ロムカセット
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ロムカセット(ROM cassette)とは、ROM(主にマスクROM)等の取り付けられた基板を内蔵したプラスチック製の箱の総称。
ファミリーコンピュータ用のものを中心に単に「カセット」とも呼ばれているが、オーディオ機器や初期のパーソナルコンピュータの記憶媒体であるコンパクトカセット(カセットテープ)との混同を避けるため、ロムカートリッジ(ROM cartridge)、カートリッジとも呼ばれる場合もある。
最も有名な用途としてゲームソフトがあるが、それ以外の用途にも使用されている。
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[編集] ゲーム用途
ロムカセットの登場まではゲーム機にあらかじめ内蔵したゲームプログラムしか動作させることしかできなかったが、ゲームプログラム(を実現する電子回路)をロムカセットとして切り離すことで、ロムカセットの交換によって、1台のゲーム機で複数のゲームタイトルを動作させる事が可能になった。
[編集] 利点
現在ゲームソフトの供給媒体はCD-ROMやDVD-ROM等のディスクメディアが主流であるが、以下の点でディスクメディアにはない利点がある。
- データ読み出しのためのシークを必要としないため、記録されたデータへのアクセスが可能になるまでの時間が短く、電源投入直後にすぐに動作する機器を作りやすい。
- シークが必要ないことから、ハードウェアにも磁気ヘッドやピックアップなどの駆動部を持たせる必要がなく、機器として経年変化に比較的強い。
- 取り扱いが容易である(ただし、精密機器のため水濡れ・結露には弱い)。
- 振動や衝撃のある環境でも読取りエラーが極めて出にくい(携帯機器に向く)。
- スロットに「差し込む」という単純な操作で利用できる。
- メディア本体の電気的な端子部以外はプラスチックで覆われているため、素手で扱っても平気。
- 読み出したデータを記憶しておくためのメモリが必要とされないか、ディスクメディアに比べて遙かに少なくて済む。
- 特殊チップやセンサーを内蔵させることで機能の追加・拡張、処理能力の向上が行える。
- 本体にCPUを持たず、カートリッジ内にソフトウェアとCPUを組み込む事で、処理機能を本体に依存しない機器も作れる。(→GAME Watch記事・XaviXPORT)
- 複製し難く、またメディア内に複製防止用の回路を組み込む事ができる(コピーソフトの防止)。
[編集] 問題点
ただしディスクメディアに比べると、製造に一定の電子機器生産ラインが必要とされる・マスクROMのチップ性能に容量が制限されるなどの点で、容量単価が高く付く問題が見られる。また容積的にディスクメディアほどに薄くない事から、やや流通コストが高く付く傾向もある。また、ディスクメディアと違い需要が急激に増大した場合に供給への対応に対し大きく時間が掛かることも挙げられる。
消費者サイドではカートリッジゆえの容積の大きさから来る収納の問題も見られ、CD-ROMやDVD-ROMが一般の音楽CDや映画等のDVDソフトと共通の収納ケースが利用できるが、ROMカートリッジでは専用のケースが必要となるなど、収納面でのデメリットがある(ただし、時代を追うごとにその大きさは小さくなってきており、ニンテンドーDSで採用されているDSカードなどの最近のメディアではさほど問題点とはならなくなっている)。
この他、電気的接点部分の汚れや金属部品の腐食による接触不良の問題もあり、古いROMカートリッジでは、内部の電子回路基板の腐食や使用部品の劣化などによる故障といった問題も見られる。
[編集] ロムカセットを使用した主なゲームハード
※一般的に「カセット」と呼ばれていないものは、カッコ内にその呼び名を記載。
- Atari 2600
- Atari Lynx(専用ROMカード)
- Atari Jaguar
- カセットビジョン、スーパーカセットビジョン
- オセロマルチビジョン
- ファミリーコンピュータ
- スーパーファミコン
- NINTENDO64
- バーチャルボーイ
- ゲームボーイ
- ゲームボーイアドバンス
- ニンテンドーDS(DSカード)
- PCエンジン(HuCARD)
- SG-1000、SG-1000II
- セガ・マークIII、マスターシステム
- メガドライブ、スーパー32X
- ゲームギア
- セガサターン(ロムカセットのみで供給されたゲームタイトルはないが、CD-ROMとロムカセットを併用するソフトが2本存在する)
- ST-V
- キッズコンピュータ・ピコ
- ネオジオ
- ネオジオポケット
- MVS
- ワンダースワン
[編集] ロムカセットを使用した主なパソコン
[編集] 大きさについて
ロムカセットの大きさは半導体技術の進歩により、小さくなる傾向がある。例えば任天堂のゲーム機の場合では、ニンテンドウ64用ロムカセットはスーパーファミコン用ロムカセットより一回り小さい。また、携帯ゲーム機でもゲームボーイ→ゲームボーイアドバンスとハードが代替わりするにつれどんどん小さくなってきている(ニンテンドーDSでは、コンパクトフラッシュ位の大きさにまでなっている)。
[編集] 表記および呼称について
ロムカセットは一般に「カセット」と略されているが、この「カセット」をソフトウェアの意味と混同して考える者もいる。これは特にゲームソフトにおいて顕著に見られる。
カセットがソフトウェアと同じ意味として用いられてしまうのは、ソフトウェアの供給が現在のようにディスクメディアで行われる前の世代の家庭用ゲーム機においてはロムカセットを用いて供給するものが主流であったためで、いわゆるその当時の名残である。
例えば当時人気を博したファミリーコンピュータではロムカセットがソフトウェアの供給媒体であったが、この媒体をカセットと総称するのが一般的であった。それが転じて、ロムカセットにて供給されているソフトウェア(ゲームソフト)そのものを指すようになっていった。要するに、ソフトウェアの入れ物であるメディア(媒体)とその中身のソフトウェアを同一視するようになっていったのである。
時代は移り変わり、プレイステーションなどのようにソフトウェア供給媒体がロムカセットからCD-ROMなどのディスクメディアに変わっていったが、ロムカセットのゲーム機に親しんでいた一部の者は媒体が変わってもそのままカセットと表現し続けることとなる。
ここで問題になるのは、ディスクメディアであるにも関わらずカセットと表現する、ということである。当然ながら、カセットとはこの場合メディアであるロムカセットを指すのが正しい。ディスクはディスクであり、決してカセットではないことには注意すべきである。