ナーシャ・ジベリ
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ナーシャ・ジベリ(Nasir Gebelli ナーセル・ジェベッリー; ペルシア語: ناصر جبلی Nāṣer Jebellī)はコンピューターゲームのプログラマ。イラン出身。1957年生まれ。代表作はとびだせ大作戦、ハイウェイスター、ファイナルファンタジーシリーズ(I~III)、聖剣伝説2など。
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[編集] 略歴
渡米して情報科学を学ぶ。1980年に友人とApple II用のゲームを製作するSirius Softwareを立ち上げ、その高い技術力で認知される。しかし1981年にSirius Softwareは倒産し、新たにGebelli Softwareを設立。こちらも名作を生み出すが会社としては成功せず、アタリショックなどの要因もあって倒産する。
その後世界中を放浪していたが、Brøderbundのオーナーをしていた友人を訪ねた際に再びゲーム開発に誘われる。この時日本の友人として紹介されたのが、任天堂の宮本茂とスクウェア(現:スクウェア・エニックス)の坂口博信である。宮本とは(恐らく製品品質の考え方から)合わなかったが、坂口が元々ナーシャのゲームのファンであった事から意気投合しスクウェア入社。ほぼ同期の入社に河津秋敏と時田貴司がいる。
得意とする高速画像処理と疑似3D技術を生かした『ハイウェイスター』、『とびだせ大作戦』といったソフトを開発した後、『ファイナルファンタジー』に参加。シリーズの名物プログラマとして同IIIまでを担当する。
その後、ファミコン版のFFIVも担当していたが、すでにスーパーファミコンへの移行に伴いファミコン自体が下降気味だった為、スーパーファミコン版として一から製作されることが決まって発売中止となりIIIまでの担当となっている。最後に担当した『聖剣伝説2』開発後、再び世界放浪の旅に出た。1998年、John Romeroの呼びかけにより、ダラスで開かれたApple II 20周年パーティーにおいて、久々に公の場に姿を現した。現在はカリフォルニア州都サクラメント在住だが、坂口博信との交友は続いている。
[編集] 天才プログラマ、バグの神
ナーシャが天才プログラマである、という点については関係者、ファンの間で見解が一致している。高い技術力に優れたセンス、開発の速さの点で群を抜いており、伝説的な逸話が多々ある。ファイナルファンタジーシリーズは、ナーシャの技術力があったからこそ生まれたといっても過言ではなく、当時のスクウェア社を支えた陰の立役者であった。 その有能さを語るエピソードとして、ファイナルファンタジーIIIの開発において重大なバグが発生し、彼に指示を仰いだところ、突然電話越しに修正するべき部分のプログラムコードを語り始め、電話を受けた田中弘道をはじめ開発スタッフを唖然とさせたという。
技術的に目を引く部分では『ファイナルファンタジー』での飛空挺の超高速スクロールや、ファミコン版スペースハリアーといえる『とびだせ大作戦』など。また初期FFシリーズの高速な戦闘アニメーションや『聖剣伝説2』の独特な加速感を持つリングコマンド他、プログラム自体が持つ「ナーシャ節」のファンは多い。
一般ゲームファンの間で比較的知名度が高いのは、ファイナルファンタジーシリーズという大作を手がけたことに加え、オープニングに署名を入れたり、隠しメッセージを入れるなどAppleII以来のクリエイター文化が前面に出ていること、明らかにそれと分かる質の違った動きを見せるプログラムを書くこと、そして同時にバグが多いことに由来している。旧スクウェアは開発部の権限が強かったこともあり、ナーシャの超絶技巧を宣伝塔に使っていた節もある。ちなみに初代ファイナルファンタジーのスタッフクレジットで最初に表示されるのも、シナリオやキャラクターデザインではなく「Programmed by Nasir」である。
ナーシャの関わった作品で有名なバグは『聖剣伝説2』の「ボスを倒した直後にセレクトボタンを押すとフリーズする」や『FFIII』のアイテム無限増殖技など。他にも初期FFシリーズは細かいパラメータなどに潜在的なバグを多々抱えており、やり込みファンにとって「最後の敵はナーシャのバグ」などとも言われている。もっともナーシャがいなければFFは(少なくとも現在の形で)世に出なかったであろうことからプレイヤーの悩みは尽きない。特にFFIIIについては、膨大なフィールドとジョブをファミコンのわずかなメモリに押し込んだ技術はすでにそれだけで神業といえる。一説には、FFIIIが他機種に移植されない理由は、ナーシャのプログラムがあまりに高度すぎて誰も手が出せない為と言われており、一度ワンダースワンカラーでリメイクするという話が持ち上がったが結局発売までいたらず、最終的に2006年8月にニンテンドーDSで発売されるまで約16年もリメイクされなかった。
黎明期のプログラマらしく、ゲームの中に遊びを入れることも多い。『ファイナルファンタジー』の隠しゲーム、15ゲームはナーシャが勝手に作ったプログラムを隠し要素として入れたもの。『とびだせ大作戦』ではディスクシステムのゲームでは珍しいコピープロテクトを施し、コピー版ソフトの起動を阻止すると共に自分のクレジットを表示するというテクニックを披露している。
[編集] 作品
[編集] Sirius Software
- Star Cruiser (1980, Apple II)
- Phantoms Five (1980, Apple II)
- Both Barrels (1980, Apple II)
- Gorgon (1981, Apple II)
- Space Eggs (1981, Apple II)
- Cyber Strike (1981, Apple II)
- Pulsar II (1981, Apple II)
- Autobahn (1981, Apple II)
[編集] Gebelli Software
- Horizon V (1981, Apple II)
- Firebird (1981, Apple II)
- Russki Duck (1982, Apple II)
- Zenith (1982, Apple II)
- Neptune (1982, Apple II)
[編集] スクウェア
- とびだせ大作戦 (1987, ディスクシステム)
- ハイウェイスター (1987, FC)
- JJ (1987, FC)
- ファイナルファンタジー (1987, FC)
- ファイナルファンタジーII (1988, FC)
- ファイナルファンタジーIII (1990, FC)
- 聖剣伝説2 (1993, SFC)