同軸線から電源の供給を受けている。また、LNBは局発(局部発信周波数:Local Frequency)と呼ばれる変換用周波数(通常は固定されていて変更不可能)を持っていて、BS放送を例にとると、衛星アンテナで受信したBS周波数は局発周波数 (10.678 GHz) を減算したBS-IF周波数に変換し同軸ケーブルに流す。従ってチューナーの受信周波数はBS-IF周波数になる(BS周波数-局発周波数=BS-IF周波数)。
[編集] 歴史
(先史)
(BS衛星放送関係年表)
- 1978年(昭和53年)4月8日 実験用放送衛星 (BSE) 「ゆり」打上げ
- 1984年(昭和59年)1月23日 放送衛星2号a「ゆり2号a」打上げ
- 1984年(昭和59年)5月12日 NHKがゆり2号aによる衛星試験放送開始
- 1987年(昭和62年)7月4日 NHKがゆり2号bによる24時間放送開始 (BS1)
- 1989年(平成元年)6月1日 NHKがBS1、BS2の本放送を開始
- 1989年(平成元年)6月3日 NHKがハイビジョン実験放送(1時間/日)開始
- 1991年(平成3年)3月30日 世界初の衛星デジタルラジオSt.GIGAによる衛星放送開始
- 1991年(平成3年)4月1日 初の民間衛星放送局WOWOWによる衛星放送開始
- 1991年(平成3年)11月25日 ハイビジョン推進協会がハイビジョン試験放送(8時間/日)開始
- 1994年(平成6年)11月25日 NHKと民放6社がハイビジョン実用化試験放送(8時間/日)開始
- 1995年(平成7年)4月23日 St.GIGAがスーパーファミコン・サテラビュー向けデータ放送(14時間/日)開始
- 1997年(平成9年)4月17日 BSAT-1a (BS-4a) 打ち上げ(この打ち上げた放送衛星より、大容量のバッテリーを搭載している)。翌年、BSAT-1b (BS-4b) 打ち上げ。
- 2000年(平成12年)6月30日 St.GIGA スーパーファミコン向けデータ放送終了
- 2000年(平成12年)12月1日 BSデジタル放送開始
- 2003年(平成15年)1月17日 2.6GHz帯衛星デジタル音声放送が放送方式として制度化される(モバイル向け放送)
- 2004年(平成16年)11月30日 BS955(メディアサーブ)・BS BIRD(ミュージックバード)が放送を終了。BSデジタル初の放送終了局となる
- 2005年(平成17年)3月31日 ワールド・インディペンデント・ネットワークス・ジャパンがBSアナログ放送を終了。BSアナログ初の放送終了局となる
(CS衛星放送関係年表)
- 1989年(平成元年)10月1日 放送法改正施行 通信衛星による直接放送を許可
- 1989年(平成元年) JCSAT 1,2 打ち上げ
- 1992年(平成4年) SUPERBIRD-A、B 打ち上げ
- 1992年(平成4年)2月4日 CSアナログ放送事業者6社認定。4月から順次サービス開始(CSバーン、スカイポート)
- 1992年(平成4年)6月 CS-PCM音声放送開始
- 1996年(平成8年)10月1日 CSデジタル放送 パーフェクTV! 放送開始
- 1997年(平成9年)12月1日 CSデジタル放送 ディレクTV 放送開始
- 1998年(平成10年)3月31日 CSバーンが放送をパーフェクTV!に移行し放送終了
- 1998年(平成10年)5月1日 パーフェクTVとJskyBが合併 SKY PerfecTV! になる
- 1998年(平成10年)9月30日 スカイポートが放送をSKY PerfecTV!に移行し放送終了
- 2000年(平成12年)10月2日 ディレクTVが放送終了
- 2000年(平成12年)10月7日 N-SAT-110打ち上げ成功
- 2001年(平成13年)5月 デジタル音楽放送「SOUND PLANET」開始
- 2002年(平成14年)3月1日 110度CSデジタル放送 プラット・ワン 開始
- 2002年(平成14年)7月1日 110度CSデジタル放送 SKY PerfecTV!2 開始
- 2002年(平成14年)7月1日 110度CSデジタル放送 蓄積型双方向サービス (ep) 開始
- 2004年(平成16年)3月1日 SKY PerfecTV!2とプラット・ワンが合併 SKY PerfecTV!110になる
- 2004年(平成16年)3月13日 モバイル放送用衛星MBSat打上成功
- 2004年(平成16年)3月31日 蓄積型双方向サービス (ep) 終了
- 2004年(平成16年)10月20日 モバHO!サービスイン
- 2004年(平成16年)11月12日 110度CSデジタル放送 WOWOWデジタルプラス 開始
(参考:予定)
- 2007年(平成19年)9月30日 BSアナログハイビジョン放送終了予定。
- 2007年(平成19年)11月30日 BSアナログハイビジョン放送停波予定。
- 2007年(平成19年)12月1日 BSアナログハイビジョン放送終了に伴って空いた帯域を使った、BSデジタル放送のハイビジョンテレビ放送を、日本BS放送、スター・チャンネル、ワールド・ハイビジョン・チャンネルの3社が開始予定。
- 2011年(平成23年)BSアナログ放送終了予定