ラボ・パーティ
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ラボ・パーティとは、(株)ラボ教育センターが運営する英語コミュニケーション団体。通称ラボ。1962年11月に発足。創立者は詩人の谷川雁。「ことばがこどもの未来をつくる」がスローガン。本部は東京都新宿区。大阪、名古屋、福岡、アメリカなどにも支部をもつ。原則、0歳(6ヶ月~)から大学卒業までの学生しか入会できない。
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[編集] ラボとは
子供に対し、英語を使ったコミュニケーション教育、異文化理解教育などを行う。英語力習得が主な目的ではないため、文法や構文を覚えたりすることはなく(付随的にはありうるが)、また成績や順位もつかず、テストなども無いので、NOVAやAEON等の英会話習得スクールとは異なる。英検やTOEIC,TOEFL等の指導は行っていない。全国に約3600教室(それぞれの教室をパーティーと呼ぶ)、会員は数万人規模でいるとおもわれるが、あまり知られていないのはTVCMなどが無く、新規会員の獲得が口コミ、紹介が主であるからであろう。また会員数は多いが、売上げ高はそれほど高くないので、営利を追求しているわけではないと思われる。収益率が高いとはいえないので、各教室のテューター(教師)もラボのみで生計を立てているひとは少ない。半ばボランティアで運営されている。
[編集] 組織・活動
その授業は主に、テューターと呼ばれる教師個人の家に小グループの子ども達が集まる形(パーティー活動)で行われる。各グループは「○○パーティー(○○はテューターの姓)」と呼ばれる。テューターは一定水準以上の語学教育能力を持ちながら家庭に入っている女性が中心。組織は全国に広がり、数万の会員がいる。谷川雁は左派として知られたが、ラボ・パーティは教育機関として政治的、宗教的中立を守り、特定の政治、宗教団体との関連も特に認められない。
原則、幼児から大学生までを会員とし、会員の通称は「ラボっ子」。授業は英語等外国語の劇(テーマ活動)(TA)や、ソングバード(SB)と呼ばれるアメリカ、韓国、スペイン等世界中の子供達の歌を歌い、踊る活動やテーマ活動の発表を中心としている。
パーティーで、毎週一度開かれるパーティー活動の他、地区や支部単位での活動がある。各パーティーによっても差があるが、ラボっ子およびテューターは、三ヶ月~半年に一回、近隣の他のラボ・パーティーと互いにテーマ活動やソングバードを見せあい交流する、発表会を一つの目標として取り組んでいる。この発表会は支部(これは一般的な、「関東」などのくくりと同規模)や全国規模で発表会が行われることもあり、そこで発表することは大きな喜びとなる。
更にラボ・パーティ全国レベルの活動として、サマーキャンプ、ウィンターキャンプ、スプリングキャンプなど全国からのラボっ子の集まるキャンプや、親子で参加することの可能な「ファミリーキャンプ」などが行われている。キャンプは全国で毎年数万人規模の参加者が集う一大イベントとなっている。そこではラボのマークやライブラリーの絵を使った帽子やボールペン、バッジなどのグッズも販売されている。
また、単に英語教育のみならずコミュニケーションや異文化交流など教育全般に対する活動も行われている。英語(外国語)を教えるというよりは、総合的なコミュニケーション教育の側面が強く、よって他の語学教育機関とは一線を画している。入会したからといって、かならず一定レベルの英語が身につくわけではなく、また英検やTOEIC,TOEFL等の指導は一切行っていないので(テューターの個人指導レベルでは行われているかもしれないが)、英語習得を期待して子供を入会させた親にとっては決して満足いく成果が出ないこともある。
また、活発な国際交流活動の歴史も長く、1972年より北米を中心とした一ヶ月ホームステイや1988年には高校生1年留学を行い、諸外国からのホームスティの受け入れ等も行っている。現在は交流の範囲をアメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国、中国、メキシコ、ニュージーランド等に広げている。
[編集] 教材
テーマ活動やソングバードに使われる音源を収録したCDを(ラボ・)ライブラリーとよび、通常4枚組1セットで販売される。ソングバード用CDは、主に英語圏の童謡、わらべ歌(ナーサリーライム)等を英語のみで収録し、ラボっ子は音楽にあわせ踊ったり、ジェスチャーをして楽しむ。フォークダンスに近い。テーマ活動用CDは、英語と日本語が(中国語などの言語が使われたものもある)1センテンスずつ交互に語られ、CDを聞くだけで物語が把握できるようになっている。とりあげる題材などは、「注文の多い料理店」(宮沢賢治)や「ピーターパン」など有名な作品も多く、「おばけのQ太郎」もそのうちの一つとなっている。ただ単に文を朗読するのではなく、効果音や音楽も多く使われ、クオリティは高いといえるだろう。物語を語るナレーターには江守徹氏など著名人が参加していることもある。テーマ活動用CDは1年に1~2本新作が発売される。ソングバード用は不定期に新作が発表される。
[編集] キャンプ
長野県黒姫高原に数万坪にもおよぶラボランド黒姫(黒姫ラボランド)とよばれるキャンプ施設を所有している。そこで、春、夏、冬、GW期間などに全国からラボっ子が集まり、キャンプが行われる。キャンプといってもテントで生活するのではなく、ペンションと同じようなロッジが基本で、ラボっ子はロッジで寝泊りしたり野外で、フィールド活動などをしている。それぞれ著名な山や川からロッジ名をとり、アンデス1やロッキー1のようによばれる。また黒姫山登頂プログラムなども行われている。1ロッジ25人前後で、それにシニアメイトが男女各1名、ロッジマザー(テューター)2~3人がつく。ロッジラボランド黒姫以外は各地の旅館、ペンション、温泉地などをキャンプ地にあてている。スプリングキャンプは現在黒姫ラボランド、沖縄で行われている。サマーキャンプは現在ニセコ、蔵王、五箇山、黒姫ラボランド、ユツボ、平郡で行われている。ウィンターキャンプは現在蔵王、黒姫ラボランドで行われている。
キャンプでは、ラボっ子たちは「キャンパー」と呼ばれ、割りふられた各ロッジ(活動場所)ごとに班として行動し、「シニアメイト」と呼ばれるリーダーが年下のラボっ子をまとめ、プログラムの進行を行う。シニアメイトになる事を希望するラボっ子は、原則として高校生以上で、「シニアメイト」登録を行った上で研修を受け、その後晴れてロッジ活動を運営する事になる。各ロッジには数名のテューターが配置されるが、テューターは運営にはあまり関与せず、シニアメイトに全面的な運営権限がある。ただし、大枠のプログラムはきまっている。
シニアメイトの上に、「大学生コーチ」が存在している。大学生コーチは多くのシーンでラボ活動の企画・進行を事務局に代わって行う。そのため、大学生コーチ会議で決まった事は、全国のラボ活動に影響を及ぼす。キャンプにおいても、シニアメイトに対する指示を行う等、キャンプ全体の進行を大きく担っている。資格としては、大学生である事が原則である。
[編集] 関連人物
作家のC・W・ニコル氏はラボの黎明期から現在まで深く活動や関連著書、教材の作成に関わっている。THE BOOMのヴォーカル、宮沢和史氏はラボっ子卒業生の中で最も著名な人物の一人で、ラボ・パーティ40周年記念イベントでラボっ子、テューター及びラボ事務局員のみを対象としたコンサートを行ったり、ラボオリジナル教材の為の書き下ろし曲(ひとつしかない地球)の提供をする等、その活動に関わっている。作曲家、編曲家の牟岐礼氏は、教材の制作等に多く携わっている。慶応義塾大学名誉教授で言語学者の鈴木孝夫氏は、関連著書の執筆等、初期から深く活動に関わっている。NHK朝の連続テレビ小説「こころ」(2003)のヒロインを演じた、女優の中越典子氏もラボっ子であった。
[編集] その他
「七カ国語を話す日常がある」のヒッポは黎明期に枝分かれした団体である(現在活動の提携はない)。