交響曲第2番 (諸井三郎)
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本項では諸井三郎により作曲された交響曲第2番(こうきょうきょくだいにばん)について解説する。
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[編集] 作曲の経緯
1937年8月24日から1938年1月11日にかけて作曲された。
[編集] 初演
1938年10月12日、日比谷公会堂におけるヨゼフ・ローゼンシュトック指揮による新交響楽団第195回定期演奏会において初演された。
[編集] 編成
フルート3(ピッコロ持ち替え1)、オーボエ2、コーラングレ1、クラリネット3(バス・クラリネット持ち替え1)、ファゴット3(コントラファゴット持ち替え1)、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、弦楽5部。
[編集] 作品の内容
[編集] 第1楽章 Allegro con spirito
ニ調、4分の4拍子、ソナタ形式。第1主題が弦楽器に力強く現れ、フガートの形をとる。全合奏でこの主題が確保されると、オーボエと弱音器つきトランペットにゆったりとして憂いを含んだ第2主題が現れる。木管に第1主題がストレッタの形をとって姿を見せ、第2主題が強奏されて展開部に入る。展開部の前半は第1主題反行形を主に取り扱い、後半は金管による第2主題の展開に重きをおく。やがて第1主題冒頭が弦に繰り返し現れ、全合奏による第1主題になだれ込む。第2主題も金管に現れ、2小節のバス・オスティナートの上に主題の各部が対位法的に組み合わされ、壮大な結尾を形成しつつニ短調に終止する。
[編集] 第2楽章 Andante quasi adagio
ハ調、ABABAの複合3部形式。Aは4分の3拍子でフルートとピッコロの高音域で開始され、コーラングレとファゴットによる楽想を導きだす。金管を加えてやや変化を見せると、4分の4拍子のBに入り、チェロが表情豊かな旋律を奏する。このあとテンポの変化を含みながらABともに再現され、Aによる短いコーダで終わる。
[編集] 第3楽章 Allegro maestoso e risoluto
ニ調、ABAの3部形式。Aは4分の6拍子で、低音部の力強い歩みで始まる。この主題は様々な要素を加えながらフガートの形をとり、クライマックスでR・シュトラウスの「エレクトラ」冒頭を思わせる主題の再現となり、ひっそりとAを閉じる。続くBは4分の3拍子、Allegro con brioで、それ自体ソナタ形式をとる。このことからこの楽章は大掛かりな前奏と後奏を持つソナタ形式とも解釈できる。ティンパニと低音弦のリズムに乗ってクラリネットに第2楽章のA部分の主題の変形である第1主題が提示される。第2主題は第1楽章第1主題と同じ音程関係を持つゆったりした旋律で、このB部分において交響曲全体の有機的統一が図られている。展開部のあと第2主題、第1主題の順で再現が行われ、A部分が復帰してくる。楽章冒頭とは異なり、いきなりフガート部分から開始される。コーダはB部分の第1主題が姿を見せるが、A部分の冒頭のモチーフが全合奏で奏され、力強く二音を強奏して長大なこの楽章の終結となる。
この曲も、交響曲第3番同様ブルックナーやフランクの影響を見せているが、全体を短調が支配し、瞑想的な部分も数多くある。またフガートの形による展開が特徴的で、諸井の管弦楽法、対位法、循環主題の用法の能力を結集した傑作といえよう。