オーボエ
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オーボエ
オーボエ | ||||||||||
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別称:オーボー、オーボワ | ||||||||||
各言語での名称 | ||||||||||
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分類 | ||||||||||
木管楽器、ダブルリード族 | ||||||||||
音域 | ||||||||||
実音記譜 | ||||||||||
関連楽器 | ||||||||||
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演奏者 | ||||||||||
後述 |
オーボエは、木管楽器の一つで、上下に組み合わされた2枚のリードによって音を出すダブルリード式である(複簧管楽器)。オーボーともいう。フランス語のhaut bois(高い木(木管楽器))が語源とされる。
古代ギリシャの伝説においては、マルシュアスが吹いた縦笛アウロスが2枚リードの楽器であったと考えられている(笛がギリシャ社会に与えた影響についてはアウロス参照)。
目次 |
[編集] 歴史
オーボエの直接の起源としては、軍隊など戸外で使用していたショームが木管楽器製作メーカーのオトテール一族によって室内音楽用に改良され、17世紀頃誕生したと言われている。オランダの管楽器製作家ハッカの工房からバロックオーボエとその前身のショームとの中間的な楽器が発見され、オーボエの誕生にハッカが関与したのではないかと言う説もある。 かつて弦楽器だけだったオーケストラに初めて入った管楽器であり、高音部を担当している。クラシック音楽においてはしばしばソロや主旋律を演奏し、演奏前のチューニングでは先ずオーボエがAの音を発するなど欠かせない存在であるが、逆にそれ以外のジャンルの音楽(特に軽音楽)ではあまり用いられない。また、吹奏楽のスコアにはオーボエパートが記載されているものの、多くの場合それが欠如していても演奏に支障が無いよう編曲されている。(オーボエに限らずダブルリードの楽器はおしなべて高価なうえ、演奏法の習得やリード製作などにおいて専門的な技術を要求される。) バロック期を通してオーボエのボアは細くなる様に改良され、音域は上へ拡張していく。初期クラシック期にはまだキーは2個であった。
[編集] バロックオーボエ音域、構造など
音域は中央ハから2オクターブ上の二まで約2オクターブあるが、モデルやリードによってより高音をだせる。 バロックオーボエの主な構造上の特徴は以下である。
- リードの差し込み口が逆円錐形をしている
- 下管からベルへの内径が段差を経て広がっている点
- 内径はモダンよりも太い点
- キーは2から3個(変ホの為に2個のキーが本体の左右に付いているものもある)
- 指穴が管体に対して直角でなく角度をもって開けられている点
- 指穴にダブルホールが用いられている点
- 内径に飛び出しているベルのリム
現代のオーボエでは用いられないが、ベルに柔らかい紙や布、羊毛等を詰めて音量をミュートして演奏する方法がある。
[編集] バロックリード
当時、リードは楽器を製作する工房に注文されていたケースもある。現代のバロックオーボエ奏者はモダンオーボエやイングリッシュホルンのリード用チューブをつなげたり、真鍮板から切り出して自作したりしている。 モデルによって合うリードのサイズがかなり異なり、チューブの長さもスクレープのタイプもそれぞれである。 古楽器特有のクロスフィンガリングのため比較的広い幅のリードを用いる。 楽器への差し込みは糸を巻いて調整する。
[編集] モダンオーボエ音域、構造など
音域は中央ハのすぐ下の変ロから中央ハから2オクターブ上のイまで約3オクターブあるが、奏者達の研究によっては最高音を変ロとされているオーボエもある。最高音の数音が発音できるか否かは奏者の力量、リードの質による。また音の組み合わせに制限はあるがハーモニックス、二重音、三重音、多重音の発音が可能である。グリッサンド、フラッタリング、弱音奏法(これもハーモニクスと呼ばれる)、循環呼吸法による切れ目ない演奏、音色を変化させるフィンガリングなど、現代奏法にも広く適応する。 音色を変化させるフィンガリング(timbre fingering)では1つの音程について20種類程のフィンガリングが存在することもある。著名な現代曲ではいくつかの音についてこのフィンガリングが使われている。
オーケストラや奏者によるお国柄の濃い楽器であり、地方毎に独特のシステムのオーボエが用いられていた歴史がある。 現代ではコンセルヴァトワール式と呼ばれるキーシステムのものが一般的である。コンセルヴァトワール式にはオクターブキーの機構によってセミオートマチックとフルオートマチックがある。この違いは音色にも現れ、ドイツ趣味の奏者はフルオートマチックを使用していることが多い。セミオートマチックは1stオクターブキーと2ndオクターブキーの切り替えの時点で1stオクターブキーが自動的に閉じる機構になっている。フルオートマチックはこれに加えて2ndオクターブキーが自動的に開き、奏者による操作を必要としない。
各キーにもオープン式とカバー式のものがあり、これも音色に影響する。現在はカバードキーが多い。オーボエの場合カバードキーといってもキーの中央に穴が開いている。フルートではリングキーと呼ばれる部類に入るのであろうがオーボエではこれをカバードキーと呼んでいる。オープン式の場合は、現代のクラリネットの様にリングのみのキーを装備している。
その他、ウィーン・フィルで使われているウィーン式(現在は日本のYAMAHAが製作)、イギリスを中心に使われているサムプレート式がある。サムプレート式は元々コンセルヴァトワール式の1世代前のキーシステムであるが、現在ではハワース社製のようにコンセルヴァトワール式にキーを追加したものもある。 現在ではほとんど使われないが、ドイツ、ロシアで用いられたジャーマン式もあった。
[編集] モダンリード
発音体であるリードは奏者によって製作されている。この楽器を学ぶものはリード製作技術の習得も必要である。 リードにもお国柄、使用している楽器のメーカー、またそのモデルによるスタイルの違いが見られる。
アメリカではロングスクレープと呼ばれるリード木部全体(といっても5分の4から3分の2程度)が、削られているものが主流である。ヨーロッパではショートスクレープと呼ばれるリード木部全体の半分以下の部分が削られているものが主流である。
リードの設計によって全音域での音程バランス、第1、第2オクターブの音程バランス、ピッチ、高音の発音の容易さ、音色の変化の幅、アーティキュレーションの容易さ、その変化の幅、アンブシュールへの負担など演奏について多くの影響が及ぼされる。
俗にオーボエ奏者の実力は、本人2割リード8割といわれる所以であろう。
[編集] リード制作に必要な道具
- リード材
- 「道具」ではないが、これがなければ始まらない。加工の度合いにより、丸材、かまぼこ型、舟型と呼称が変わる。リード制作入門者は舟型から入ることが多い。
- チューブ
- これまた「道具」ではない。先端が楕円型の元が円錐形の金属管(45mm~48mm)にコルクを巻いたもの。コルクを巻くのは、楽器本体に差し込むためである。最近は、金属管にゴムを巻いた製品も登場した。
- リードナイフ
- さて、いよいよ道具である。
- 楽器店で「リードナイフ」と注文すればよいが、切れ味がよく、自分の手になじみ、使いやすければ他のものでもよい。カッターナイフを使うものもいる。右利き用、左利き用とある。鰻を捌くための包丁がよく似た大きさで研ぎやすい。この場合右利きの製作者は左利き用を使用する。荒削り用として切り出しナイフを使うと仕上げのためにナイフを研ぎ直さずに済む。
- カッティング・ブロック
- リード制作の過程で使用。表がやや球面状で、直径約4cm程度、高さ1~2cm程度の黒檀製のもの。
- リードの先端をナイフで切り落とす際のまな板のようなもの。
- プラーク
- 先端をカットした後、リードの先端から差し込む。リードを削っていく際、リードが割れないようにするためのもの。下敷きの意味合いがある。舟形と呼ばれる上から見た形が紡錘型のものと、底辺の短い二等辺三角形の形をしているものがある。サイドを削るためには二等辺三角形型が良い。
- 糸
- リード材をチューブに巻き付ける際に使用。材質は絹製、ナイロン製等。手芸用に販売されているポリエステル製でも良い。絹製は振動を押さえることが少なく、モダンテックニックを駆使する際に都合が良い。ナイロン、ポリエステル製はやや振動を押さえるのでその分リードを削ってやる必要がある。色は各種あるが、好みに応じて使う。巻き方は少々こつがいる。
- シェーパー
- リード材を、かまぼこ型から舟型に加工する際に使用。削り幅の違いによって音に影響が出てくるため、数種類が販売されている。好み、楽器との相性によって選択する。
- ガウジングマシン
- リード材を丸材からかまぼこ型にする際に使用。丸材を3等分の扇形にカットし、リード材の内側を適正な厚さまで削り落とす。アマチュアでここから作業する人はごく少数である。リード材を固定するベッドの直径はオーボエ用としては10mmと11mmの2種類が多い。フレンチ、アメリカンタイプのリードを製作する場合は11mm、ジャーマンタイプを製作する場合は10mmが適している。
- メイキングマシン
- 糸で巻いたリード材を、手ではなく機械で削るためのもの。あくまで補助的な機械であり、最後の仕上げは手作業となる。数十万円するので、プロでも必ず持っているというわけではない。
- 針金
- 完成したリードに巻き付けて、リードの開き具合を調整する。主にショートスクレープタイプのリードに使用。たまにアメリカンタイプに使う人もいる。どうしても響きを抑える効果を持ちやすいため、使用は好みによる(必須ではない)。針金を用いることで(無理やり)開き具合を調整するというよりは、別途手などで調整した結果の状態を保つように使うのがよりよいとも言われる。一般的に0.3mmの真鍮製が使われている。
- フィッシュスキン
- 完成したリードに巻き付けて、息漏れを防ぐためのもの。本来息漏れはない方が望ましいが、材料の削り具合や制作者の力量により、制作過程でどうしても息漏れが発生してしまうことがある。従って、これも使用は任意である。リードに生じたトラブルの応急処置としても使われることがある。
水道管工事に使われる防水テープを使う場合もある。これは固定するために接着材を使用しないので便利。フィッシュスキンよりリードの振動を押さえる傾向がある。
- 耐水ペーパー
- リード材の内側を磨いたり、シェーパーで型取ったケーンの仕上げに、リードのティップを整えたりと使用範囲は多い。#1000をよく使用している。
[編集] その他の道具
- 水入れ
- 演奏中のリードは乾燥してしまうと発音などに影響を与えるため、リードは湿らせておかなくてはならない。そのための水を入れておくためのもの。写真のフィルムケースや、風邪薬の空き瓶などを利用することが多い。
- 演奏後は、カビ防止のため、逆に乾燥させておく。
[編集] 種類
オーボエ属の楽器としては、オーボエの他に
- オーボエ・ミュゼット
- オーボエ・ダモーレ
- イングリッシュホルン(コーラングレ)
- バリトンオーボエ(バスオーボエ、ヘッケルフォーン)
などがある。また、ファゴット族のファゴットやコントラファゴットもダブルリード式の楽器であり、同じ発音原理を持ち、音響学的にみて非常に近い楽器である。
オーケストラで使われることはないが、チャルメラ、篳篥も、複簧管楽器である。
[編集] 主なメーカー
- ロレー (フランス)
- マリゴ (フランス)
- ビュッフェ・クランポン (フランス)
- リグータ (フランス)
- ピュヒナー (ドイツ)
- シュプリンガー (ドイツ)
- ハワース (イギリス)
- ラウビン (アメリカ)
- ヤマハ (日本)
- ムジーク・ヨーゼフ (日本)
- 主要な歴史的銘柄
- オトテール(Hotteterre) フランス
- デンナー(Denner) ドイツ・ニュルンベルク
- アイヒェントプフ(Eichentopf) ドイツ・ライプツィヒ
- ステンズビー(Stanesby) イギリス
[編集] オーボエが活躍する楽曲
数々のエッセイでも知られるNHK交響楽団の茂木大輔は、「オーボエ奏者にとっての3大交響曲は、ベートーヴェンの「英雄」、ブラームスの第1番、チャイコフスキーの第4番である」という趣旨のことを著書で述べている。
[編集] オーボエ協奏曲
オーボエ協奏曲を参照。
[編集] 管弦楽曲、オペラ、バレエなど
- ヨハン・ゼバスティアン・バッハ:管弦楽組曲第1番、他多数の教会カンタータ
- ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」(第2楽章 葬送行進曲主題、第4楽章 終結部)
- ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」(第1楽章再現部のソロ)
- ロッシーニ:歌劇「絹のはしご」序曲(第1主題)
- ブルックナー:交響曲第5番(第2楽章)
- ブラームス:交響曲第1番(第2楽章)
- ブラームス:交響曲第2番(第3楽章)
- ボロディン:歌劇「イーゴリ公」よりだったん人の踊り オーボエが耳になじみやすいメロディーを奏でた後、引き続きコーラングレが後を受け継ぐ。
- ボロディン:交響曲第2番
- ブラームス:ヴァイオリン協奏曲(第2楽章冒頭にオーボエが美しい主題を奏でる)
- ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(第2楽章トリオのソロ。(冒頭のソロはコーラングレ) )
- マーラー:交響曲第4番(第3楽章)
- サン=サーンス:「サムソンとデリラ」(バッカナール)
- イベール:交響組曲「寄港地」(第2楽章チュニスからネフタ)
- チャイコフスキー:交響曲第4番(第2楽章冒頭のソロ)
- チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」(最も有名な第2幕"情景"冒頭のソロ)
- モーリス・ラヴェル:組曲「クープランの墓」(作曲者自身によるピアノ曲からの管弦楽への編曲)
- リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
- リヒャルト・シュトラウス:楽劇「サロメ」(サロメの踊り~7つのヴェール~)
- ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲
[編集] 室内楽曲
[編集] 独奏曲
[編集] 有名なオーボエ奏者
- ピエール・ピエルロ
- ハインツ・ホリガー
- ヘルムート・ヴィンシャーマン
- レオン・グーセンス
- ローター・コッホ
- モーリス・ブルグ
- レイ・スティル
- ジョン・デ・ランシー
- ギュンター・パッシン
- ヴィンフリード・リーバーマン
- ハンスイェルク・シェレンベルガー
- トーマス・インデアミューレ
- フランソワ・ルルー
- ジョナサン・ケリー
- インゴ・ゴリツキ
- ラヨシュ・レンチェシュ
- アルブレヒト・マイヤー
- 宮本文昭
- 茂木大輔
- 寺島陽介
- 古部賢一
[編集] 参考文献
- Peter Veale『The Techniques of Oboe Playing』Barenreiter、1994年、ISBN 3761812108
- Heinz Holliger『PRO MUSICA NOVA』Breitkopf & Hartel、1980年
- David A. Ledet『Oboe Reed Style』Indiana University Press、1981年、ISBN 0253378915
- エヴリン・ロスウェル、西岡信雄訳『オーボエのテクニック』音楽之友社、1965年5月10日、ISBN 427614552X
- Bruce Haynes『The Eloquent oboe』Oxford University Press、2001年、ISBN 019816646X