レッドネック
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レッドネック(Redneck)はアメリカ合衆国の特定の人々、おもに貧困白人層を指す侮蔑語。
元来は南北戦争当時、北部の人間を“ヤンキー”、そして南部の人間を“レッドネック”と侮辱的に互いを呼び合っていたのが始まりと考えられ、農作業など炎天下での野外労働を強いられる南部や田舎の貧乏な白人は「首が赤く日焼けしている」ことから、この言い方で呼ばれるようになった。
しかし現在では、その出身・居住地域や属性に関係なく、ある一定のステレオタイプに当てはまる人々やその気質を持つ人(物)をレッドネックと呼ぶ。
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[編集] 概論
アメリカの南部やロッキー山脈周辺など農村部に住む、貧困層の白人に対する軽蔑を含む侮辱的な言葉である。
彼らの特徴として、非白人にたいしては差別的で排他主義的な面が強く、愛国主義や右翼思想の支持者である場合も多いため、東部(東北部)や西海岸、州都や大都市に住む人々に対しては反感を抱いている。宗教的には敬虔であるとされ、中には地動説・進化論を否定する人々もかなりの数存在する。
また近年では貧困白人層に対する侮蔑的な呼び方としてホワイト・トラッシュ(ゴミ屑白人)という表現が使われている。アメリカ合衆国と同様英語圏に属すオーストラリアでは、同様の意味のスラングとしてBogan(en:Bogan)というものがある。
[編集] ステレオタイプ
映画などのメディアに描かれるレッドネックのステレオタイプは次のようなものである。
- 南部訛りで喋る。(歯並びが悪かったり、歯が抜けているために発音がはっきりしない場合もある。)
- 田舎のトレーラーハウスか古い農村の住宅に住んでいる。
- 夫婦が家の中や路上で大声で喧嘩をしていたり、戸を開けたままトイレで用を足す夫を妻が嗜めたりするシーンがある。
- 古いおんぼろのフルサイズピックアップトラックを愛用。車体は南部連合の軍旗のステッカーなどで飾られ、ダッシュボードやグローブボックス内に拳銃、もしくは座席の横か後ろにライフルや散弾銃が置かれている。
- 白い袖なしアンダーシャツ、あるいは田舎臭いデザインのTシャツ、自分で袖をカットした安物のコットンやアクリル製ノースリーブなどを着ており、下はラングラー社製のカウボーイ・ジーンズか、もしくは量販店で売っているような安物ジーンズを履いている。 太った中年以上の女性の場合はムームーを着ている場合も多い。
- 男性の帽子はビール・メーカー、トラクター・メーカー、釣具メーカー、地元の大学のチームやプロスポーツチームのロゴが入った野球帽や、狩猟用の迷彩柄やオレンジの野球帽、もしくは使い古してボロボロの麦わら製カウボーイハットを被っている。
- ヘアスタイルは野暮ったく、襟足だけを長く伸ばしたマレットが典型的であるが、兵隊風短髪もしばしば見受けられる。女性の場合はビッグヘアー(Big hair)と呼ばれる古臭いボリュームのあるヘアスタイル。中年だとカーラーをつけっぱなしの頭であることも多い。
- 男女を問わず大抵が喫煙者である。
- 基本的には酒飲みで、バドワイザーなどの国産(米国)のメジャーブランドのビールを飲んでるか、それよりも安価なブッシュ(Busch)などの場合も多い。ビール以外だと安い国産(米国産)バーボン。
- 教育の程度は低く、高校中退か、高等教育を受けていても決して知的では無い。
- 毎週日曜日は教会に必ず行く。
- 音楽の嗜好はカントリー・ミュージックや白人系のブルースロック、もしくは一時代前(80年代)のハードロックなどである。
- テレビはニュース番組や通常の情報番組などよりも、低俗なワイドショーや討論バラエティ番組、模擬裁判番組や警察密着モノなどを見ている。 (また、それらの番組に登場する素人もレッドネックやホワイト・トラッシュ(White trash)である場合が多い。)
- セックスシンボル(美男美女)の供給源。
[編集] エンターテイメント
元々は侮辱的な意味が強かったレッドネックという言葉だが、近年その田舎臭さやワイルドさを誇りとし自己のキャラクターとして主張する傾向も強くなってきている。また、逆にそのキャラクターや田舎臭さなどは、自虐的な笑いのネタなどにも頻繁に使われている。
レッドネックのかっこよさや誇りなどは、カントリーを中心とした音楽のPVや歌詞などで表現され、お笑いネタとしては ジェフ・フォックスワーシー(Jeff Foxworthy)やラリー・ザ・ケーブルガイ(Larry the Cable Guy)などが、南部訛りの英語でレッドネックに関するジョークを言う代表的なコメディアンである。
動画リンク (音楽PV)
- 『Rough and Ready』 : トレース・アドキンス(Trace Adkins)
- ひ弱な都会人の男と対比し、「レッドネックの男は女にモテる。」といったイメージを表現。
- 『Hicktown』 : ジェイソン・アルディーン(Jason Aldean)
- “Hicktown”、つまり“田舎町”の良さを歌った曲。
- 『Redneck Woman』 : グレッチェン・ウィルソン(Gretchen Wilson)
- レッドネック女性の逞しさやカッコ良さを歌ったグレッチェン・ウィルソンのデビュー曲。
- 『Redneck Yacht Club』 : クレイグ・モーガン(Craig Morgan)
- 「内陸部に住むレッドネックは、海のかわりに 湖や川でマリンスポーツやパーティーを楽しむ。」という様子を表現。
動画リンク (お笑い動画)
- Comedy Centralのライブ : ラリー・ザ・ケーブルガイ(Larry the Cable Guy)
- きつい南部訛りで、レッドネックや田舎者を売りにした漫談。
- 『Redneck Game』 : 台詞-ジェフ・フォックスワーシー(Jeff Foxworthy) 歌-アラン・ジャクソン(Alan Jackson)
- アトランタオリンピック直前、「レッドネックの天国、ジョージア州(アトランタ)でオリンピックを開いたら きっとこうなる。」というジョーク。
- 例:フェンシングを“家畜をフェンスで囲う競技”と勘違い。
- Redneck Photos : 個人投稿
- レッドネック的な写真を集めたミュージッククリップ
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記 - You might be a REDNECK IF…(クズ白人の条件) - ジェフ・フォックスワーシーの"レッドネックねた"について解説している。
- Rednecks Defined : レッドネックのサブカルチャーやユーモアを集めたサイト(英語)