ドラッグオンドラグーン
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『ドラッグオンドラグーン』は、2003年9月11日にスクウェア・エニックスから発売されたプレイステーション2用アクションRPG。あまりに救いのない、絶望的なエンディングの数々については賛否両論を巻き起こし、いろいろな意味で注目された作品である。エンディングは5つある。
2005年6月16日に続編の『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』がスクウェア・エニックスから発売された。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
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[編集] プロローグ
遥か遠い昔。まだ大空にドラゴンが飛んでいた時代に、世界を二分する大きな戦いが起こった。世界のバランスを保つ最終封印である女神を有する『連合軍』。そして女神への信仰を否定し、謎の宗教組織『天使の教会』を妄信する新興勢力『帝国軍』との間で激しい戦闘が幾度も繰り広げられていた。そんな終わりの見えない戦いの中、一人の男が赤き竜に出会う。そしてこの出会いによって運命の歯車は少しずつ動き始める。
[編集] 契約
人間と人類以外の生物(モンスターや精霊等)が『契約』を結ぶことによって、人間はモンスターの力を使うことができる。だが、その力を得る人間はそれ相応の代償(カイムの場合なら声)を払わなければいけない。契約者とモンスターは一身同体であり、どちらかが命を失えばもう一方もその命が尽きる。またお互いはどれだけ離れていても声(思念による通信)を飛ばして会話することができる。 契約対象は様々だが、カイムやヴェルドレ、イウヴァルトのように人間とドラゴンが契約するのは極めて稀のようである。 契約が成立した場合、契約者の身体の一部(契約の代償として失ったものに関係する身体の一部 例:カイムならば舌 イウヴァルトならば喉 ヴェルドレならば頭頂部)に紋章が出現する。
[編集] キャラクター
- カイム(声優:池畑慎之介)
- 復讐のためだけに生きる主人公。元はカールレオンという小国の王子だったが、両親をを帝国軍のドラゴンに殺され、国を滅ぼされて以来、連合国軍に参加し、女神であり唯一の肉親であるフリアエを守りながら復讐の時を待つ。ストーリー中でアンヘルと契約し、「声」を失ったものの復讐への鍵となる強大な力を手に入れた。主人公だが声を失った為、序盤のイベントでしか喋らない。他人との会話では契約をしたアンヘルが通訳をする。紋章の位置は舌。言葉を発することができない。ただしCエンディングでカオスドラゴンと戦う際に、契約が解除されたため、「我が名はカイム!」と声を発する。
- 名前の由来はソロモン七十二柱の悪魔「カイム(Caim)」に由来する。綴りも同じ。
- レッドドラゴン - アンヘル(声優:ピーター)
- 既に一万年以上生きた竜の末裔。神の与えうるどんな試練でも乗り越えられると言われるほどで、その誇りも能力も並々ならぬ物。瀕死の状態にカイムと出会い、カイムの復讐の念と強い生存欲求から来た負の心に惹かれ、契約を許す。声や容姿からオスと勘違いされることが多いが実際はメス(資料によっては、ドラゴンは単性生物であり、性別は存在しないともある)。
- 「アンヘル」とは天使の意で、綴りはそのまま「Angel」である。ちなみに『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』に出るブラックドラゴン・レグナの綴りはその正反対である「Legna」となっている。
- フリアエ(声優:初音映莉子)
- カイムの妹で最終封印の依り代となる「女神」の役目を持つ。兄であるカイムに想いを寄せているが、「女神」であるため「恋愛」は禁じられている。誰かがいないと何もできない為、いつも絶望を抱いている。内に秘め続けた想いから逃げる為に自殺してしまう。Bエンディングでは人類の敵と化す。
- 名前の由来は復讐の天使「フリアエ」。
- イウヴァルト(声優:唐沢寿明)
- 歌の上手い騎士。元は貴族でフリアエの許婚であったが、女神になってしまったフリアエとの仲は水泡に帰す。フリアエを守りたいと思ってはいるものの、カイムを見ると無力さに潰れそうになる。契約により「歌」を失う。だが自分の「歌」こそがフリアエの唯一の救いであったことに気づくが、時は既に遅かった。カイムに異常なまでの劣等感を抱いている。イウヴァルトがカイムに勝る唯一のものが「歌」であった。紋章の位置は首。自分の身が危うくなると、一人称が「俺」から「ボク」に変化する。
- ブラックドラゴン
- イウヴァルトの弱みにつけこみ契約した竜。アンヘルと比べると異形の竜だが、その能力はアンヘルを越すほどである。イウヴァルトと契約し、「歌」を奪った。小説版ではこのドラゴンの異形こそが、やがてアンヘルの行き着く「カオス」形態であるとされている。
- ちなみに、このブラックドラゴンこそが次回作である『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』で主人公と行動を共にしているドラゴン「レグナ」である。
- レオナール(声優:山寺宏一)
- 兄弟を帝国軍に殺され、自殺しようとしたが失敗し、その場にいた妖精と契約してしまう。己の無力さを嘆く良き意思を持つ戦士。幼い男性(本編ではセエレ)に特別な感情を抱く性癖を持ち、常にそれを隠している。契約の代償は「視力」。紋章の位置は眼球。
- フェアリー(声優:宮村優子)
- レオナールと契約を結んだ妖精。かわいげな容姿とは裏腹に皮肉や暴言を口にする。なお、人間や契約者・レオナールでさえも貶している。一度口を開くと耳障りだが、正しいことを言ってるのは事実。
- アリオーシュ(声優:林原めぐみ)
- サラマンダーとウンディーネとの契約により、「子宮」を失ったエルフの女性。大きく反り曲がった「哀しみの棘」という名の大剣を使う。帝国軍に自分の子供を虐殺され精神が壊れてしまい、子供に対して深い執着を見せる。大量虐殺を繰り返していたため帝国軍に捕まっていた。牢獄でカイム達と出会うが、真っ先にカイムを襲った為、ヴェルドレに鍵を掛けられた。召喚能力では彼女が最強と言える。紋章の位置は下腹部。
- セエレ(声優:村上想太)
- 美しい金髪で良い匂いを放つ(レオナール談)少年。ゴーレムとの契約者で代償として「時」を失った、そのため成長することは無い。嫌われるのを避けるため常に「良い子」のふりをし、「きれいごと」を言っている。いつか世界を救う「ちいさな勇者様」に成ることを信じて、妹のマナを探すためにカイムに同行。紋章は全身に及んでいる。
- 名前の由来はソロモン七十二柱の悪魔「セエレ」。
- ヴェルドレ(声優:家弓家正)
- 神官長の職を持つ唯一、女神と話すことを許された存在。かつて戦場にいたころ、ドラゴンと契約し代償として「全ての体毛」を失った。しかし、そのドラゴンは既に石化し、彼が戦場に出向くことは無い。「きれいごと」を常に言っているが、自分の命が危うくなれば、自分のことしか考えない。紋章の位置は頭部から背中にかけて。なお、ヴェルドレが契約したドラゴンはゲーム中にもボスとして登場するエンシェントドラゴンで、契約の代償や得た物がたいしたことがないのは、契約してすぐに石化するほど年老いたドラゴンだったため。
- マナ(声優:山下夏生、郷里大輔・二人一役)
- セエレの双子の妹。母の愛情を受けられなかったが故に神にその愛情を求め、人を超える異様な魔力を得る。兄であるセエレを激しく憎んでいる。そして、天使の教会を立て、その教祖に。心の闇につけこみ、精神的に相手を責める。「ラララララ」と言いながらよく回る。神の声で妙に野太い声を発する
- 第二作のヒロインは彼女。これが決定した時は、全てのプレイヤーが驚愕したと言ってもいい。
[編集] システム
敵を連続して攻撃、殺戮することによって「チェイン」「MP」がたまる。また、魔法やHPを回復させたり、コンボをより一層繋げやすくする「スフィア」が出現する。
『契約者』を一人ミッション前に選択し、1ステージ中に3回召喚して使う事が出来る。(セエレ、アリオーシュ、レオナール) 契約者の魔法は『敵の魔法反射』『防御力』を無視する。普通に放つより、タメた方が威力が高く、グラフィックや範囲も変化する。ただし、召喚している間は契約者の体力が少しずつ減っていき、0になるとカイムに戻る。カイムとは違い、ステータスは成長しない。
武器それぞれに固有の『重さ』『材質』『振りの速さ』『能力』『魔法』『攻撃モーション』があり、それぞれの逸話、伝説などが収録されている。 (ちなみに魔法は全ての武器がそれぞれ違う) なお、武器のレベルは最大4。敵の血を吸って成長する(敵を殺すことで成長する)強い武器はかなりの人数を殺戮しなければならない。
何より、アクションゲームには珍しい「マルチエンディング」なのは必見である。 救いのあるエンディングを求め、ゲームを進行させる多くのプレイヤーをあざ笑うかのように絶望的になっていくエンディング。その内容は次第に苛烈を極めることになる。ゆえに最後に一番絶望に陥るのは皮肉にも全てをやり終えたプレイヤーである。
[編集] エンディング
5種類あるエンディングをここでは分岐順にA~Eと呼称する。
- Aエンディング
- 女神フリアエが死亡し、世界は崩壊の危機を迎える。最初は人間を見下していたはずのドラゴンが、世界ではなくカイムのために自分が封印になると名乗り出る。そして封印の時、ドラゴンは涙を流すカイムに自分の名は「アンヘル」と名乗り、消えた。最初で最後の愛であった。
- このエンディングの18年後が『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』の舞台になる。
- Bエンディング
- フリアエを生き返らせようと、イウヴァルトは彼女を再生の卵に入れた。ただ、蘇ったのは化け物となった女神・フリアエであった、イウヴァルトは復活したフリアエに呼びかけるが、触手に身体を貫かれ、絶命してしまう。
- カイムは女神となった妹を倒すも、世界中に出現した無数の再生の卵からは新たな女神達が生まれていた。カイムは妹の亡骸を抱きながら、何を思ったのだろう。
- 実はこのエンディングも『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』に関係している。『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』の主人公はイウヴェルトがフリアエの亡骸を抱え再生の卵に入り、結果新たに生まれた人類(真人類)という設定であり、このことは作品の中で明確にされておらず気付きづらい。
- Cエンディング
- 種族の存亡と再生の卵をかけてカイムとアンヘルは闘うことになった。
- 竜は出来損ないの種族を淘汰する『血の記憶』に支配され、人間を攻撃し始めていた。
- 契約は解かれ、共倒れすることはない。激しい戦いのうち、勝利したのはカイムだった。アンヘルを殺した後、彼は再生の卵を破壊する。その目には誰にも理解出来ない、強い確信に満ち溢れていた。人類を滅ぼすドラゴン達が咆哮を上げる中、カイムは光の中に消えた。
- Dエンディング
- 神の具現である司教、マナが殺された事により世界は『神の理を越えた』世界へと変貌を遂げる。
- 天は紅く染まり、巨大な赤ん坊の外見をした『敵』とその『母体』が降り立つ。世界を救えるのは契約で『時間』を失ったセエレだけ。最後の希望を背にアンヘルは母体まで飛び立つ。セエレは母体の上で寝転がるとマナを想い、帝都周辺の『時間』を止めた。セエレの顔はとても穏やかだった。
- Eエンディング
- カイムとアンヘルは『敵』の『母体』を追いかけ、時空の狭間を抜ける。彼等が辿り着いたのは、現代の『新宿』であった。『母体』は、世界を永遠の眠りに着かせる為、『歌』を歌い始める。
- 常軌を逸した戦闘の末、母体を倒して喜びに浸るアンヘル達だったが、そこに2機の戦闘機がカイムたちに向けてミサイルを撃ってきた。ドラゴンと人間は燃えながら堕ちていく。たとえ世界の救世主だったとしても、別世界ではただの化け物にしか見えない。人間が落ち行く中、ドラゴンは東京タワーに突き刺さった。
- ちなみにこのエンディングのラスボス、『母』は恐ろしく強い。更にゲーム中ではこのステージのみの特殊な戦闘である。いきなり新宿に飛ばされて混乱するプレイヤーに追い討ちをかけるかのような戦闘とその強さ。
- ようやく倒した後、ホッと一息ついてエンディングを見るプレイヤーに、次々と襲い掛かる『ありえない』展開の連続。それがEエンディングである。
- クリア後にフリーミッションとして『新宿』(上空戦)が追加される。
- 自衛隊の戦闘機5機との戦闘。これに勝利すると、『???』というドラゴンが使用可能になる(フリーミッションの上空戦限定)。
- かなり奇異な形態であり、その騎乗光景はしばしば話のネタになる事もある。
[編集] 音楽
モーツァルト、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ドビュッシー、バルトーク、マーラーなど、クラシック音楽の有名曲をアレンジしたものがBGMに使われている。なおBGMの中には明らかにストラヴィンスキーの春の祭典を元に作られた曲もあるが、なぜかエンディングクレジットにはストラヴィンスキーの名だけない。