交響曲 (ロット)
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交響曲ホ長調は、オーストリアの作曲家、ハンス・ロットの作品。
目次 |
[編集] 作曲の経緯
1878年、ウィーン音楽院作曲コンクール応募作品としてまず第1楽章が完成されたが、落選。その後2楽章から4楽章が作曲され、1880年に全曲が完成した。譜面は長らくオーストリア国立図書館に眠っていたが、1984年、ロット生誕100年を契機にイギリスの音楽学者であるポール・バンクスが草稿やパート譜を精査してこの作品をよみがえらせた。
[編集] 初演
1989年3月、ゲルハルト・ザムエル指揮、シンシナティ・フィルハーモニア管弦楽団によって初演。日本初演は2004年11月、沼尻竜典指揮、日本フィルハーモニー交響楽団によって行われた。
[編集] 作品の内容
[編集] 第1楽章 Alla breve
ホ長調、2分の2拍子、ソナタ形式。冒頭、木管と弦の静かな和音の上でトランペットが厳かに第1主題を吹奏する。この主題は大きな盛り上がりを見せ、主音(ホ音)から導音に下って、2オクターヴ上昇して主和音に到達し、最初の頂点となる。ティンパニの静かなトレモロの上で木管に揺れ動くようなゆったりした第2主題が現れる。展開部を経て、再現部に突入すると同時に弦楽器に3連符が登場し、提示部同様の頂点を経て、力強い終結となる。演奏時間約9分。
[編集] 第2楽章 Sehr langsam
イ長調、4分の4拍子。木管と弦楽器の和音で始まり、弦楽器が暖かみのある主題を奏する。金管の厳かなコラール風の楽句を挟みながら弦楽を主体に音楽は進み、幾度か全合奏の頂点を築き、ゆったりと静かに終わる。演奏時間約11分。
[編集] 第3楽章 Frisch und lebhaft
ニ長調、4分の3拍子。ホルンの五度音形に続いてトライアングルが鳴り、低弦が動き回る、マーラーを彷彿とさせる音楽で始まる。レントラー風になったり、爆発したり、ロマンティックなソロを挟んだりしながら次第に力を落とし、弦楽合奏で暗いゆっくりした旋律が奏される。この部分は短いトリオであると解釈できる。ティンパニのロールのクレッシェンドに導かれて冒頭が再現され、再びスケルツォとなる。幾度も全合奏とソロが交代し、金管群が活躍する。弦楽器が忙しく動き回る上でホルンが五度音形を繰り返し、レントラー風の旋律が現れ、凄まじい盛り上がりの頂点で曲は唐突に終わる。演奏時間約12分。
[編集] 第4楽章 Sehr langsam-Belebt
ホ短調→ホ長調、4分の4拍子。低弦のピッツィカートと木管で静かに始まる。スケルツォの再現をはさんで再びピツィカートとなり、金管でコラールが奏される。ホルンとオーボエがソロで悲しげな旋律を吹き、次第に厚みを増してゆく。弦楽器も加わって、強烈な頂点となる。弦のトレモロの上で金管が叫ぶ。五度音形が弦の3連符で繰り返され、次第に力を落とし、オーボエのソロに、弦楽器が答える。木管の3連符に導かれるように主部に入り、低弦のピッツィカートの上でゆったりとした主題が提示される。この主題はブラームスの交響曲第1番の第4楽章主部の主題に酷似している。全合奏で堂々とこの主題は繰り返される。弦楽器が忙しく上下し、金管群が鳴り渡る。最初の頂点が終わると、ホルンが主題を吹き鳴らし、弦楽器が追いかける形で主題がフーガ的に展開されてゆく。短調に転じてフーガは続けられ、再び長調に戻ってくる。金管が大活躍する。静かになったかと思うや全合奏で高らかに主題が鳴り響き、第1楽章第1主題後半に流れ込み、3連符も登場し、第1楽章の音階を上昇する音形の再現が行われ、最後の頂点を形成する。次第に力を減じて、弦楽器の波のような音形の上で木管の和音が響き、金管も加わって、静かな終結となる。演奏時間約22分。
[編集] 作風
金管群のコラールに代表されるように、師であるブルックナーの影響は濃厚である。ただし、ブルックナーのような重々しさは薄く、オーケストレーションもやや薄めである。そのため師匠より壮麗さや壮大さではやや劣るが、透明感のある響きを持っている。第1楽章の主題が様々な形で全体に関わって来て、最後の頂点で鳴り渡るところはブルックナー譲りといえよう。スケルツォはマーラーを先取りしたような音楽である。実際にマーラーはこの作品を研究し、大いに参考にしつつ交響曲第1番を書いたとのことである(しかし、指揮者としてはこの曲を取り上げたことは一度もない)。楽器編成上の特徴は、トライアングルがほぼ全曲を通して活躍することである。トライアングルはあたかもオルガンの持続音のような効果を与える一方で、使い過ぎの感もある。金管、特にトランペットの扱いに優れている反面、木管は今ひとつである。この作品は、ブルックナーとマーラーを一つの線で繋ぐ作品として近年再評価が進んでおり、演奏の機会も増え、新たな交響曲のレパートリーの一つとして広く知られつつある。