バッテリーバックアップ
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バッテリーバックアップ(battery backup)とは、コンピュータなどの電子機器において、電池を使用することによってデータを記憶装置上に保存しておく技術である。英語表記の頭文字をとって「BB」「B.B」「B.B.」などと表記することもある。
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[編集] 概要
バッテリーバックアップに際して用いられるメモリはSRAMである。コンピュータ本体の電源を切断しても電池からSRAMに電気が供給され、データは電池切れにならない限りSRAM上に保存される。
[編集] パソコンなどにおけるバッテリーバックアップ
パソコンなどのコンピュータにおいては、コンピュータのBIOS設定や内蔵時計の時刻の保存に使用される。機器本体内でバックアップを行う場合は電源には通常の乾電池や、機器内蔵のコンデンサ(キャパシタ)を用いる。後者の場合、機器に通電している際に蓄電され、また寿命もない(物理的に壊れるまで使える)ので、日常的に使用していればデータが消える心配はほとんどない。
[編集] ゲームソフトのバッテリーバックアップ
家庭用ゲーム機向けゲームソフトでは、ROMカートリッジの内部に内蔵され、ゲームの途中のデータを保存する目的で使用された。この技術の導入により、長いパスワードをメモして再開時に入力する、といった手間を省くことができるようになった。ただし、カセットの接触不良や衝撃が原因でデータが消えてしまう(壊れてしまう)事態も頻発した。
ROMカートリッジ式ゲームソフトの場合、バックアップ用の電源にはリチウム電池が使用されることが多い。このリチウム電池の寿命は数年程度であり、寿命の長さはプレイ時間に反比例する。電池が切れるとバッテリーバックアップは機能しなくなってしまうため、引き続きバッテリーバックアップを使用するには電池の交換が必要となる(ユーザー自身の手で行うことができず、メーカーに依頼する形となる場合もある)。ただし、交換のために電池を抜いた場合にもバッテリーバックアップは機能しなくなるため、保存されていたデータは電池交換時には消えてしまう。
[編集] 歴史
はじめてバッテリーバックアップを採用したゲームソフトは、1986年11月発売の『ハイドライドII SHINE OF DARKNESS』(T&E SOFT)のMSX版である。同社は前作『ハイドライド』ではパスワードを発明したが、『ハイドライドII』においてパスワードを採用すると、約50文字近くなってパスワードの記録ミスが頻発する可能性が高く、パスワードの入力を間違えるたびにプレイヤーが苦痛を味わう、と考えた。そこで同作においては、パーソナルコンピュータの本体に内蔵することが常識だった16KBのSRAMとリチウム電池をROMカートリッジの内部に内蔵するということが考えだされ、バッテリーバックアップの採用に至ったのである(MSX版『ハイドライドII』同梱の説明書の中にある開発後記による)。
しかしながら、その翌年に登場したファミリーコンピュータ(ファミコン)版およびMSX/MSX2版の『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』(エニックス)では、最大52文字の復活の呪文(パスワード)が使用されている。ファミコンで初めてバッテリーバックアップを採用したソフトは、1987年4月発売の『森田将棋』(セタ)となった。
その後はRPGを中心に、多くのゲームソフトにバッテリーバックアップが採用された。
現在ではROMカートリッジがゲーム用メディアとして使われることが少なくなり、データの保持も電源が不要で小型化しやすいフラッシュメモリ(EEPROM)や本体内蔵のハードディスクドライブにほぼ取って代わられた。フラッシュメモリは、SRAMに比べて記録速度が遅いことや書き込み回数に制限がある。このため、『不思議のダンジョン』シリーズをはじめとするローグライクゲームなど、リアルタイムセーブを採用してきたゲームタイトルの中には仕様を変更している例もある。例えば、ゲーム開始時にペナルティを付加した状態でセーブを行なうことが挙げられる(途中でリセットするとペナルティが付加された状態のデータを読み出さなければならなくなる)。
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