ブラウン運動
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ブラウン運動( - うんどう、Brownian motion)とは、1827年(1828年という記述もあり)、ロバート・ブラウンが、花粉が水の浸透圧で破裂し水中に流失し浮遊した微粒子を顕微鏡下で観察中に発見した現象。液体中のような媒質中(媒質としては気体、固体もあり得る)に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。
長い間原因が不明のままであったが、1905年、アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であるとして説明する理論が発表された。
ブラウン運動はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音(熱電子による)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。
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[編集] アボガドロ定数との関係
ブラウン運動について以下の式が成り立っている。
ここで、上式左辺は、ブラウン運動する物体の平衡位置x0からのずれの2乗の平均である(系は1次元とする)。Rは気体定数、Tは絶対温度、fは易動度(媒質の粘性に関係し、ブラウン運動する物体の速度をvとすると、fvはその速度に比例する抵抗力となる)、tは十分経過した時間(極限としては、t → ∞)である。そして、NAがアボガドロ定数である。アボガドロ定数以外は、観測によって求められる量であり、フランスの物理化学者ジャン・ペラン(J. B. Perrin、1870 - 1942)が、NA = 6.5 × 1023(資料により値が異なる)という値を得ている。
[編集] 教科書での誤記
学校の理科の教科書では、水中で浸透圧により破裂した花粉から流出した微粒子ではなく、花粉そのものがブラウン運動すると間違って書かれていたことがあり、批判された。インターネット上の検索サイトで検索すると大学のウェブ上のアインシュタインの業績説明は誤ったままの説明になっていることが多い。
[編集] 数理モデル
- 詳細はウィーナー過程を参照
ブラウン運動の数学的に厳密なモデルとして、ノーバート・ウィーナーの名を冠してウィーナー過程と呼ばれる連続型確率過程がある。ウィーナー過程は離散型である乱歩の極限となる確率過程として確率論、確率解析において非常に重要な概念である。ウィーナー過程のランダムさは、ブラウン運動のモデルに相応しく至る所通常の意味では微分不可能なほどであるが、その軌跡(サンプルパス)は連続性を持ち、ある種の測度としてウィーナー過程の存在を肯定する。そしてこれが微分(殊に二次の微分)によってある種の無限小余剰項を生むという規約を設けた(伊藤清による伊藤型やルスラン・ストラトノビッチenによるストラトノヴィッチ型などの規約がよく知られる)特別の微分(確率微分)を考えることにより、確率積分などの概念が定式化され、確率解析と呼ばれる一分野が展開される。非常に多くの粒子の影響がブラウン運動の不規則さを生むという考え方は、やはり多数の原因によって複雑な変動を示す株取引などの経済活動などにも応用することができるため、ウィーナー過程や確率微分を応用した確率解析は、金融工学などの分野でも盛んに用いられている。
簡単のため1次元ウィーナー過程について述べる。
- 定義
- 確率空間
上で定義された連続な確率過程W(t)で次の性質を満たすものをウィーナー過程という。
- 任意の
に対し、
は独立。
- 任意の
に対し、W(t) − W(s)は正規分布N(0,t − s)に従う。
- 任意の
- (注意)数学的にはこのような確率過程が存在することは決して自明ではなく、証明が必要である。
- 性質
-
- サンプルパスは確率 1 で微分不可能である。すなわち、ブラウン運動は非常にギザギザな曲線となるのである。
- W(t)2 − tはマルチンゲールとなる。これはブラウン運動に関する確率積分を考える際の非常に重要な性質である。