ユーロファイタータイフーン (戦闘機)
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ユーロファイター タイフーン
ユーロファイタータイフーン(Eurofighter Typhoon)は、NATO加盟国のうちイギリス、イタリア、スペイン、ドイツ(旧西ドイツ)の四カ国が共同開発した戦闘機で、デルタ翼とコクピット前方にカナード(先尾翼)を備え、クロースカップルドデルタと呼ばれる形式の機体構成をもつマルチロール・ファイター。
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[編集] 開発経緯
[編集] ヨーロッパ戦闘機
1970年代後半に1990年代前半の実用化を目指した戦闘機の検討を行っていたイギリス、西ドイツ、フランスの三カ国が、機体の仕様や能力について一定の合意を1980年に結び、1992年の実用化を目指したECA(ヨーロッパ戦闘機)のとしての開発が始まり、1983年にイタリアとスペインを新たなパートナーとして迎え、計画の見直しと名称をFEFAへ変更した。しかし、開発費用の分担やフランスが空母艦載機としての能力とパワープラントに自国産のSNECMA M88の採用を主張したため、1985年7月に共同開発計画から脱退、計画に残った四カ国はフランスを抜きで開発を進める事になった。なお、計画から脱退したフランスは純国産戦闘機ラファールを開発し、海軍型のラファールMが2001年にフランス海軍が保有する原子力空母から作戦行動が可能になった。
[編集] 戦闘機試作機EAP
計画が進まない事に業を煮やしたイギリス国内では、ブリティッシュエアロベースの自己資金により開発された戦闘機試作機EAPが初飛行した。1986年に計画を管理するユーロファイター社とパワープラントのEJ200の開発を管理するユーロジェット社が設立され、EAPの成果を認めたユーロファイター社は1987年以降の試験に資金を提供する事を決定した。運用開始時期は当初計画の1990年代前半から1997年に延びたものの開発はこのまま順調に進むと思われた。
[編集] 東西ドイツ統一の余波
東西統一で、旧東ドイツ地域のインフラ整備に多額の資金が必要となった事により、1992年にドイツが開発コスト問題から計画の脱退を示唆、この動きに対し、複数の代価案が検討されたが、代価案のすべてが今まで以上のコストがかかる物か仮想敵機であるMiG-29やSu-27に能力面で劣る物ばかりであった。同年年末に開発参加国の国防相会議が開催され従来の計画を維持することを確認した。方針維持の要因として、これまでに投入された資金が無駄になる事や外国製戦闘機の導入を行っても大幅なコストの削減ができない、参加国の航空機産業からの圧力等があった。
[編集] EF-2000
計画の推進が確認された後に、政治的な理由から想定運用開始時期を遅らせ2000年からの運用としたため、機体名称の変更が行われEFAからEF(Eurofighter)-2000に変更され、1998年には輸出市場向け名称としてタイフーン (Typhoon) と名付けられた、現在ではタイフーンが愛称となっている。
なお開発参加国による制式名称は、
- イギリス: 単座型タイフーン F.MK.2 複座型タイフーン T.MK.1
- イタリア: EF-2000
- スペイン: 単座型C.16 複座型CE16
- ドイツ: ユーロファイター EF 2000
となっており、イタリアとドイツの単座型と複座型は機体毎のナンバ−で識別している。2002年夏から量産開始。価格3800万ドル(2006年上半期現在)。アフターバーナーなしで超音速飛行を可能としており、機体構成等が他の4.5世代型のヨーロッパ製戦闘機と共通する点が多い。
[編集] 性能
- ケアフリーシステム:無理な操縦をしても、制御不能にならない程度に自動制限される。
- (翼の形状が変わっているため、飛行姿勢はコンピュータ制御されている。)
- Gスーツと加圧呼吸装置で長時間9Gに耐えられる。急激な速度変化や旋回が可能となった。
- (人体と機体が耐えられる限界が9G。なお、従来機は数秒しか耐えられない。)
- ヘッドマウントディスプレイ:ヘルメットに連動して視線移動でロックオンできる。
- 搭載のミサイルは、対地・対空の両用攻撃が可能。
- アフターバーナーなしで超音速飛行できる(空虚重量でマッハ1.5、全備重量でマッハ1.3)ので、赤外線ミサイルに追尾されにくい。
- 高高度で飛べるので空中戦に有利。
- 電波吸収材の多用により、トーネードに比べレーダーに写る面積が4分の1以下に減少。英国空軍(BAES)の評価では正面からのRCSの値は最新型F/A-18E/Fやラファルよりも小さく、正面RCS面積はステルス戦闘機に次ぐという評価もある。[1]。
- イギリス防衛評価研究所(DERA)の試算によれば、改良型Su-27(Su-35相当)との性能比較においてタイフーンは4.5:1の割合で有利との研究結果が出ている(ラファールで1:1、F-15最新型だと1.5:1、F/A-22だと9:1)。このデータはタイフーンの高性能さを示していると言える[2]。
[編集] 生産型
- トランシェ 1
- 対地攻撃兵装の運用能力を持たない迎撃戦闘仕様で、2005年3月迄の生産型。総生産機数148機
各国での導入機数は、
- イギリス:単座型37機 複座型18機
- イタリア:単座型19機 複座型10機
- スペイン:単座型12機 複座型8機
- ドイツ:単座型28機 複座型16機
- トランシェ 2
- 限定的な対地攻撃能力を有するタイプで、2005年12月17日に開発参加四カ国合計で236機の導入契約を締結。
各国での契約確定機数は、
- イギリス:単座型83機 複座型6機
- イタリア:単座型43機 複座型3機
- スペイン:単座型27機 複座型6機
- ドイツ:単座型58機 複座型10機
- トランシェ 3
- 対地攻撃能力を完全実装した生産型だが、先行きは不明。
[編集] 配備状況
2003年後半からイギリスとドイツ、スペインで教育部隊での運用開始、2004年からイタリアでも部隊中核となる人員の機種転換が始まった。
2004年5月24日付けのロンドン・イブニング・スタンダードに飛行制限問題が掲載され、コンピューター及びディスプレイの問題で悪天候時の高機動運動が危険であると報じられたが、情報源の問題から記事の信頼性について疑問視する見方も有る。
[編集] 開発参加国以外への販売
- オーストリア
- ギリシャ
- 韓国
- シンガポール
- 日本
- サウジアラビア
- 2005年12月下旬に導入が決定したと報じられた。導入機数は確定48機、オプション24機の合計72機。購入金額は60億ポンド(106億ドル、約1兆2000億円(1ポンド201円:05/12/23時点)。トーネードIDSの近代化改修も込みで100億ポンドという話もある。代替されるのは空軍のトーネードADVもしくはF-5E/Fと言われている。ヨーロッパ諸国以外では初の受注となる。同国に関連する汚職事件に関し、イギリス側の司法当局が捜査を行っていたが、両国の信頼関係を損なう恐れとまとまった商談が破棄される恐れがあるとして捜査を中止したことに際し、まとまった商談はタイフーンの輸出に関する事柄だったのではと一部で言われている。
- インド
- 多用途戦闘機導入計画の候補の一つとして上げられた。
- トルコ
- F-35Aを導入予定だが、国内生産時の分担比率の問題と、F-35A自体が生産されるか流動的となっているため、万が一の保険としての打診が一部の企業に対して行われたが、タイフーンではF-35Aのステルス性を代価できないという軍事的事情やアメリカとの結びつきを重視した結果、当初の予定されていたF-35Aの導入が決定した。
[編集] 仕様(トランシェ 2)
出典: DOPPELADLER.COM[3], Air Force Technology[4].
諸元
- 乗員: 1名または2名
- 全長: 15.96 m (52.4 ft)
- 全高: 5.28 m (17.3 ft)
- 翼幅: 10.95 m (35.9 ft)
- 翼面積: 50 m2 (538 ft2)
- 空虚重量: 10,995 kg (24,240 lb)
- 最大離陸重量: 23,500 kg (51,809 lb)
- 動力: ユーロジェット EJ200 ターボジェットエンジン
- ドライ推力: 60 kN(AB使用時90kN) (6.188 kg) × 2
- アフターバーナー使用時推力: 90 kN (9.178 kg) × 2
性能
- 最大速度: マッハ 2+ (2,120 km/h)
- フェリー飛行時航続距離: 3.706 km
- 航続距離: 1.389 km
- 実用上昇限度: 18.300 m以上
- 上昇率: 315 m/s
武装
- 固定武装:マウザーBK-27 27mmリヴォルヴァーカノン 1門
- 爆弾
- GBU-31 JDAM 誘導爆弾
- ペイブウェイ III/IV 500 lb~2000 lb誘導爆弾
- 空対空ミサイル
- 空対地ミサイル:MBDA ブライムストーン、MBDA ストームシャドウ
- 空対艦ミサイル:AGM-84 ハープーン、KDA ペンギン
- 対レーダーミサイル:AGM-88 HARM
使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。
[編集] 参考
- ^ Eurofighter Technology and Performance, www.eurofighter-typhoon.co.uk(英語)
- ^ Eurofighter Typhoon, www.airpower.at(英語)
- ^ Typhoon (Taifun), www.doppeladler.com(英語)
- ^ Eurofighter Typhoon, www.airforce-technology.com(英語)
[編集] 外部リンク
- ユーロファイター社公式HP(英語)