リトルダンサー
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リトルダンサーとは、アルナ車両・東芝・住友金属工業・東洋電機製造・ナブテスコ(旧ナブコ)で共同開発された、超低床路面電車シリーズの呼称である。1999年より旧アルナ工機において超低床路面電車の開発プロジェクトがスタートし、2001年より量産を開始した。この「リトルダンサー」という名前には“Little Dancer(小さな踊り子)”と共に、「段差が小さい」という意味合いも含まれている。
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[編集] 共通仕様
シーメンス社製のコンビーノシリーズや日本製のJTRAM等の超低床車両に使われている車軸のない独立車輪式台車ではなく、従来型の車軸付き車輪の台車を用いる事によって安定した走行性能を確保すると共に、いわゆる交通バリアフリー法や軌道法に準拠した設計としている。車両に使用されている部品はすべて日本製である。複雑な駆動方式を用いていないため、在来の路面電車車両に近い保守が可能である。
[編集] バリエーション
現在、リトルダンサーには用途と仕様に応じて6種類ある。当初、「タイプS」、「タイプL」、「タイプA3」の3種類が開発され、後に「タイプU」「タイプC2」が加わった。 近日、5車体連接型の「タイプA5」が鹿児島市交通局に導入され、運行が開始される予定である。
[編集] タイプS
従来のボギー車両の構造をとる単車型の車両で、台車を車端に寄せることで客室部の低床化を図ったタイプ。Sは"Short"を意味する。このタイプであれば在来車の機器を用いて車体更新車として製造することも可能である。客室床面高さは350mmである。2002年3月より伊予鉄道モハ2100形電車として営業を開始。
[編集] タイプL
土佐電気鉄道が導入したタイプ。Lは"Long"を意味し、車体長が17mと比較的長い。タイプSの中央部に台車つきの中間車両を配したような形の3車体連接車で、客室床面高さは両端車体で350mm、中間車で480mmである。定員は71名。2002年4月より土佐電気鉄道100形電車として営業運転を開始。
[編集] タイプA3
鹿児島市交通局が2002年に1000形電車で採用したタイプ。日本で国内向けに作られた路面電車車両で初めて70%低床となった車両である。A3のAは"Articulated"を意味する。中間車がフローティング構造となっている3車体連接車で、客室床面高さは330mmである。電動ばねブレーキを装備しエアは一切使用しない。カーブでの車体中央部の張り出しを避けるため台車のある運転席モジュールの間に客室モジュールを挟む方式をとったため、車内の総床面積に対する客室床面積の比率は少ない。伊予鉄道モハ2100形電車のように運転台後部に座席を設ける事も可能だが、鹿児島市交通局では客室内の段差は危険として設けていない。
[編集] タイプU
タイプA3同様、中間にフローティング車体を採用した3車体連接車で、電動ばねブレーキを装備している。Uは"Ultimate"を意味し、リトルダンサーシリーズの集大成的な位置づけとされる。他のタイプと同じく在来型の車軸付き車輪の台車を用いるが、主電動機を車体(運転台下部)に装架し、継ぎ手で車軸を駆動する方式(車体装架カルダン駆動方式)を採用。それまで他のタイプではできなかった動力台車部の低床化を実現した100%低床車である。客室床面高さは低床部で380mm、台車上で480mmである。 2004年3月より長崎電気軌道3000形電車として営業運転を開始。
[編集] タイプC2
2007年3月より営業運転を開始した函館市交通局9600形電車で採用されたタイプ。タイプUと同様の車体装架カルダン駆動方式を採用した2車体連接車である。