レト
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レト(レートーLeto)は、ギリシア神話に登場する女神。ラテン語名はラートナー。ティタン神族のコイオスとポイベの娘で、アステリアと姉妹。ポロスとポイベの娘という説もある(ヒュギーヌス)。黒衣をまとい、神々のうちで最も柔和な女神といわれる。鶉に変身したゼウスとの間にアポロンとアルテミスを生んだが、そのためヘラの激しい嫉妬をかった。ニオベの子供自慢に腹を立て、子にニオビダイを殺させた。
[編集] アポロンとアルテミスの出産
アポロンとアルテミスの出産の経緯については諸説ある。ヘラはレトがゼウスの子を身ごもると、すべての土地にレトに出産する場所を与えてはならないと命じ、イリスとアレスに土地が命令に背かないように監視させた。あるいは太陽が一度でも照らしたことがある場所で出産してはならないと命じた。そのためレトは出産できる場所を探して放浪しなければならなかった。また別の説では、蛇のピュトンがレトを追い回したためとする。というのは予言によって、レトの産む子が自分を殺害すると知っていたからである。またヘラの命令によってティテュオスという巨人も彼女を襲ったが、ゼウスによって殺された(アポロン、アルテミスの出産後という話もある)。より特殊な説では、レトは牝狼の姿となってヒュペルボレオイの国からやってきて出産したという(アリストテレス『動物誌』)。
このような苦難に耐えて、まずオルテュギアー島でアルテミスを産み、さらにアルテミスに手を引かれてデロス島に渡りアポロンを産んだ。アルテミスはそのとき助産婦としてレトを助けた。より新しい神話ではアポロンとアルテミスはデロス島で生まれたとされ、その場合、オルテュギアー島とデロス島は同一視される。ヒュギーヌスはレトをデロス島に連れて行ったのはゼウスの命を受けた北風ボレアスで、ポセイドンが彼女を保護し、ポセイドンはヘラの言葉に違反しないように、デロス島を波で覆ったという。
こうしてレトはデロス島のキュントス山に背もたれして、シュロの木(オリーブとも)のそばでアポロンを出産した。ヘラがエイレイテュイアを引き止めていたために難産だった。この出産にはディオネ、レア、テミス、アンピトリテなどの女神が立会い、アポロンが生まれると彼女らは歓声を上げ、大地は微笑み、天空には白鳥がめぐった。アルテミスは出産時、母に苦痛を与えなかったので、産褥に苦しむ女性の守護神となった。アポロンは生まれるとピュトンを殺したとも、ヒュペルボレオイの地に運ばれたともいわれる。デロスはレトの身悶えによって海底に根を張ったとも、海底から4本の柱が延びてきて支えられたと伝えられる。
[編集] レトの起源その他
レトの起源は小アジアのカーリア地方で崇拝されていた大女神ラーダー(ラダ)に由来する。この女神はクレタ東部の古都ラトに伝わり、アポロン、アルテミスとともに信仰された。レト崇拝はその後も子供たちに付随する形で行われた。ギリシア神話最高の美女ヘレネの母レダはレトの一変形とする説もある。