ディスクシステム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ディスクシステム
- かつて、任天堂から出ていた専用のディスク媒体を用いる、ファミリーコンピュータの周辺機器。本項で詳述。
- コンピュータにおいてデータの記憶や蓄積のためハードディスクドライブや光ディスクドライブなどで構成された技術やその製品。ディスクアレイ、RAIDなど。
ディスクシステム(Disk System) は、専用のディスク媒体に書き込まれたソフトウェアを読み込むことでゲームができる、任天堂のファミリーコンピュータの周辺機器。日本国内で1986年2月21日に発売された。なお、日本以外では発売されていないが一部の国では正式に任天堂に承諾をうけたライセンス版のディスクシステムが発売されている。
目次 |
[編集] 概要
ファミリーコンピュータの従来のゲームプログラムは、カートリッジ(ロムカセット)に内蔵されたROMに格納されていた。それに対して、このディスクシステムは、ディスクカードとよばれる磁気円盤に記録されているプログラムやデータを必要なときにメモリ上に読み込んで、ゲームプログラムを実行する。
ディスクシステムは、ディスクを読みとるディスクシステム本体(HVC-022)と、ソフトウェアの情報をファミリーコンピュータ本体に供給するRAMアダプタ(HVC-023)からなり、ファミリーコンピュータに接続することでシステムを構成する。別売ACアダプタまたは電池(単2電池6本)で動作する。
内蔵されるRAMはプログラムデータ用が256キロビット、スプライトと背景用が64キロビットで、途中の読み込みなしに使える量は片面の半分ほどにあたる。
ディスク読み込み装置としてのみならず、新しい機能もいくつか追加されていた。中でも、ファミコン本体では矩形波など限られた音色しか出せなかったサウンド機能のためにPWM音源が搭載されてゲームプログラムから利用できるようになったことが大きい。ディスクシステムのゲーム作品は多くがPWM音源を利用し、当時のゲームの評価の際にはその当時としては美麗なサウンドを印象に残る点として挙げるファンも多い。
後にシャープから、ファミリーコンピュータ本体とディスクシステムとを一体化させたツインファミコンも発売された。
[編集] ディスクカード
ディスクシステムに用いる磁気ディスクは「ディスクカード」と呼び、当時は高価だったフロッピーディスクの廉価代用品となるべく開発されたクイックディスク規格を元に作られた。技術的な仕様はクイックディスクと同様で、両面それぞれが利用できアクセス速度が比較的速いが、トラックは1つのみでランダムアクセスができないため、一度のロードにかかる時間は一定である。ディスケット形状はクイックディスクに比べやや細長くなっており、任天堂純正品以外は用いることが出来ないように工夫されていた(実際には通常のクイックディスクも、フォーマットすれば普通に使用できた)。
ディスクカードの容量は両面で896キロビット(112kB)。登場当時はロムカセットに比べると約3倍の容量を持っていたことが魅力で、さらにゲームの途中のデータやハイスコアなどをディスクカードにセーブすることにより、本体の電源を切った後もデータを保持できるといったことも、当時のロムカセットでは不可能なことであった。
[編集] ディスクライター
ディスクカードは「ディスクライター」という店頭に設置されていたシステムを使う事で、内容を別のゲームに書き換えることができた。書き換えの料金は通常1本500円、永谷園のCMが出る『帰ってきたマリオブラザーズ』は400円と、新規にディスクカードを購入するよりも安くゲームを楽しむことができたため、当時の主要ユーザーであった子供達からこのシステムは歓迎された。ディスクライターで供給されたソフトにはパッケージ販売された新作ゲームだけでなく、過去にロムカセットで販売された作品や、ディスクライターでのみ購入できた書き換え専用ソフトも存在する。
書き換えたゲームの説明書はパッケージ販売用と同じ物が用意され、一部のゲームでは一冊100円で販売、その他は無料で配布という形式を取っていたが、しだいにパッケージ販売用とは異なる2色印刷の簡易説明書を無料配布するという形式に変更されていった。すべての説明書にはディスクカードに貼り付けるタイトルシールが付属したが、のちにタイトルシールが不足したため「ネームラベル」という白色の自分で名前を書き込むタイプのシールが代わりとされたこともあった。さらに、書き込みの受付が終了する直前には書き換え希望が殺到し、説明書はおろか白のネームラベルすらもらえなかった人もいる。
ディスクライターは任天堂により回収される形で1992年に店頭から姿を消した。その後も同額にて任天堂本社・支店で郵送または社内持込による対応が行われていたが、2003年9月、書き換え機の寿命のため対応が終了した。ちなみにディスクライターは今でも任天堂に保管されている。
[編集] ディスクファクス
ディスクシステムは黄色いディスクが一般的だが、後期には青色のシャッター付きのディスクを必要とするソフトも出た。これは店頭に設置された「ディスクファクス」(ディスクに保存されたスコアやセーブデータなどを任天堂とやりとりする装置)に対応したディスクで、黄色のディスクとは上位互換である。対応ソフトは『ゴルフJAPANコース』『ゴルフUSコース』『中山美穂のトキメキハイスクール』『ファミコングランプリ F1レース』『ファミコングランプリ2 3Dホットラリー』の計5種。ゴルフの上位入賞者には金メッキが施されオリジナルステージが収録されたゴールドディスクが授与された。1988年サービス終了。このシステムは任天堂が普及に意欲を見せていたファミリーコンピュータを用いた家庭用通信システムの試金石とも位置づけられるものである。青ディスクのソフトは、ディスクライターでの黄色ディスクへの書き替えはできない(逆は可能)。
ファミコンネットワークは、当時最も一般家庭に普及しているコンピュータであったファミコンを使った情報ネットワークのことで、ディスクシステム本体にも通信用拡張ポートが備えられていた。ファミリーコンピュータの周辺機器にはキャプテンシステムへの接続や株式売買、公営競技の電話投票などを可能にする拡張機器(通信アダプタ)が発売されたが、折しもパソコンの普及が進んでおり、性能面でも限界のあるファミコンを使ったシステムは普及には至らなかった。
[編集] その他
[編集] ディスクシステムの終焉とその後
発売当初、任天堂は「ディスクシステム発売以降、任天堂はソフトをすべてディスクで出す」と言い切り、大容量、低価格などが最大の魅力であったディスクシステムが主流になると思われた。
しかし、その後の半導体技術の進展により、従来のカセット媒体はディスクカードを凌駕する記憶容量を実現するようになった。また、バッテリーバックアップ技術の採用により、セーブの機能もロムカセットで実現できるようになり(しかもこちらはディスクと違いセーブ・ロード時間がかからない)、サウンドに関しても1990年頃からカセットに拡張チップが使用され、鋸波音やビブラートが出せるようになった。これらのことなどにより、当初ディスクカードでなければ実現不可能と思われていた機能のほとんどは、ロムカセットにおいて、それもディスクカード以上のレベルで実現可能になり、ディスクカードならではのメリットがなくなってしまった。家庭用通信システムも実現に至らず、不正コピーにも悩まされることとなった任天堂は、多くの名作を残しながらディスクシステムでのソフトウェア供給を終えた。
これ以降、任天堂はディスク媒体によるゲーム機をNINTENDO64の64DDまで発表しなかったが、スーパーファミコン向けには衛星放送を利用してゲームデータを全国一斉に供給するサテラビューを、またコンビニエンスストアチェーンローソンにて専用カートリッジへのゲームソフト書き換えを実施するニンテンドウパワーを開発するなど、書き込み可能な媒体でのソフトウェア供給には意欲を見せた。
[編集] ソフト供給
当時のユーザーの間では、ディスク用の作品はロムカセットで販売されていたソフトとは異なる独特の雰囲気があったとよく言われる。
任天堂はハードメーカーという立場から末期までソフト供給を行っていたが、初期から中期にかけてはコナミやスクウェアからも多くのソフトが供給された。これらのメーカーから発売されたソフトはPWM音源などディスクシステムの特徴を生かし、完成度も高かったことから名作と評される物も多い。一方、ソフト数の制限が他社に比べて極端に甘かったナムコやハドソンは過去にROMカートリッジでリリースしたソフトをディスクシステムの書き換え用へ供給するにとどまった。
低価格で販売・書き換えされる為に利幅が薄く、ハードの普及も順調とは言い難くROMカートリッジで出す方が販売本数が格段に多いこと、また前述のようにディスクならではのメリットがなくなったため、1989年頃から徐々にサードパーティから敬遠されるようになり、ソフト供給が減少していく。ロムカセットのソフト数にメーカー毎の上限があったため、中期以降は「ロムカセットで発売したいけど仕方なくディスクで出す」といった事も少なくなかった。
末期はディスクライターでの書き換え専用ソフトが中心となっていき、そして1992年の徳間書店発売の『じゃんけんディスク城』でソフト供給は終了した。
[編集] 模造品
ディスクシステムの発売後まもなく、各社からディスクの模造品が発売された。
もちろんこのような偽ディスクをおもちゃ店のディスクライターに持って行ったところで書き換えは拒否されるので、後に非正規ルートで出回ったディスクシステムのコピーツールを使って不正コピーをするために使われた。任天堂はこれに対抗してその後のディスクシステム本体にプロテクトを施したが、中にはそのプロテクトを「外します」という業者もいた。さらには、ちょうど今でいうCD-RやDVD-Rのデュプリケーターのような2ドライブ内蔵型のコピーマシンが製造され、モグリの書き換え屋が現れる始末だった。
また、この非純正ディスクは任天堂未認可のソフトウェアにも用いられた。まともなルートでは出せないアダルト要素を含むものや、市販のソフトを解析し、キャラクターやプログラムを書き換えるソフトなどが一部で売られていた。
[編集] 本体の修理について
2006年3月現在、ディスクカードの書き換えサービスは既に終了してしまったが、ディスクシステム本体の修理は任天堂にて受け付けている。ちなみに、故障の多くは「内部のドライブベルトが経年劣化により溶けたり切れたりする」ことであり、任天堂からドライブベルトだけ送ってもらい(税込210円、送料は数本なら80円切手で十分・まとめ買いは一度に一人5本まで)自分で修理することも出来る(その場合、営業所によってはドライブベルトの交換方法が書かれている説明書が同封される場合もある)。こちらのページに装着方法が載っているが、当然自分での修理は自己責任で行うこと。
[編集] RAMアダプタのROMチェック画面
スタートボタンとセレクトボタンを押した状態で電源を投入するとポートチェック画面が見られる。その画面が表示される前に十字キー右とAボタンを押すとメッセージが見られる。このとき数字が出ないのは旧バージョン、DEV 2があれば新バージョン。RAMアダプタのみでも可能。
[編集] 関連項目
- ツインファミコン
- クイックディスク (QD)
- ファミコンミニ - ディスクシステムセレクションにおいて、特殊な起動方法でロード画面を見ることができる。
- テトリスDS - 一部にこの起動画面に模した画面が使われていたり、またマリオとルイージのおいかけっこがみられる。
[編集] 外部リンク
|
|
---|---|
据え置き型 | ファミリーコンピュータ(ソフト) - スーパーファミコン(ソフト) - NINTENDO64(ソフト) - ニンテンドーゲームキューブ(ソフト) - Wii(ソフト) |
携帯型 | ゲームボーイ/カラー(ソフト) - ゲームボーイアドバンス/SP/ミクロ (ソフト) - ニンテンドーDS/Lite(ソフト) |
その他 | バーチャルボーイ |
周辺機器 | ファミリーベーシック - ディスクシステム(ソフト) - スーパーゲームボーイ - サテラビュー - 64DD - ゲームボーイプレーヤー |