六甲中学校・高等学校
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六甲中学校・高等学校は、兵庫県神戸市灘区のカトリック修道会のイエズス会を母体をする中高一貫教育の私立男子校の一つ。学校法人六甲学院が経営している。
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[編集] 概要
全学年とも4クラス約190名で構成され、全校生徒数は中高併せて約1,100人。中学入試のみで、高校入試は行われない(昭和50年代に数年間実施されたこともあったが、実績はあまり上がらなかった)。阪急電車六甲駅から20分ほど坂を上ったところにある。
現代の教育事情や社会情勢からすると古風ととれる面を多々持ち合わせている。2・3限の授業の間に全員上半身裸でグラウンドを走る中間体操や、短パン1枚で行うトイレ掃除(便番)などがある。なお「中間体操」は、紫外線が生徒の健康に悪影響を与えることを考慮して、6月上旬にある体育祭後から9月下旬の文化祭終了までの期間は中止される。ほとんどの掃除は中3から高3の各クラスから選出された訓育生、クラス三役、高2の指導員(中1を1学期の間指導する役員で教師によりえらばれる。クラスに1名ずつ、計4名いる)が監督をし、許可をもらわないと終了することができない。また、体育祭で約1時間にわたって炎天下の中行われる、上半身裸、裸足での総行進や耳と冬制服のカラーに髪の毛がかかってはいけないという基準の頭髪検査が有名。頭髪検査は2006年度辺りに、基準が厳しくなった。また、罰則も追加されたので、実際に先輩にお仕置きを受けた者も多い。また、掃除や生活指導など、さまざまな事を主に生徒が生徒へ指導する。つまり、先輩が後輩へ生徒としての自覚や責任などを教え込む。そのため、先輩が後輩を叱ったり、あるいはお仕置きすることもある。特に、訓育に関して厳しい考えを持つ生徒は、本気で怒ることが多い。
また、Man for Othersという教育理念のもとで様々な宗教教育や社会奉仕活動が行われている。
- インド募金:月1回、一人200円程度を募金し、インドのダミアン社会福祉センターへ送金する。
- 社会奉仕作業:夏期休暇中に1日以上の労働奉仕が行われる。(中3~高2)
- カト研の日:月1回、放課後に宗教的な話を聞く日。講演会が行われることもある。
- クリスマスメッセージ:2学期終業式に先立って行われる。クリスマスの意義について考えることを目的としている。
- 生命について考える日:1月17日(阪神・淡路大震災)頃に、生命について考える講演会が行われる。
- 赤い羽根共同募金:10月はじめの土日に、街頭募金に参加する。(中1・中2)
かつては、偏差値評価において「灘・甲陽・六甲」などと、関西圏のトップ3として長年に渡って評されて来たが、近年では、中学受験塾などで発表される偏差値からすると、大阪星光学院・東大寺学園・洛南・洛星・西大和など他の多くの進学校に抜かれている。
この現状に対しての教員の意識は様々である。
問題視をする立場 | 問題視をしない立場 |
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TOP3時代に比べ志願者が減っている。 | 実質倍率は一定である |
倍率が一定でも辞退者が多い。 | |
入試は相対評価なので、全体的な質の低下には対応できない | 入試で選抜している以上生徒の質は担保されている。 |
全人教育の宣伝のためには成績向上は前提条件 | 数値化になじまない全人教育こそが目標。成績は全人教育の成果の一分野。 |
全体としては、問題視の立場を取る教員よりも問題視を取らない立場を取る教員が、特に運営責任教員(校長・教頭・教務部長・宗教部・理事長)に多く、また、特にどちらの立場を主張するわけでもない教員も非常に多いので(立場が不明確な教員が多い点は、現場教員の職場に対する意識の低迷として、前者の立場は問題視している)、学校全体の運営方針としては後者の立場に偏っている、とされる。その一例として、前者の立場からは以下のような事例が否定的に指摘される。
- 六甲のプロファイルと称する教育大綱には、抽象的全人的な理念のみが掲げられ、狭い意味での学力に対する記述に欠ける点
- 授業日数の削減を伴う週休二日制の導入と同時に、宗教活動を除く一切の課外活動(クラブだけではなく掃除等も含む)を禁止する日を定めた点
- 私立学校であるにもかかわらず例年にわたり生徒・保護者共に批判の激しい教員に対して、当該教員の自立的授業運営が全人教育の観点からは不合理とまでは言えず、何らの処罰・戒告がなされない点
- 大学が併設されていないため、受験勉強を前提とするカリキュラムならびに受験成績による学校の宣伝効果を求める必要性があるにもかかわらず、高3まで宗教が必修であり、週休二日制の導入によって他科目が削減されたとしてもその地位は保護された点
今後の学校運営の問題としては、学校独自の色彩と受験に必要な学力との両立を、理念の表明と共に結果の表明も行うことによって対外的にアピールする必要があると考えられる。 上記事例は、それ自体では単純に批判に晒されるべき者ではなく、保護者の求める重要な要素である成績向上要求と抵触せず、寧ろ要求達成に有用であることを示すべき事例といえる。その意味では、上記事例の存在は、六甲学院の良き色彩を生み出す可能性を持つものであるとも言える。
授業形態の特徴としては、高3の英・数において上級・中級・初級の3クラスが同時に開講されており、異なったテキストで異なった教師が教鞭を取る。それらから自分にあったひとつを選択する。
近年の傾向としては、受験勉強に関して主体性が不足した生徒が増加し、結果としてダブルスクール率が上昇している。ただし、学校で与えられる課題・テキスト自体は非常にレベルが高いため、よほど個別具体的な大学別対策を要しない限りは、広く一般的に大学入試に対応しうる力をつけるだけのお膳たてはしてもらえる。要は本人がそれをどう生かすか、また生かせるようなきっかけを一定程度提供してもらえるかが問題であり、この意味では進学率や授業に関するクレームの帰責は必ずしも学校だけに求められるものではなく、家庭や本人によるところもあるといえる。
近年の顕著な特徴に、極めて優秀な上位層と極端に悪い下位層の二極分解がある。その結果として、かつては言われていた「六甲ならば普通にしていれば神戸大は通る」という常識はあまり通用しなくなった。代わりに、上位は東京大学理科三類にも現役で通る生徒が出た反面で、下位層だけではなく中位層も浪人をする場合がある。
二極分解は一見してわかる全体平均点の大きな変動は生じさせない。しかし、それ故に漸近的な下降に気づきにくく、手遅れとなる危険性も秘めている。
ちなみに学校で提供されるテキスト(英語の『Progress in English』、『六甲の英語』)は京都大学を意識して作られているようだ。作成したのは、『Progress in English』がRobert Flynn氏(イエズス会神父、元教員)、『六甲の英語』が埜藤氏(英語科教員)。以前は、『Progress in English』を中学高校全学年で使用していたが、近年では中学に限られている。『Progress in English』は、同志社香里高校など学外での採用実績もある。
運営母体がイエズス会であるため海外から関係者が視察に訪れることもある。2004年には、バチカン市国の日本で言うところの文部大臣が視察に訪れている。同窓会として六甲伯友会がある。
[編集] 学校行事
- 4月:入校訓練(中1、高1)、入学式、始業式
- 5月:健康の日、中間考査
- 6月:体育祭
- 7月:期末考査、終業式、久美浜合宿(中1)、立山合宿(中3)、社会奉仕作業(中3~高2)
- 9月:始業式、文化祭(中1~高2)
- 10月:校外学習(中1~高2)、中間考査
- 11月:強歩大会(中1~高2)
- 12月:学期末考査、終業式
- 1月:スキー合宿(中2)、始業式、生命について考える日、中学校入学試験
- 2月:高3卒業式、研修旅行(高1)
- 3月:学年末考査、終業式、中3卒業式
[編集] 大学合格実績
例年生徒全体の四割前後を東大、京大、阪大、神大等の国立大学に送り出す。(早慶等私学は除く。京大が最多。) 2005年度の京大合格者数は全国22位。
[編集] 教育理念
- Man for Others (他人のための人間)
- イエズス会の教育理念であり、他の姉妹校とも共通。
[編集] 出身者
[編集] 研究者
- 五百旗頭真 - 防衛大学校校長(前神戸大学法学部教授、現名誉教授)
- 五百籏頭薫 - 東京都立大学助教授(首都大学東京准教授)
- 渡邊頼純 - 慶応義塾大学教授、外務省参与
- 大芝亮 - 一橋大学教授、国際政治学者
- 北徹 - 京都大学医学部教授、副総長
[編集] 財界人
[編集] 文化人
- 大森一樹 - 映画監督
- 黒沢清 - 映画監督
- 大谷亮介 - 俳優
- 尾崎将也 - 脚本家
- 川原洋二 - ミュージシャン(Sound Schedule)
- 山田ルイ53世(髭男爵) - お笑い芸人
- 平尚明 - ギタリスト
[編集] 姉妹校
[編集] 外部リンク
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