ハック・ア・シャック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハック・ア・シャック (Hack-a-Shaq) は、バスケットボールにおいてフリースローの下手な選手に対して意図的にパーソナル・ファールをすること。もともとはNBAのダラス・マーベリックスの監督であったドン・ネルソンがシカゴ・ブルズと対戦するときに失点を減らすために使われた守備の戦術。しかし2000年ごろからはロサンゼルス・レイカーズにいたシャキール・オニールと対戦するチームによって主に使われている。プレーオフなど、緊迫した試合の終盤で使われることがある。
Hackとは相手の選手を手ではたくことによるファールであり、シャキール・オニールに対して多用されることによって、また、韻を踏んで語感がいいのでこういう名前で呼ばれている。ほかにはブルース・ボウエンに対してBruise-a-Bruce、ベン・ウォレスに対してHack-a-Benという呼び方がされる。デトロイト・フリー・プレスはBop-a-Benと呼ぼうと提案している。
目次 |
[編集] オフ・ザ・ボールの選手に対する意図的なファール
ウィルト・チェンバレンが意図的なファールを頻繁に受けて、リーグが問題視し始めた。初めのころはオフ・ザ・ボール(ボールを持ってない人)の選手へのファールに対する決まりがなかった。得点能力は高かったがフリースローの下手なチェンバレンは相手ディフェンダーから逃げるため走り回っていた。それがあまりにかっこ悪いので、「オフ・ザ・ボールの選手に対して意図的にファールをしても攻撃権は移らない」というルールができた。
パット・ライリーの言葉。「最も楽しいことのひとつは、ウィルトを追っている選手を見ることだった。おにごっこのようだった。ウィルトは走り回った。あまりにもまぬけに見えるのでリーグはルールを変えたんだ。」
[編集] ハック・ア・シャックの誕生
ドン・ネルソンは1990年代に理論を生み出す。「フリースローの下手な選手に対するファールを繰り返すことは、普通のディフェンスをするよりも失点を減らせる」というもの。
[編集] この作戦の最初の犠牲者
ドン・ネルソンは1997年にこの作戦をシカゴ・ブルズにいたデニス・ロドマンに使った。ロドマンのシーズン平均フリースロー成功率は38%だったためである。しかしその試合でロドマンはフリースローを12本中9本を決め、作戦は大失敗に終わった。むしろ犠牲者はネルソン率いるマーベリックスのババ・ウェルズといえる。彼は3分でファール・アウトするというNBAの不名誉な新記録を打ち立ててしまったからである。
[編集] シャックに対して初めて使用
1999年にドン・ネルソンはシャックに対してハック・ア・シャックを実行した。これが大成功して、リーグに広まる。
[編集] その他の選手への使用
他にこの作戦が使用される選手としては、ベン・ウォレス、ブルース・ボウエンがあげられる。ウォレスは生涯フリースロー成功率が42%しかなくNBA史上最低の成功率(1000回以上試投した選手中)である。また、ボウエンは3ポイントシュートの名手として知られているにも関わらず、フリースロー成功率56%であるため、狙われがちである。
[編集] 問題提起
2000年にカンファレンス決勝でポートランド・トレイルブレイザーズが、NBAファイナルでインディアナ・ペイサーズが実行した。しかし、レイカーズが優勝したのでリーグは特に問題視しなかった。
NBAコミッショナーのデビッド・スターン「急いで、ハック・ア・シャックの解決策を作るつもりはない。」
[編集] シャックのコメント
「もうフリースロー成功率は気にしない。必要なときには決めるって前から言っている。」
[編集] 批判
作戦を実行したロサンゼルス・クリッパーズに対してタイショーン・プリンスは「自分のチーム(この場合、クリッパーズ)の選手に対して失礼だ。君たちは守備ができない、と自分のチームの選手に言ってるのと同じだ。」と述べた。
[編集] 05-06シーズン
2006年のプレイオフのイースタンカンファレンス決勝では、デトロイト・ピストンズ対マイアミ・ヒートのシリーズで両チームが使用した。NBAファイナルでは、延長戦にもつれ込んだ第5戦でダラス・マーベリックスも使用した。
カテゴリ: バスケットボール用語 | NBA