ヴァンツァー
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ヴァンツァー(ヴァンダー・パンツァー、Wander Panzer、英字略WAP)とは、ゲーム『フロントミッション』に登場する架空の機動兵器の名称。
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[編集] 歴史
2020年、ECドイツ連邦共和国ヴァレンシュタイン大学のミハイル・ランドルト教授が発明したアクチュエーターが全ての始まりである。化学反応によって硬化する特殊素材を応用した可動調整装置は各方面で大きな反響を呼ぶ。
WAP自体の歴史は2025年、ランドルト教授に資金援助をしていたシュネッケ社が開発したWAW(ヴァンダー・ヴァーゲン、Wander Wagen)をもとに開発された事に端を発する。
開発当初はアクチュエーターと機体制御を行うCOMの搭載による高額な機体価格が問題視されたが、2029年にディアブルアビオニクス社が提示したMULS規格により問題は解消される。シュネッケとディアブルアビオニクスは現在の規格を戦闘用WAW専用とすることを決め、2040年参入各社との協力のもと、MULS-P(Multi Unit Link System-Panzer)規格を開発。従来の規格との互換性を保ちつつ、機体サイズを25%大型化、出力も40%向上した。また軍事利用に対応するために両肩と背中に兵装用ハードポイントを設け、両手に武器が携行できるようCOMの規格も変更された。MULS-P規格の機体には従来のWAWとの区別のためにヴァンダー・パンツァーの名称が与えられた。
※2003年のフロントミッションシリーズ再開に伴って各種設定とともにヴァンツァーの名称が下記のように変更されている。
- Wanderung Panzer → Wander Panzer
- Wanderung Wagen → Wander Wagen
ヴァンツァー・WAWなどの略称には変更が無いものの初期シリーズからのファンの中には違和感を感じると訴える人も見受けられる。
[編集] 特徴/スペック
最大の特徴であるMULS-P規格は機体を胴、腕(右/左)、脚、COMにブロック化した上で分割、規格化し、メーカーを問わず、どんな組み合わせであれ稼動することを目的としている。よって、それに則った互換によるメンテナンスの平易さ、汎用性の高さを特長とする。腕部パーツは通常兵器を装備するアクチュエーターの他に装弾数/火力に優れた武器腕への換装が可能であり、状況においては装甲車に似たセットアップも可能。また脚部パーツの交換により、険しい山岳地帯の登頂や湿地帯の横断なども可能であり、従来の兵器の枠組みに囚われない柔軟な運用が出来る。また、一部WAPを除き搭乗員は一名のみと省力化が進められており、非常時にはブロック化されたコクピットが射出される仕組みとなっているため生存率は既存兵器に比べ高められている。
反面、装甲や火力においては劣るところがあったため、大型機動兵器という新たなカテゴリの兵器を登場させることとなる。対空能力の高さから既存兵器であるヘリの対処は可能だが、平地における対戦車戦は不利。隠密戦や電撃戦は得意とするが、正面からの撃ち合いでは必ずしも優位には立てないのである。
全長6m(平均)、重量25t(平均)。天然ガスやバッテリーなどを併用した半永久機関を駆動に利用しており、長期間の単独行動も可能とする。化学反応によって急速に硬化、軟化する金属を利用したマニュピレーターを全身300箇所以上に装備しており、コンセプトである「人間と同じ動作をする機械」の役割を果たしている。
[編集] ハード面の進歩
当初WAPはジェイドメタルのゼニスをはじめとして機動性に特化した機体が多かったが、ディアブルアビオニクスのフロストの大ヒットを受け、重装甲と積載量の強化を狙った機体開発も進められていくこととなる。また、第二次ハフマン紛争以降は多様なバックパックの装備に合わせ、偵察や対電子戦に特化した仕様の機体開発が進められている。技術力と競争力の面から脱落していく企業が少なくない一方、新規参入も絶えず、そこには癒着に関する噂が絶えない。
ともあれメーカー間の開発競争は激しく、紛争以前は既存兵器の陰に隠れる形であったWAPが次第に戦略の中心に成り代わっていく様子がわかる。基本的には陸上兵器だが、2112年に到るまでには一部機種では水中戦や宇宙での活動を視野に入れたWAPの開発も進められている。
反面、取り回しの平易さから型落ち品や軍からの流出品もしくは鹵獲品等が闇市場に出回るなど問題となっている。現に主人公が正規軍もしくはそれに準ずる機関に所属している『4th』『5th』等では装備品は概ね支給品で統一されているが、他のタイトルでは必ずしもそうであるとは限らない。WAPは安易にテロリストや犯罪組織の戦力になるなど問題となっているのである。『3rd』の改造品であるが、メーカー既製品のバージョンアップを行っているのか、独自のカスタマイズの延長戦であるのかの境界が曖昧であり、技術の拡散、細分化に拍車を駆けているとも言える。
ただし、『5th』の改造であるが、軍のメカニックによってカスタマイズされた改造品がメーカー主導の新製品となっており、メーカーからの技術者が常に随行しているとしか考えられない状況となっている。よって、これは単にシステム上の都合とし論評しない。改造の意で言えば『FMO』のそれが真の意味でそれに近いと言える。
[編集] ソフト面の進歩
ソフト面の進歩はバイオニューラルデバイスなしには語れないであろう。当然ながらWAPの操縦は人間だけで出来るものではない。COMの援護による機体制御があって初めて成り立つものなのである。また、経験の蓄積によるCOM性能の向上も見逃せない。この発想を生かしたのが悪名高いそれであるが、『4th』時では優秀なパイロットの動作が既にCOMに組み込まれている体制が既に整っており、それが果たした影響はここにあるとも言える。『2nd』のフェンリルに到っては搭乗者すら必要としない。ただし、その後のWAP無人化に到る流れは主流にはなっておらず、一部警備用や訓練用に見られるのみとなっている。
以上のように『Alternative』の時代からパイロットは無視されがちであるが、必ずしも搭乗者の性能が無視されると言うわけではない。それは前述のバイオニューラルデバイスの発展形S型パイロットとイマジナリーナンバーである。この二者は従来の兵士を越える能力を有し、また異なった出発でありながら、ほぼ同じ帰結に到達しており興味深い。また、『3rd』のパーツによるスキル取得のシステムはハードとソフトの合致という点で見逃せない。
[編集] WAP対応兵器
大別して、ハンドウェポンとショルダーウェポンの二種となる。ハンドウェポンは基本的に歩兵用品を巨大化したような構造であり、機能も大差ない(当然、威力・重量は桁違いだが……)。尚、記する射程については現在『FMO』準拠とする。資料によっては同一名で複数の武器種に属するものが存在するが、併記。時系列に沿って体系付け、システムは参考程度に。
[編集] 格闘用武器
- ナックル
『2nd』より登場。主に拳部に装備するメリケンサック状の物のことを指すが、『3rd』以前ではPB及びRDのことを含む概念であるので注意。軽量であるため、鈍重なミサイラータイプの自衛用としてよく使用される。反面、有効範囲が狭く、その点で言えばあくまで牽制にしか使用できないのが難点。
『2nd』当時において、シュネッケとレオノーラ間に開発競争が起こるが、その中でパペールが突如参入。最後にトローがキーンセイバーを投入することで終局を迎えた。FMでの略称は『KN』
- 主な製品:
- パイルバンカー
『3rd』より登場(脚光を浴びる)が、従来のナックルの中に似たコンセプトで設計されたものも存在する。多くのメディアで見られるとおり、特に一撃必殺のイメージが強い。FMでの略称は『PB』
- 主な製品:
- ロッド
『1ST』より登場。形状は様々であり、剣型やトンカチ型など多様な形状が存在するが、それらは全て重量で敵を粉砕する柄付きの格闘武器であり、この項においてはそれらの総称としてロッドと呼称する。格闘用武器としては有効範囲が長く、10m程度への接近が望ましい。FMでの略称は『RD』、ただし、ローラーダッシュの略称も同様であり、混同に注意。
- 主な製品:アゴーニ・シリーズ、クルセイダー・シリーズ等
- 内臓格闘機構
『1ST』より登場したが、脆弱なマニピュレーターを格闘に使用することに関して疑問の声が大きかったようである。『3rd』以降はほぼ対人用の脅し程度の威力しか持ち合わせてはいない。一応は衝撃を緩和するよう設計されていたようだが、他の武器や格闘戦に対応した武器腕に道を譲ることとなった。
- 主な製品:ハードブロウ、レイブンクロー等
[編集] 近距離用火器
『FMO』に登場。
- 主な製品:PAP・シリーズ等
- マシンガン
制圧力に優れ、アサルト仕様武器のスタンダードとして君臨している。最大有効射程は200m~300m程度。FMでの略称は『MG』
- 主な製品:アールアッソー・シリーズ、
- ショットガン
散弾を散布する火器。近距離での命中性能が高く、また至近距離での集弾性に優れる。最大有効射程は150m~220m程度。霧島重工やパペールが開発を得意としている。FMでの略称は『SG』
- 主な製品:霧島50式・シリーズ、
- 火炎放射器
他の火器と比較して射程は短いため、機体の損壊という観点から見ればそう優れたものではない。よって、主目的は高熱によって内部のパイロットを殺傷、もしくは駆動システムの破壊にあることとされる。主に支援ポッド用のサブウェポンなどで使用された(2nd、5th)が、その特性を伸ばし、高威力を達成したタイプも存在する。
ディアブルアビオニクスが開発を得意とし、ジェイドメタル・ライマンがそれに挑むも、後に撤退。FMでの略称は『FL』
- 主な製品:
[編集] 中距離用火器
『4th』以降、中距離用火器には両手持ちが望まれるようになった。
大別して、アサルトライフル(ARF)とスナイパーライフル(SRF)の二種が存在する。それぞれ、前衛の援護を行う突撃銃と単独での支援を行う狙撃銃。WAP用としての口径は最大70~90㎜程度。前者の最大有効射程は400m~500m程度で、後者は600m~800m程度。FMでの略称は『RF』
- 主な製品:グロウタスク・シリーズ、
- 主な製品:イグチ5式・シリーズ、
- バズーカ
視認後からでも回避が間に合うなど弾速が遅いが、高威力を誇る。よって、アサルトの突撃に対する援護として接近しての使用が求められる。最大有効射程は300m~400m程度。FMでの略称は『BZ』
- 主な製品:ボア・シリーズ、グノーツ・シリーズ等
- キャノン
FMでの略称は『CN』
- 主な製品:
- ガトリングガン
FMでの略称は『GG』。多銃身のMGを指すこともあるので、中距離用として設定されている作品は現時点では『5th』と『FMO』のみ。その他の作品ではMGのカテゴリに属していると言っても過言ではない。
- 主な製品:FV・シリーズ、
- ハンドグレネード
『1ST』、『2089』、『2089-II』に登場。
- 主な製品:
[編集] 長距離用火器
- ショルダーウェポン
WAPの対電子及び回避性能は高いため、ミサイルとはいえ長距離からの援護にはセンサーによる誘導が求められるとされる。FMでの略称は『MS』
- 主な製品:
- 対空ミサイル
- 主な製品:
- ショルダーグレネード
FMでの略称は『GR』
- 主な製品:
- ロケット
対空ミサイルと同様に対空ロケットも存在する。FMでの略称は『RK』
- 主な製品:イーグレット・シリーズ、
- 肩マシンガン
- 肩キャノン
開発が難しく、各社間でコピー品が出回ったことでも知られる。
- 主な製品:
- バックウェポン
『FMA』に登場。WAW背部のハードポイントに背負った火器であるが、後のWAP時代でショルダーウェポンに道を譲ることとなる。
多くはFM世界で敬遠されがちな武器である。近年(2112年時、『3rd』)でも一部艦艇に装備されるほか、陸戦用兵器への搭載が模索されている段階で、実弾兵器の株を奪うまでにはなっていない。やはり、使用に当たっての電力消費の膨大さがネックとされる。
- 粒子砲
『3rd』において、各方面で試験が進められているが、車両や大型機動兵器への搭載に留まっており、WAP搭載することへの成算は立っていない。
- 主な製品:基本粒子砲等
- レールガン
恐ろしいことにWAP黎明期――アフリカ紛争時に既に実戦投入されていたという資料も存在する。ジェイドメタルのWAW、パペールのレールガン、ヤギサワ重工のホバーと複数の企業体による合作である三機のWAWは戦場において合体することによってキャノン砲となる31式甲型レールキャノンがそれである。
発想自体に唖然としたくなるこの試みであるが、紛争時には他に数種のビーム兵器が試作されている。ただし、その後おうにして根付かず、ヤギサワ重工の評が後に伝わっていないところを見ると、コスト面で見合ったとは到底思えない。
- 主な製品:81式電磁砲等
[編集] シールド
- 腕シールド
- 主な製品:SN・シリーズ、ファイアウォール等
- 肩シールド
- 主な製品:WS・シリーズ、
[編集] バックパック
[編集] その他周辺機器及び既存兵器との発展
- 戦車
- 主な製品:
- ヘリ
- 主な製品:ハーン・シリーズ、
- 輸送機
- 主な製品:
- 輸送車
- 主な製品:
- 支援ポッド
2093年、霧島重工が開発した歩行車両。全長はWAPの半分の3m程度で、ブロック規格も排除されている。WAPの機能の多くが省略されているが、安価さが特徴で、主に第三国に輸出されたベストセラーとなった。主に補給や整備用として運用されたが、軽量な機銃程度の装備なら可能。
- 歩兵用対WAP兵器
- 地雷
- スモーク等
- リペア用品
- パイロットスーツ
[編集] メーカー
メーカー総覧(パーツ・武器開発のみ含む)、参入順(WAPの登場に従ったおおまかな分類)に序列。
[編集] 黎明期
アフリカ紛争時、WAW開発に参入していた企業を指す。参入した企業は全15社とされる。
- ジェイドメタル
- ハイネマンインダストリィ
- ヤギサワ重工
- ディアブルアビオニクス
- シュネッケ
- センダー
[編集] 現行期
第二次ハフマン紛争時、既に参入していた企業を指すが、参入時期は不明瞭。
- レオノーラ・エンタープライズ
- ヴェルダ
- サカタインダストリィ
- ヴィンスジャパン
- ヴィンス
- フレイマン
- ボールドチャレンジ
- ホープライズ
- リムアーズ
- トロー
- バザルト
[編集] 次世代期~
第二次ハフマン紛争以降、頭角を現した企業を指す。参入時期については以前のものも存在する。
[編集] 時期不明
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本編 | 1ST - 2nd - 3rd - 4th - 5th - HISTORY |
派生 | ガンハザード - FMA - FMO - 2089 - 2089-II |
コミック | THE DRIVE - DOG LIFE & DOG STYLE |
WAP(OCU) | ゼニス - ゾラ - ザイゴート - ギザ - 90式 - 月弓 - 春陽 - 法春 - レイブン - ブルータルウルフ |
WAP(USN) | フロスト - ガスト - レクソン |
WAP(その他) | シケイダ - グリレゼクス - デスマッツ - テラーン - ヴィーザフ - 冷河 - 克黒 |
大型機動兵器 | TCK - ゴールトン - レトリーバー - シーキング - クリントン - ジウーク |
WAP企業 | JM - サカタ/イグチ - 霧島 - DA - トロー - ドミトーリ公社 |
歴史(21世紀) | アフリカ紛争 - ハフマン島 - ラーカス事件 - サカタインダストリィ事件 - E.C.ドイツ軍基地襲撃事件 |
歴史(22世紀) | アロルデシュ・クーデター - 日防軍クーデター - 沖縄海洋都市 |
用語解説 | 登場人物 - WAP - 大型機動兵器 - BD-B - フェンリル - IN - M.I.D.A.S. - ハフマン条約 |