ユナイテッド航空629便爆破事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ユナイテッド航空629便爆破事件(-こうくう629びんばくはじけん、英語:United Airlines Flight 629)とは保険金目的に乗客殺害を意図して航空機を墜落させた航空テロである。しかしながら犯人は保険金を受け取ることなく逮捕・起訴され、そして死刑が執行されることで罪を清算した。
[編集] 事件の概要
1955年11月1日、アメリカ大陸を横断するニューヨーク発シアトル行きのユナイテッド航空629便(ダグラスDC-6旅客機 登録記号N37559)は経由地であるコロラド州デンヴァーからオレゴン州ポートランドに向けて離陸しておよそ10分後に突如空中爆発し機体は広い範囲に四散した。これにより乗員乗客44名が犠牲となった。
爆発した箇所が燃料タンクがないところであり、また機体の残骸から航空機燃料ではない化学成分が爆発したと見られる痕跡や乾電池の破片などが発見され、爆破テロであった疑いが濃厚になった。
[編集] 犯人の動機
乗客の身辺を捜査した結果、FBIは母親が乗客として搭乗していたデンヴァー在住の23歳のドライブイン経営の男性、ジョン・ギルバート・グレアムを逮捕した。グレアムの自白によれば母親のデイジー・キング夫人に持たせた荷物のなかにダイナマイト25本に起爆装置を取り付けたものを入れ、母親にかけた総額37500ドルの生命保険(空港内の保険自動販売機で購入。皮肉なことに彼女の署名がないため効力がなかった)と母親の財産目的に犯行におよんだというものであった。
グレアムがそのような無関係の人々を巻き込む犯行をしたのも、航空機事故を装えば自らの犯行であることが露見しないと考えたからであるが、科学的捜査のまえで全て明るみに出た。そのためコロラド州の裁判所は彼に母親に対する殺人についてのみで死刑を宣告し、1957年1月11日にガス室で罪を償うこととなった。
保険金目的で航空機を墜落させるテロ事件は1949年のカナディアン航空機爆破事件を始め、いくつかあるが、そのほとんどは保険金を受け取る代わりに犯人は自らの生命を持って清算させられる結果になっており、多くの人命を奪う割に合わない卑劣な犯罪であるといえる。