フランドル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』

フランドル（仏 Flandre、蘭 Vlaanderen、英 Flanders、独、Flandern / 形容詞形 Flemish）

“フランドル”という呼び方は、元々フランス語から来ている地域名である。

日本では一般に英語形の「フランダース」もよく使用される（ドイツ語では「フランダーン」）。歴史学では古くからのオランダ語の発音である「フランデレン」もしくは「フランデルン」としても使用される。

（歴史的な名称として）旧フランドル伯領で、オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけての地域を指す。（本項で主に記述）
フラマン語共同体とフランデレン地域が統合して成立したベルギーの連邦構成自治体であるフランデレンを指す。ベルギーの北部で公用語はオランダ語。独自の政府、議会などがある。首府はブリュッセルで首相はイブ・レテルム（2005年現在）である。
医薬品硝酸イソソルビド製剤の商品名。

フランドルは9世紀に伯領となった。中世に毛織物業を中心に商業、経済が発達し、ヨーロッパの先進的地域として繁栄した。

フランス王家ヴァロワ家傍系のブルゴーニュ公フィリップ（豪胆公）とフランドル女伯マルグリットが結婚し（1384年）、フランドルはブルゴーニュ公国の一部となった。その後、シャルル突進公が1477年に戦死すると、シャルルの娘マリーの結婚相手であるハプスブルク家がフランドルを含むネーデルラントを継承した。

宗教改革期の16世紀、ネーデルラントのプロテスタント勢力は、スペイン・ハプスブルク家から独立を目指し反乱を起こした（オランダ独立戦争）。北部ネーデルラントはプロテスタント勢力が制圧し、ネーデルラント連邦共和国（現在のオランダ王国の前身）として独立を果たすが、南部ではカトリック勢力が巻き返し、ハプスブルク家側に留まった。

中世フランドルの都市：ブルージュ（ブリュッヘ）、ゲント（ガン、ヘント）、イーペル
近世フランドルの都市：アントウェルペン（アントワープ、アンヴェルス）、ブリュッセル
『フランダースの犬』の舞台はアントワープである。
音楽では15世紀から16世紀にかけて、フランドル楽派と呼ばれる音楽家を輩出した。

なお、中世にフランドル伯領であったフランス北部の町、リールはフレンチ・フランダース（英語に基づく）と呼ばれることがある。

[編集] フランドル絵画

フランドル絵画（ネーデルラント絵画）は、都市の経済的な繁栄を背景に、フランドル（現在のベルギー、オランダ、フランスの一部を含む地域）で発展した。15世紀に初期フランドル絵画の隆盛が見られ、ファン・エイク兄弟が確立した油彩画の技法はイタリア・ルネサンスにも大きな影響を与えた。また、バロック期にかけてルーベンスらが活躍した。