冷夏
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冷夏(れいか)とは、平年に比べて気温の低い夏のことである。気象庁による3階級表現で6月から9月の平均気温が「低い」に該当した場合の夏をいう。冷夏による影響は農作物の生産に強くあらわれ、農産品の不足や価格高騰を引き起こす。過去には飢饉を起こした例もあるが、先進国では農業技術の発達に伴い大規模な飢饉は発生しなくなった。
以下は特に断り書きのない限り、日本での事例について記述する。
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冷夏の原因
東北地方の冷夏は、やませと呼ばれるオホーツク海気団からの北東の冷たい風が吹くことによって起こる。日本全体を見ると、太平洋高気圧の勢力が弱く、梅雨前線が長く日本列島にとどまった年は冷夏となる傾向にある。また、世界規模で異常気象を引き起こすエルニーニョ現象の発生年は冷夏となる傾向が強い。
また太陽の黒点活動の周期が冷夏の発生と一致するとの説もある。
人の生活との関係
その負の影響の最大は、前述したが農業に現れる。農業関係者以外への影響は、農作物の価格高騰・品不足などで現れる(野菜などでは夏のうちに、米などは秋以降~翌年の夏まで)。
それ以外では、日本の夏の行事や生活習慣の多くが梅雨明け後の晴天を前提として行われることなどから、冷夏は多くの場合それへの支障とされる。衣料品の売り上げ減などがそれである。
冷夏自体は熱中症・日射病などの夏の暑さによる健康障害を緩和する効果があるが、夏かぜなどのデメリットもある。日本の場合、冷夏は通常7月・8月の日照不足や長雨を伴うことが多い(ただし冷夏の年=水害の多い・降雨量の多い年とは限らない)ので、この意味でも嫌われる。特に北海道や東北地方においては、冬が長く寒冷であることや、低温の度合いが関東以西より大きいことなどもあいまって、直接の利害関係を持つ農業関係者以外からも強く忌避される。
関東地方以西でも時折、冷夏は見られる。低温の度合いは北海道や東北地方よりも概して小さく、冷夏でないときには夏は暑熱であることから歓迎する人もあるが、大勢は冷夏には否定的である。
ただし、映画興行など、夏のインドアレジャーには追い風となる傾向も見られる。
過去の主な冷夏
- 1993年や2003年と異なり、米や夏野菜の極度の不足は見られなかったが、7月末~8月中旬にかけて冷夏の傾向となり、農作物の顕著な減収もみられた。
- 1988年(昭和63年)
- 1993年や2003年と異なり、米や夏野菜の極度の不足は見られなかったが、7月末~8月にかけて冷夏・長雨の傾向となり、農作物の顕著な減収や、海水浴場などの観光客減少などの影響が出た。
- この年は記録的な冷夏により、「1993年米騒動」といわれる米不足になった。8月になっても梅雨前線が日本列島に停滞し、豪雨災害と関東地方以北では低温が顕著だった。また南西諸島を除く地域で梅雨明けが特定されない異常な夏であった。
- 2003年(平成15年)
- 米や夏野菜が不足した。年末にかけて野菜は例年の2倍を越える品も出るほど高騰したが、米は備蓄米などが効果を挙げて1993年ほどの影響は出なかった。
- その他