フランダースの犬
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フランダースの犬(ふらんだーすのいぬ、原題:A Dog of Flanders)は、イギリスのウィーダ(Ouida)の書いた童話。物語の舞台はベルギー北部のフランダース(フランドル)地方。現在では、ホーボーケン(Hoboken)が主人公たちが生活した村のモデルと考えられている。ウィーダがこの作品を執筆した頃には、ホーボーケンにはまだ風車が残っていて、アロアのモデルと思しき女の子がいたことも確認されている。
原作が書かれたのは1872年。日本語版は1908年(明治41年)に初めて『フランダースの犬』(日高善一 訳)として内外出版協会から出版された。当時は西洋風の固有名詞が受容されにくいと考えられ、ネロは清(キヨシ)、パトラッシュは斑(ブチ)と訳された。さらに昭和初期には、1929年の『黒馬物語・フランダースの犬』(興文社、菊池寛 訳)、1931年の『フランダースの犬』( 玉川学園出版部、関猛 訳)など他の訳者によって出版された。
1950年以降は、童話文庫・児童向け世界名作集の作品として多くの出版社から出版されている。
活字以外にも1975年に日本でテレビアニメシリーズが製作され、日本において絶大な人気を得ている。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
フランダース地方の小さな村に住む少年ネロは、祖父や老犬パトラッシュと共に暮らし、ルーベンスのような画家になることを夢見ていた。
しかし、祖父の死後、村の風車小屋が焼けた火事の放火犯との濡れ衣を着せられたことにより、彼の居場所は村から失われてしまう。賞金が出る絵画コンクールの審査発表を待つネロだったが、コンクールでは彼の絵は落選であった。
雪の降る中、住むところも希望も失ったネロは、アントワープへと向かい大聖堂に辿り着く。その頃村ではネロに対する誤解は解け、更に彼の才能を認めたコンクールの審査員がネロを引き取ろうと訪れていたが全ては手遅れだった。大聖堂の中に飾られたルーベンスの絵の前でネロはパトラッシュと共に天に召される。
[編集] 各国での評価
- この作品は、作中の舞台であるベルギーでも出版されている。だが、あまり有名ではない。また、さほど評価も高くはない。これは作者がイギリス人であり、また「自分たちはこの物語のように(子どもを一人で死なせるほど)非道ではない。」との批判的な意見がある為と思われる。
- 1986年にホーボーケンにネロとパトラッシュの銅像が建てられた。また、2003年にはアントワープ・ノートルダム大聖堂前の広場に記念碑が設置された。この背景には、日本人観光客からの問い合わせが多いという事実もある。
- (欧州全般に)教育的な見地からこの作品を読むことを勧めない風潮がある。これは、「主人公が年齢相応の自立をしていない」との理由に依るもの。
- アメリカで出版されている『フランダースの犬』はハッピーエンドを迎えるように改変が加えられている。これは原作の内容には「救いがない。」「可哀想だ。」との意見から。具体的には「ネロとパトラッシュは聖堂で死なない。」、「ネロの父親が名乗り出る。」などがある。
[編集] 派生作品
[編集] 世界名作劇場版
『フランダースの犬』のタイトルで1975年1月5日から同年12月28日までにフジテレビ系列の『世界名作劇場』枠でテレビアニメ化。OPでの原作のクレジットはウィーダの本名ルイス・ド・ラ・ラメー。制作は日本アニメーション。最終回の視聴率はビデオリサーチ・関東地区調べで30.1%を記録。これは『世界名作劇場』枠内アニメの視聴率の最高記録である。現在でもラストシーンは悲劇の代表格として語られ、「なつかしのアニメ名場面特集」の特番では定番シーンとなっている。原作とアニメではネロやアロアの年齢設定に若干相違がある。
[編集] 東京ムービー版
1992年に、『フランダースの犬-ぼくのパトラッシュ-』というタイトルで東京ムービーによってリメイクされ全24話が日本テレビ系列で放送された。世界名作劇場のフランダースの犬とは少し異なる部分があり、特にネロが書いたジェハンじいさんの絵を本人が破ってしまうシーンは視聴者に衝撃を与えた。なお、ネロの絵が上手な理由もここでは明らかとなっており、ネロは父親の遺伝を受け継いでいると作中で語っている。ジェハンじいさんは自分の娘であるネロの母と駆け出しの画家である父が結婚したことに強く憤りを感じているシーンがところどころ見られる。ゆえに作中でジェハンじいさんはネロの父に対し強い憎しみを持っており、ネロが絵を描いたことにどうしても許せなかったようだ。また、絵では食べていけないと悟っているようにも見える。この作品のラストシーンでは、亡くなったネロの元に、コゼツやアロアといった面々が駆けつけ、ネロに謝罪するシーンがあり、秀逸なラストシーンであると評価する意見と、演出がくどいと評価しない意見に分かれる。
[編集] アニメ映画版
1997年に、日本アニメーションによってリメイクされ松竹配給により全国公開された。「世界名作劇場を劇場映画としてリメイクする」と銘打った。キャストはテレビ版とは異なる。
[編集] 実写映画版
アメリカで過去4度ほど実写化された。実写のパトラッシュはアニメとは違った黒い毛むくじゃら(ベルギー原産のブ−ビエ・デ・フランダース)で、名作アニメの視聴者には違和感を持たれる傾向がある。なお、香港映画「フランダースの犬」はウイーダ原作ではない。
- 1914年版 - 監督:ハウエル・ハンセル、主演:マーガレット・スノー
- 1935年版 - 監督:シャルル・スローマン、主演:フランキー・トーマス
- 1967年版 - 監督:ジェームズ・B・クラーク、主演:デイヴィッド・ラッド、配給:20世紀FOX
- 1998年版 - 監督:ケビン・ブロディ、主演:ジェレミー・ジェームズ・キスナー、製作:ワーナー・ブラザーズ、配給:ギャガ・コミュニケーションズ
- アメリカでは上述の通り、原作が「ネロは大聖堂で救われるハッピーエンド」と改訂されている。その為、映画にも天に召されるシーンは元々無い。ただし、日本公開版ではネロとパトラッシュは原作通り天に召される。これはアニメ版の認知度が高く、アメリカ版の「改訂されたエンディング」に抵抗が予想された為と思われる。だが、その日本公開版の追加シーンは急造の特撮であり、その完成度を疑問視する声もある。