乾湿計
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乾湿計(乾湿球湿度計)は、乾球温度と湿球温度とを測定することにより湿度と温度とを同時に測定する湿度計である。一般の温度・湿度環境での測定に適している。極端な高温・低温・低湿度・低気圧での測定では、誤差が大きく実用にならない。
2つの温度計からなり、うち1つは蒸留水で球部を常に湿らせた状態で用いる。こちらは湿球と呼ばれ、球部での水の蒸発によって温度が下げられるため、通常もう1つの温度計(乾球)よりも低い温度を示す。しかし、気温が氷点下の場合は湿球が薄い氷の層で覆われるため、乾球よりも高い温度を示すことがある。
精密測定の場合、相対湿度は乾球温度または湿球温度と乾球・湿球間の温度差と気圧とからスプルング(Adolf Sprung 1848-1909)の式で計算する。式の補正値は、各通風方式にあわせて用意されている。
e = esw- A・p(td- tw) A = 0.000662(K-1)…湿球が氷結していない時
td:乾球温度 tw:湿球温度 esw:湿球温度における飽和水蒸気圧 e:空気中の水蒸気分圧 p:気圧 A:乾湿計係数
湿球が適切な湿潤状態でないと正確な測定ができない。また、汚れた場合は糊気をなくしたガーゼに取替えが必要である。
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[編集] アウグスト乾湿計
アウグスト乾湿計は、湿球と乾球とを大気中に開放したものである。固定しての測定に用いられる。
1~2%程度の誤差が無視できる場合、気圧測定を行わずに1気圧のときの湿度算出表を用いる。
[編集] アスマン通風乾湿計
アスマン通風乾湿計は、アスマン(R.Assman)が考案したもので、通風湿球湿度計とも呼ばれる。輻射熱を防ぐクロムメッキされた金属中に湿球・乾球を内蔵し、送風機で一定速度で通風するものである。室内を移動しての環境測定・他の湿度計の校正に用いられる。
送風機が電動機駆動のものとぜんまいばね式のものとがある。一定の通風が必要なので、電池・ぜんまいの切れに注意が必要である。
測定者の体温や呼気の影響に注意しながら、3分以上一定の通風状態を維持した後読み取り、さらに1分後に読みの変化が無いことを確かめる。
簡易測定の場合、専用の通風乾湿計の湿度表で湿球温度と乾球・湿球間の温度差とで算出する。また、温湿度計算尺も用意されている。
[編集] 温度差式通風乾湿球湿度計
温度差式通風乾湿球湿度計は、熱電対で乾球部と湿球部の温度差を測定するものである。
[編集] 気象庁形通風乾湿球湿度計
気象庁形通風乾湿球湿度計は、気象庁標準の百葉箱内蔵用の乾湿計である。
[編集] 振り回し式乾湿計
振り回し式乾湿計 (sling psychrometer) は、ハンドルまたは長いひもに取り付けられた温度計を空気中で数分間回転させ使用する。屋外で移動しての気象測定に用いられる。