マクベス (シェイクスピア)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文学 |
![]() |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『マクベス』(Macbeth) はおよそ1606年頃にウィリアム・シェイクスピアにより書かれた戯曲である。スコットランドの実在の王マクベス(在位:1040年 - 1057年)をモデルにしている。
出典は主にホリンシェッドの『年代記』である。シェイクスピアの四大悲劇(他は『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』)の一つで、四大悲劇の中ではもっとも短くもっとも残酷な作品である。
このストーリーを日本の戦国時代に置き換えたのが、黒澤明監督の「蜘蛛巣城」である。
目次 |
[編集] 構成
[編集] 第一幕
- 第一場 - 荒野
- 第二場 - 陣営
- 第三場 - 荒野
- 第四場 - フォレス、宮廷の一室。
- 第五場 - インヴァネス。マクベスの城の一室
- 第六場 - 城の前
- 第七場 - 城内の一室
[編集] 第二幕
- 第一場 - インヴァネス、マクベスの城の中庭。
- 第二場 - 前場に同じ
- 第三場 - 前場に同じ
- 第四場 - 城の外
[編集] 第三幕
- 第一場 - フォレス、宮廷の一室
- 第二場 - 同じくフォレスの宮殿、別の一室
- 第三場 - 同じくフォレス、宮殿へ続く道のある狩猟園
- 第四場 - 宮殿の大広間
- 第五場 - 荒野
- 第六場 - レノックスと貴族登場
[編集] 第四幕
- 第一場 - 暗い洞窟
- 第二場 - ファイフ。マクダフ夫人、その息子、ロス登場。
- 第三場 - イングランド。国王の宮殿の一室
[編集] 第五幕
- 第一場 - ダンシネイン、城内の一室
- 第二場 - ダンシネインの近く
- 第三場 - ダンシネイン、城内の一室
- 第四場 - ダンシネインの近く。森が見える。
- 第五場 - ダンシネイン、城内
- 第六場 - 同じくダンシネイン、城の前
- 第七場 - 同じくダンシネイン、戦場の他の場所
- 第八場 - 戦場の別に場所
- 第九場 - 城内
[編集] ストーリー
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
スコットランド軍とノルウェイ軍の戦場。スコットランド将軍マクベスはバンクォーと陣営に戻る途中、荒野で三人の魔女(ノルン)に出会う。魔女達はマクベスに対し「万歳、コーダーの領主」「万歳、いずれ王になるお方」と呼びかけ、バンクォーには「王にはなれないが、王の父親になる」と予言し消える。そこへダンカン王の使者が現れ、マクベスが新コーダーの領主に任ぜられたと伝える。魔女の言葉通りとなったことに二人は驚き、マクベスは王になるという予言にも秘かに胸を膨らます。
フォレスの城に帰還したマクベス達をダンカン王が迎える。ダンカン王は両将の功績を讃えつつ、息子のマルカム王子を王位継承者に定める。予言の実現を危ぶんだマクベスはある決心をする。
マクベスから事の顛末を記した手紙を受け取り、マクベス夫人は興奮する。夫を国王にさせるべく、王の一行より一足先に戻ったマクベスとダンカン王殺害の計画を企てる。一度は決意したものの及び腰になるマクベスを叱咤し奮い立たせるマクベス夫人。やがてダンカン王の一行が城に到着し、宴会が始まる。
皆が寝静まると、マクベス夫人は王の部屋つきの従者の酒に薬を盛り眠らせる。マクベスは血濡れの短剣が浮くのを幻視するが心を奮い立たせ王の寝室へ向かう。王を殺したマクベスは茫然自失となり、殺害に使った短剣を持ってきてしまい、マクベス夫人が慌てて短剣を戻しに走る。王の血で手を真っ赤に染めた二人は寝室へ引き揚げる。朝になり、貴族達が王の死体を発見する。城中が混乱にある最中、マクベスは部屋つきの従者たちを直ちに殺し王殺しの下手人と報告する。父を殺された王子たちは自分達の命も危ないと判断し、長男のマルコム王子はイングランドへ、次男のドナルベインはアイルランドへ逃げる。
王殺害の嫌疑は逃げた王子達にかかり、マクベスは国王の座につく。しかしバンクォーの存在と、彼の子孫が王になる、という予言を恐れたマクベスは、バンクォーと息子フリーアンスに暗殺者を放つ。バンクォーは殺されるが、フリーアンスは逃げ延びる。その報告を宴会の席で受けたマクベスはバンクォーの亡霊が列席しているのを見、取り乱す。そしてマクベス夫人もまた、次第に不安に蝕まれていく。
マクベスは魔女達の元へ赴き、予言を乞う。魔女たちは「女から生まれたものはマクベスを倒せない」「バーナムの森が動かないかぎり安泰だ」と予言する。バンクォーの子孫が王になる予言について尋ねると、8人の王とその後ろにバンクォーの亡霊が笑っている幻影が現れ、マクベスの不安は増す。その直後にマクダフのイングランド亡命の知らせが届く。マクベスはマクダフの城を奇襲し、マクダフの妻と二人の幼い子どもを殺させる。
イングランド王のもとに身を寄せているマルカム王子にマクベス討伐を説得するマクダフ。マルカム王子は自分は王位に相応しくないと答え、それにマクダフは激怒する。しかしそれはマクダフを試すための嘘であった。マクダフがマクベスのスパイでないと知ると、すでにイングランド王の助けを得てマクベス討伐の準備をすすめていることを打ち明ける。自分の城が奇襲された知らせを受けたマクダフは、家族を守れなかった自責の念と、マクベスへの怒りに駆られる。
マクベス夫人は夢遊病に犯されている。医者と侍女が隠れて見守る中、マクベス夫人は夜中に起きてきて、手をこする仕草を繰り返す。「血が落ちない」とつぶやき、ダンカン王殺害時の言葉を喋り、バンクォーやマクダフ夫人殺害を悔い、嘆き続ける。医者は治療の手立てはないと判断する。
マクベスの城へイングランド軍が攻めてくる。マクベスは「バーナムの森が動かない限り安泰だ」という予言を信じながらも、味方が次々と寝返っていく中、冷静さを欠いていく。そこへマクベス夫人狂死の知らせが届き、マクベスは絶望する。更にバーナムの森が向かってくるという報告が入る。実はイングランド軍が枝を隠れ蓑にして進軍していたのだ。マクベスは自暴自棄となり、覚悟を決めて戦場に出て行く。城が落とされる一方で、次々と敵を殺していくマクベス。ついにマクダフと対峙したマクベスは「女から生まれた者には殺されない」と告げると、マクダフは「俺は母の腹を破って出てきた」と返し、降参を求める。マクベスは降参せずにマクダフと戦い、殺される。
マクダフがマクベスの首をマルカム王子の前に差し出す。一同マルカム新王の誕生を讃える。
[編集] 映画化
- マクベス (1915) ジョン・エマーソン監督
- マクベス (1948) オーソン・ウェルズ監督
- ジョー・マクベス (1956) ケン・ヒューズ監督。舞台をギャングの世界に置き換えた作品。
- 蜘蛛巣城 (1957) 黒澤明監督。舞台は戦国時代。
- マクベス (1961) ジョージ・シェイファー監督。舞台公演をもとにした作品。
- マクベス (1971) ロマン・ポランスキー監督
- 2006年にもオーストラリアで映画化されたが、日本公開は未定。
[編集] 上演史
シェイクスピアの時代には上演されたという記録は残っていない。1708年の文献には劇作家のウィリアム・ダヴェナントが、ダンスや音楽を取り入れたオペラ風「マクベス」を上演したという記述がある。1667年のサミュエル・ピープスの日記には、ダヴェナントの「マクベス」は、これまでピープスが見た舞台の中で一番だと記されている。1744年にはデイヴィッド・ギャリックがオリジナルの「マクベス」を復活させた。
2002年にはウエスト・エンドでショーン・ビーン主演で上演された。
また、1991年初演の三谷幸喜の「ショーマストゴーオン」は、「マクベス」を上演している劇団の裏側が描かれ、マクベスを演じる俳優(佐藤B作)がマクベス、マクダフ、マクベス夫人の3役を演じて楽屋裏を混乱させる元となっている。
[編集] 関連事項
ウィリアム・シェイクスピアの作品 | |
---|---|
悲劇: | ロミオとジュリエット | マクベス | リア王 | ハムレット | オセロー | タイタス・アンドロニカス | ジュリアス・シーザー | アントニーとクレオパトラ | コリオレイナス | トロイラスとクレシダ | アテネのタイモン |
喜劇: | 夏の夜の夢 | 終わりよければ全てよし | お気に召すまま | シンベリン | 恋の骨折り損 | 尺には尺を | ヴェニスの商人 | ウィンザーの陽気な女房たち | 空騒ぎ | ペリクリーズ | じゃじゃ馬ならし | 間違いの喜劇 | テンペスト | 十二夜 | ヴェローナの二紳士 | 二人のいとこの貴公子 | 冬物語 |
史劇: | ジョン王 | リチャード二世 | ヘンリー四世 第1部 | ヘンリー四世 第2部 | ヘンリー五世 | ヘンリー六世 第1部 | ヘンリー六世 第2部 | ヘンリー六世 第3部 | リチャード三世 | ヘンリー八世 |
詩とソネット: | ソネット集 | ヴィーナスとアドーニス | ルークリース凌辱 | 不死鳥と雉鳩 | 恋人の嘆き | 情熱の巡礼者 | 死んでみようか |
外典と 失われた戯曲: |
エドワード三世 | サー・トマス・モア | カルデーニオ | 恋の骨折り甲斐 | マーリンの誕生 | ロークラインの悲劇 | ロンドンの放蕩者 | ピューリタン | 第二の乙女の悲劇 | リチャード二世 第1部 | サー・ジョン・オールドカースル| トマス・クロムウェル | ヨークシャーの悲劇 | フェア・エム | ミュセドーラス | エドモントンの陽気な悪魔 | フェヴァーシャムのアーデン | エドマンド剛勇王 | ジョン王の乱世 | ジャジャ馬ナラシ |ウィリアム・ピーター氏追悼の哀歌 |
関連項目: | ファースト・フォリオ | シェイクスピア別人説 | 登場人物一覧 | 問題劇 | シェイクスピア映画 | シェイクスピアによる新語 | 推定執筆年代 | 別人説にもとづいた推定執筆年代
■Template/■Discussion
|