スカパ・フロー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スカパ・フロー(Scapa Flow)はスコットランドのオークニー諸島に存在する入り江。 メインランド島、ホイ島、バレイ島、. サウス・ロンルドシー島などに囲まれ、細い水路で外海とつながっている。外部からの侵入を防ぐことのできる天然の良港として第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけイギリス海軍の根拠地として利用された。
両大戦では停泊するイギリス艦船を狙いドイツのUボートが侵入を図っている。第一次世界大戦ではU-18とU-116が侵入に失敗し撃沈された。第二次世界大戦の開戦後間もない1939年10月14日にギュンター・プリーン(Günther Prien)の指揮するU-47が浮上侵入、戦艦ロイヤル・オークを撃沈した。因縁のスカパ・フローに敵戦艦を沈め、ドイツ国民は歓喜した。ロイヤル・オークの乗組員1,400名あまりの内、833人が死亡している。沈船は現在記念碑として保存されている。事件の後、チャーチルの命により建設された防波堤は、"Churchill barriers"と名付けられ、現在メインランド島、バレイ島とサウス・ロンドシー島を結ぶ陸橋として利用されている。
この攻撃の3日後、4機のJu 88爆撃機がスカパ・フローを爆撃した。この攻撃によって戦艦アイアン・デュークが大破、爆撃機1機が撃墜されている。
カークウォールで蒸留されるスコッチ・ウイスキーのScapaはスカパ・フローにちなんで名付けられた。
[編集] ドイツ帝国海軍とスカパ・フロー
第一次世界大戦でドイツが休戦を受諾すると、ドイツ艦隊の74隻の艦船がスカパ・フローに回航され、ベルサイユ条約締結を待った。1918年の11月に到着したこれらの艦船は観光の的となった。1919年6月21日、ルートヴィッヒ・フォン・ロイター(Ludwig von Reuter)提督は英国への艦隊引渡しを拒むためにイギリス艦隊の大部分が演習に出た隙をついて自身の艦隊に自沈を命じた。51隻が自沈し、阻止しようとしたイギリス軍兵士との間で9人の死者がでた。これは第一次世界大戦における最後の戦死者とされている。
自沈したのは以下の艦船である。
- 戦艦:バイエルン (Bayern) 、ケーニヒ (König) 、グローサー・クルフュルスト (Großer Kurfürst) 、マルクグラーフ (Markgraf) 、クローンプリンツ・ヴルヘルム (Kronprinz Wilhelm) 、カイザー (Kaiser)、フリードリッヒ・デア・グローセ (Friedrich der Große) 、カイゼリン (Kaiserin) 、プリンツレゲント・ルイトポルト (Prinzregent Luitpold) 、ケーニヒ・アルベルト (König Albert) (バーデン (Baden) は曳船によって浅瀬に着底させられた。)
- 巡洋戦艦:デアフリンガー (Derfflinger) 、ヒンデンブルク (Hindenburg)、ザイドリッツ (Seydlitz) 、モルトケ (Moltcke) 、フォン・デア・タン (von der Taden)
- 巡洋艦:ケルン (Köln) 、ドレスデン (Dresden) 、カールスルーエ (Karlsruhe) 、ブルマー (Brummer)、ブレムゼ (Bremse) (エムデン (Emden) 、ニュルンベルク (Nürnberg) 、(フランクフルト (Frankfurt) は自沈に失敗。)
- 駆逐艦多数
1920年代に入り、アーネスト・コックスらの手により43隻の船がサルベージされた。 比較的小さな艦船については浮きと錨鎖を使い浮上させた。28,000トンにもなるヒンデンブルクについては、爆破により開いた穴を全て塞ぎ船殻に圧縮空気を導入して浮力をつけさせた。8隻の船は現在もスカパ・フローに沈んでおり、ダイビングスポットとして親しまれている。
その後更に多くの沈船、またはその一部が引き上げられ人工衛星などに利用されている。1945年以前に鋳造された金属からは放射線の放出が少ないため、高感度センサーの部品として利用されている。
[編集] 文献
- Dan van der Vat(著)、The Grand Scuttle: The Sinking of the German Fleet at Scapa Flow 1919, Naval Institute Press, 1986, ISBN 0870212257
- Dan van der Vat(著)、佐藤佐三郎(訳)、第一次世界大戦敗戦後のドイツ大洋艦隊の大自沈の Non-fictions、『ドイツ艦隊大自沈』、1984年、原書房、ISBN 4-562-01438-5
- アレクサンドル・コルガノフ(著)、内藤一郎(訳)、スカパ・フロー侵入の Non-fictions、『Uボート、出撃せよ』、早川書房、1993年、ISBN 4-15-050098-3
- ギュンター・プリーン(著)、スカパ・フロー侵入に成功した U47 の艦長の回想録、『スカパ・フローへの道』、中央公論新社、2001年、ISBN 4-12-003174-8
[編集] 関連項目
- Uボート
- ドイツ帝国海軍
- ギュンター・プリーン
カテゴリ: イギリス海軍 | スコットランドの地理