分断国家
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分断国家(ぶんだんこっか)とは、通常、一つの国民国家もしくは地域が、第二次世界大戦後の冷戦構造のもと、社会主義陣営と自由主義陣営の縄張り争いに巻き込まれ、二大陣営のそれぞれに帰属するふたつの国家への分裂を余儀なくされた状態を指す。分裂国家(ぶんれつこっか)ともいう。
現在の存在する具体例としては、朝鮮半島の中に朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国とが存在している状況、中華人民共和国と中華民国とが存在している状況もまた分断国家の典型例とされる。
かつてはベトナムにおいてはベトナム民主共和国とベトナム共和国、ドイツにおいてはドイツ民主共和国とドイツ連邦共和国、などがあったが、ベトナムは1976年のベトナム戦争での北側の勝利によって、ドイツは1990年のドイツ再統一による西側による編入によって分断状態が終結した。
なお、イエメンもかつては北イエメンと南イエメンに別れた分断国家であったがこの国の分断は冷戦構造によるものではなく、帝国主義国同士の縄張り争いから生じたものである。北イエメンはオスマン帝国、南イエメンはイギリスの勢力下におかれ、それぞれ独立を果たした後、1990年に統一された。
国際的にはトルコ以外承認していない北キプロス・トルコ共和国とキプロス共和国の関係も、分裂状態であることから分断国家と言えなくはない。とはいえ、キプロスはもともとギリシャ系住民とトルコ系住民の混在していた国家であり、キプロスの現状はトルコ系住民の独立運動の結果ともいえるため、分断国家に含まれないとする意見もある。同様の例としてはアイルランド共和国とイギリス領である北アイルランドが挙げられる。
モロッコからイラクに至るアラブ諸国の並立や、モンゴル民族の居住地域がモンゴル国とロシア、中国に分断されている状況、朝鮮民族が北朝鮮に隣接する中国領の延辺朝鮮族自治州と長白朝鮮族自治県などにも分布している状況も「分断国家」には含まれない。
また、チェコスロバキアは、チェコ共和国とスロバキア共和国に分裂したが、これは両国が連邦制を採用して成立していた連邦国家を解消したもので、分断国家には含まれない。
第二次世界大戦において、連合国によって日本を分割統治しようとする日本の分割統治計画も存在していた。