剱岳
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剱岳 | |
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剱岳(2005年6月撮影) |
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標高 | 2,999 m |
位置 | 北緯36度37分24秒 東経137度37分02秒 (三角点の位置) |
所在地 | 富山県 |
山系 | 飛騨山脈(立山連峰) |
種類 | 氷食尖峰 |
初登頂 | -- |
剱岳(つるぎだけ)は富山県・飛騨山脈(北アルプス)の立山連峰にある標高2999mの山。日本百名山の一つ。
目次 |
[編集] 概要
氷河に削り取られた氷食尖峰で、その峻険な様は訪れる者を圧倒し、登山家からは「岩の殿堂」と呼ばれている。東南には日本三大雪渓の一つ・剣沢がある。また、周辺には三ノ窓・大窓・小窓など「窓」と呼ばれる懸垂氷食谷がある。
「剱」には様々な表記があり、一般には常用漢字で剣岳と表記されることが多い。地元の上市町では剱岳が正しい表記であると主張しており、その要請に従って、国土地理院は2004年発行の地形図から「剱岳」と表記している。
剱岳は有史以来、立山修験の対象とされ、雄山神社の神である天手力雄神(太刀尾天神剱岳神・本地不動明王)として信仰されてきた。
[編集] 登山ルート
一般的な登山ルートは、立山黒部アルペンルートの室堂ターミナルから、雷鳥坂(雷鳥沢)をつめ、剱御前小屋のコルに出て、そこから剱沢のカールを横断して劔山荘を経て、一服剱、前剱の主稜線をとり、平蔵谷のコルに出るルートである。コルからは本峰南面のカニのタテ這い・ヨコ這いと呼ばれる鎖場を経て行き来する。山頂直下で、早月尾根からのルートと合流する。
室堂経由からは簡単に剱岳の登り口にたどり着けるため、毎年、初心者が滑落する事故が後を絶たない。
バリエーション・ルートとしては、前記の西側に伸びる、馬場島からの早月尾根ルート、あるいは三ノ窓からの北方稜線ルート、また、八ツ峰や源次郎尾根の縦走ルート、雪渓をつめる長次郎谷や平蔵谷、三ノ窓雪渓のルートもある。これらはすべて、中・上級者向きルートである。
[編集] 剱岳の岩場
- チンネ
- ジャンダルム
- 小窓王
- 八ツ峰VI峰フェース群
- Aフェース
- Bフェース
- Cフェース
- Dフェース
- 八ツ峰三ノ窓側
- 函ノ谷
- 菱ノ谷
- 源次郎尾根I峰平蔵谷側側壁
- 源次郎尾根II峰平蔵谷側側壁
- 本峰南壁
- 本峰北壁
- クレオパトラ・ニードル
- 東大谷
- 中尾根
- 駒草ルンゼ
- 富高ルンゼ
- 池ノ谷
- 右俣
- 中央ルンゼ
- 右俣奥壁
- 剱尾根
- ドーム(北壁、南壁)
- デルタフェース
- 右俣
- 小窓尾根白萩川側フェース群
[編集] 積雪期の剱岳登山-富山県剣岳条例
積雪期の剱岳は日本海側気候の影響で悪天が続き、熟練者でも遭難するほどに環境が厳しく、毎年のように遭難者が出ている。
そこで、富山県は条例によって『危険地域』を定め、登山計画書の届け出を義務づけており、12月1日から翌年の5月15日までの間は届け出書の提出を行なわなければならない。それも事前審査制としている。
また、池ノ谷、東大谷地区は『特別危険地区』となっており、冬期の立ち入りを見合わせる事が望ましい地区としている。
積雪期剱岳登山の主な注意事項として(勧告基準から)、
- 単独登山はしないこと。
- 特別危険地区(池ノ谷、東大谷地区)に立ち入らない事
- 積雪期登山経験の豊富な者がリーダーをつとめ、かつパーティの編成メンバーの1/2以上のものが積雪期登山の経験者でなければならない。
- 予備日は12月1日から2月末日までは7日以上、3月1日から4月15日までは5日以上とること
- トランシーバーを携行すること
があげられている。
[編集] 登頂史
剱岳への登頂記録として語り草となっているのは、1907年(明治40年)7月の、陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎らの登頂である。柴崎は、当時の著名な登山家、小島烏水(1873年 - 1948年)と剱岳の「初登頂」を競っており、幾度かの失敗の後ようやく本峰の山頂を踏むことができた。しかし、彼らがそこで発見したのは錆付いた鉄剣と銅製の錫杖の頭であった。また古い焚き火跡もあったという。つまり、柴崎芳太郎らが初登頂ではなく、はるか昔に登頂されていたのである。これらは奈良時代後半から平安時代初期にかけての修験者のものとされる。この時発見された2点の遺物は、立山町芦峅寺の立山博物館に展示されている。これらは、立山修験の貴重な遺物である。
この山の山頂には長らく三角点が設置されておらず、標高を精度の低い測量でしか測定できなかった。柴崎芳太郎は山頂には立ったものの、岩場の険しさから重い三角点標石を運び上げることを断念し三角点の設置には至らず、そのため、三角点の設置場所を記載する「点の記」は作成されず、剱岳の経緯度や高精度な標高は測量されなかった。柴崎芳太郎は周辺の山からの観測から山頂の独立標高点(現在の「標高点」)を2998mと計算したが、その後の測定により3003mとされた時期もあった。2004年夏にようやく三等三角点が設置され、GPS測量により三等三角点「剱岳」の標高2997.07mと、剱岳の最高標高2999mが求められた。
[編集] 剱岳の山小屋
- 剱御前小屋
- 剱沢小屋
- 剱山荘
- 早月小屋
- 馬場島荘
- 真砂沢ヒュッテ
- 池の平小屋
- 仙人池ヒュッテ