ソナタ形式
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楽式(楽曲の形式) |
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二部形式 - 三部形式 |
ソナタ形式(―けいしき)は楽曲の形式のひとつ。古典派の時代に大きく発展した楽曲形式である。
古典派ソナタや、古典派ソナタに類似している交響曲、独奏協奏曲、弦楽四重奏曲などの、第1楽章や終楽章に多く見られるところからソナタ形式と呼ばれている。ソナタ形式=ソナタの形式ではない。
ソナタ形式は、基本的に次のような形式をしている。
目次 |
[編集] 提示部
提示部(ていじぶ)では、二つの主題が提示される。一つ目の主題を第一主題といい、これは主調で書かれる。二つ目の主題を第二主題といい、第一主題が長調の場合は属調、短調の時には平行調で書かれているのが一般的である。この調性の変化により、緊張が高められていく。そして小コーダへと続いて次の提示部への架け橋をするものもある。小コーダとは、おおむねコーダと同じだが、提示部であるので、規模は小さい。省略するものもある。
独奏協奏曲では、特に初期のもので、提示部の繰り返しが1回目と2回目で異なり(当然反復記号は使われない)、1回目はオーケストラだけで演奏され第二主題も主調で奏されるようになっているものがある(2回目は独奏楽器が入り、通常の提示部となる)。 →詳細は下の協奏ソナタ形式を参照。
近代では第二主題に加えて、第三主題が加わる場合もある。そして、調も平行調の属調や半音下の調など、自由な調によって表現されている。
[編集] 展開部
展開部(てんかいぶ)では、提示部で提示された二つの主題を中心に曲が構成される。高い緊張のもとに二つの主題が様々に変形され、結び合わされて曲が進行する。
[編集] 再現部
再現部(さいげんぶ)では、二つの主題が再現される。少し変化していることもある。通常、第一主題、第二主題ともに主調で再現される。(第二主題は主調が短調の場合には同主調となることも多い。なお、第一主題は、主調でなくてもよい。)よって、再現部では、緊張はおおむね低い。そしてコーダに入るものもある。
この、第二主題が、提示部では主調以外で演奏されて緊張が高かったのが、再現部では主調または同主調で演奏されて緊張が低くなるが、調性は解決されるという対比こそが、ソナタ形式の一番大切な部分であるといえる。
[編集] 序奏と結尾部
ソナタ形式の楽曲では、曲の前後に序奏(じょそう)、結尾部(けつびぶ、Coda(コーダ))を加えているものがある。発達したコーダの中には、展開部と同様の発展を見せるものがあり、第二展開部との異名を持つものもある。
序奏 |
提示部 | 展開部 | 再現部 |
コーダ |
||
---|---|---|---|---|---|---|
第一主題 | 第二主題 | 第一主題 | 第二主題 | |||
主調 | 属調、平行調等 | 主調 | 主調、同主調 |
[編集] 習慣的な反復記号
提示部には習慣的な反復記号が付けられているものが多い。また短いソナタ形式の楽曲では、特に古いものに、展開部・再現部をまとめて習慣的な反復記号を付けているものもある。これらは二部形式の名残である。
(序奏) | 提示部 | 展開部 | 再現部 | (コーダ) | |||
(序奏) | 提示部 | 展開部 | 再現部 | (コーダ) |
これらの反復は曲によって、習慣的に省略されることが多いもの、あまり省略されないものがある。たとえば、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの交響曲第5番では、第1楽章の反復はあまり省略されないが、第4楽章の反復は省略されることが多い。
[編集] 協奏ソナタ形式
古典派の時代になると、協奏曲に合わせたソナタ形式が開発された。これを協奏ソナタ形式といい、特に第1楽章において用いられる。
まず、上記のように管弦楽により2つの主題が同じ調で提示された後、アインガングと呼ばれる導入により独奏楽器が演奏し始める。
2つの主題がソナタ楽章本来の調性で改めて提示された後、展開部、再現部を経て、カデンツァと呼ばれる独奏楽器のみの演奏部分に入る。この部分は本来、演奏家が即興演奏するものであるが、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番では作り付けのカデンツァが書き込まれ、それ以降の協奏曲の規範になった。
カデンツァは通常、属調で半休止してから(トリルを伴うことが多い)、管弦楽に引き継がれて主調で曲は終結する。
なお、モーツァルトのピアノ協奏曲第9番においては、冒頭の主題提示部で短くはあるが独奏ピアノが登場する。その後、ベートーヴェンがピアノ協奏曲第4番、第5番において冒頭で独奏ピアノを活躍させた。
その後、ロマン派になると協奏曲の形式は自由になり、協奏ソナタ形式は次第に使われなくなった。だが、ブラームスは2曲のピアノ協奏曲(第1番、第2番)、ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲において自由な協奏ソナタ形式を用いた。
[編集] ソナチネ形式
展開部、または再現部の第一主題のいずれかが省略されることがあり、ソナチネ形式と呼ぶことがある(あまり一般的な呼称ではない)。そのうち特に展開部を省略したソナタ形式は、オペラなどの序曲に多く見られるので、序曲形式(じょきょくけいしき)と呼ぶことがある。(「序曲形式」が、他の形式を指すこともある。)
提示部 | 展開部 | 再現部 | ||
---|---|---|---|---|
第一主題 | 第二主題 | 第二主題 | ||
主調 | 属調、平行調等 | 主調、同主調 |
提示部 | 再現部 | |||
---|---|---|---|---|
第一主題 | 第二主題 | 第一主題 | 第二主題 | |
主調 | 属調、平行調等 | 主調 | 主調、同主調 |
(序曲形式)
[編集] ソナタ形式の注目すべき楽曲
[編集] 偽第二主題
ベートーヴェンの作品2の3などの初期の楽曲では第二主題と見せかけて調性や展開の上で第二主題となっていない物が多い。反対にエロイカ交響曲の第一楽章では経過部と見せかけて第二主題と出す、「偽経過部」も見られる。また最後のコーダの前に第二展開部を要する「偽終結部」楽曲もある。これらはすべて決まりきった形式に対する「はぐらかし作法」といえる。いつもの退屈さを緩和する為に用いた物とされ、後のケージなどの「ハプニング」作曲法などを思い起こされる。
[編集] 再現部第一主題を欠くソナタ形式
この場合は展開部で第一主題を主に徹底的に再現部の分まで展開しているか、ブラームスの第一交響曲の終楽章のように展開部を省いた形で「展開同時に再現部」とする形が多い。
[編集] 序曲形式
- シューベルト:ロザムンデ序曲
- チャイコフスキー:組曲「くるみ割り人形」 第1楽章「小序曲」